急性毒性
経口
SIDS(Access on Dec. 2010)に記載されたラットLD50値は、700mg/kg (媒体:オリーブ油)、800~1600 mg/kg (媒体:不明)、991~1309 mg/kg (媒体:ピーナツ油)、>6400 mg/kg(媒体:aqueous suspension with tragacanth)、33100~34100 (媒体:1%メタノール水溶液への懸濁)、4290 mg/kg (媒体:不明)である。媒体が油の場合、700 mg/kg又は991~1309 mg/kgである。なお、水性懸濁液では区分外となる。(GHS分類:区分4)
経皮
SIDS(Access on Dec. 2010)に記載されたウサギLD50値は、>4000 mg/kg (媒体:50% アルコール懸濁液)、>5000 mg/kg (媒体:不明)及び>2000 mg/kg (媒体:不明)、ラットLD50値は、>2500 mg/kg (媒体:50% アルコール懸濁液)。(GHS分類:区分外)
吸入
吸入(ガス): GHSの定義における固体である。(GHS分類:分類対象外)
吸入(蒸気): データなし。(GHS分類:分類できない)
吸入(粉じん・ミスト): ラットLC50値:>12.5 mg/L/4hr(SIDS (Access on Dec. 2010))。なお、95~115℃で融解した被験物質(融点80.5℃)を霧状にして動物にばく露した粉じんまたはミストでの試験である(なお、飽和蒸気圧濃度は0.0001mg/Lである(SRC Phys Prop (Access on Dec. 2010)。)。(GHS分類:区分外)
皮膚腐食性・刺激性
SIDS(Access on Dec. 2010)に記載されたウサギを用いた皮膚刺激性試験において、50%エタノール懸濁液塗布(閉鎖系貼付、ばく露時間:1, 5, 15分及び20時間)により、ばく露20時間、処置後24時間で雄のみ背部及び耳にわずかな紅斑(7日後には消失)がみられたとの報告、オリーブ油懸濁液(10%, 20%, 50%)塗布(20時間)により、背部において20%懸濁液でばく露後1日及び2日後に極わずかな紅斑(3日後に消失)、耳において50%懸濁液で4日間に渡り浮腫を伴う顕著な紅斑がみられたとの報告、開放系試験において"slightly irritating"(グレード3(平均値不明))との報告及び"moderately irritating"(24~72時間後ドレイズスコアが2.63~8.00)との報告、更にモルモットの試験で"slightly irritating"との報告。(GHS分類:区分2)
眼に対する重篤な損傷・刺激性
SIDS(Access on Dec. 2010)に記載されたウサギを用いた眼刺激性試験において、固体直接投与(2匹)により、1~24時間後でわずかから顕著な浮腫を伴う結膜発赤が1匹にみられ、8日後に角膜混濁がみられたとの報告、10%オリーブ油溶液投与(2匹)により、投与10分後に結膜の発赤がみられ、1~3時間後に発赤及び浮腫がみられたが、24時間後には消失したとの報告、"slight injury"(グレード3(平均値不明))との報告及び5/6匹に結膜発赤及び4/6匹に結膜浮腫(角膜異常なし)との報告。(GHS分類:区分2)
呼吸器感作性又は皮膚感作性
呼吸器感作性:データなし。(GHS分類:分類できない)
皮膚感作性:雌モルモットを用いた皮膚感作性試験 (アジュバント使用)で陽性率80%であるとの報告(SIDS(Access on Dec. 2010))に基づき区分1とした。なお、MAK/BAT (2009)では分類Shとなっている。(GHS分類:区分1)
生殖細胞変異原性
マウス腹腔内投与による小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)における陰性結果(SIDS(Access on Dec. 2010))に基づき区分外とした。なお、in vitroの試験については、微生物を用いたエームス試験及びチャイニーズハムスターを用いた小核試験において陰性の結果(SIDS(Access on Dec. 2010))が報告されている。(GHS分類:区分外)
発がん性
データなし。(GHS分類:分類できない)
生殖毒性
SIDS(Access on Dec. 2010)記載の交配後(6-19日)のWistarラットを用いた経口投与試験 (OECD TG414,GLP準拠)において、最高用量の90mg/kg/dayで母動物への一般毒性(血液系及び肝臓)が現れるのに対し妊娠パラメーター及び胎仔の発育に影響は認められなかったとの報告、雌雄Wistarラットを用いた3ヶ月経口投与試験 (OECD TG 408,GLP準拠)において60mg/kg/dayで一般毒性(血液系及び肝臓)が現れるのに対して120mg/kg/dayで生殖器重量に変化は認められないとの報告はあるが、出生後の仔の発育についてのデータがなく分類できない。(GHS分類:分類できない)
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
SIDS(Access on Dec. 2010)記載のラット吸入試験 (粉じん:12.5mg/L;ガイダンスでは区分外に相当)において、呼吸器への刺激、唾液(分泌)過多、流涙がみられたが、組織に肉眼的及び重量に変化はなかったとの報告、ラット経口投与試験において呼吸困難及びアパシー(6400mg/kg投与群:ガイダンスでは区分外に相当)がみられたが、器官に異常は認めらないとの報告、ウサギ経皮投与試験 (4000mg/kg)及びラット経皮投与試験 (2500mg/kg)において生存動物の器官に病理的変化は認められなかったとの報告に基づき区分3(気道刺激性)とした。(GHS分類:区分3(気道刺激性))
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
SIDS(Access on Dec. 2010)記載の雌雄Wistarラットを用いた3ヶ月経口投与試験 (OECD TG 408、GLP準拠)において60 mg/kg/dayの投与量 (区分2相当)で、雌のプロトロンビン時間短縮、AST、ALTの減少、肝重量増加、雌雄で肝の小葉中心性肥大がみられたとの報告、雌Wistarラット10匹を用いた4週間経口投与試験 (GLP準拠)において90日換算7.8 mg/kg/dayの投与量 (区分1相当)で低体温、不安定歩行、立毛、皮膚蒼白、血清コリンエステラーゼ活性低下、赤血球コリンエステラーゼ活性上昇、胃のびらん及び潰瘍、肝肥大、近位坐骨神経の軸索変性がみられたとの報告、その他ウサギ及びイヌを用いた経口投与試験においてガイダンス区分1相当の投与量で脳、脊髄への損傷を伴う神経障害(運動失調、四肢脱力)及び心肥大がみられたとの報告がある。また、SIDS(Access on Dec. 2010)記載の雌雄ビーグル犬を用いた5週間吸入(粉じん)試験において90日換算0.028 mg/L/dayの投与量 (区分2相当)で後肢の神経障害、0.0097 mg/L/day (区分1相当)で脊髄の散在性変性がみられたとの報告、雌雄ビーグル犬を用いた4週間吸入(粉じん)試験において90日換算0.0294 mg/L/dayの投与量 (区分2相当)で神経障害(歩行不全)、0.0056 mg/L/day (区分1相当)で中枢神経系の組織病理変化がみられたとの報告がある。従って標的臓器は神経、心臓及び肝臓と考えられ、区分は区分1(神経、心臓)、区分2(肝臓)とした。(GHS分類:区分1(神経、心臓) 区分2(肝臓))
吸引性呼吸器有害性
データなし。(GHS分類:分類できない)