急性毒性
経口
ラットのLD50値として、1,600 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、1,670 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2001))、2,407 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との3件の報告がある。2件が区分4に、1件が区分外に該当するため、該当数の多い区分4とした。
経皮
ウサギのLD50値として、12.6 mL/kg (10,300 mg/kg) との報告 (PATTY (6th, 2012)) に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
データ不足のため分類できない。なお、ウサギに本物質を24時間適用した結果、中等度の刺激性が認められた (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)) との記載があるが、24時間適用の結果であるため分類に用いなかった。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
本物質をウサギの眼に適用した試験において軽度の刺激性がみられたとの報告がある (PATTY (6th, 2012)) 。また、ウサギを用いた別の試験で、刺激性の基準に該当する眼の変化は認められなかった (ECETOC TR48 (1992))。以上、「軽度の刺激性」の記載に基づき、区分2Bとした。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
データ不足のため分類できない。なお、本物質の4%溶液をヒト26人に適用した皮膚感作性試験において、陽性反応は認められなかったとの記述がある (PATTY (6th, 2012)) が、詳細について不明であり、他に動物の情報もないことから、分類できないとした。
生殖細胞変異原性
データ不足のため分類できない。In vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、染色体異常試験(詳細不明) で陰性である(PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on September 2014))。
発がん性
データ不足のため分類できない。
生殖毒性
ラットを用いた吸入経路での生殖・発生毒性スクリーニング試験において、親動物に一過性の摂餌量減少、一過性の体重変化がみられたが、生殖毒性及び発生毒性はみられていないとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。スクリーニング試験であるため分類できない。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
本物質はヒトに気道刺激性及び麻酔作用がある (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。実験動物では、ラットの吸入ばく露 830-2,000 ppm (3.87-9.34 mg/L) で、立毛、血管拡張、過呼吸、協調運動失調、衰弱、呼吸困難が報告されている (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on September 2014))。 以上より、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ヒトで本物質単独ばく露による有害性の知見はないが、低濃度の本物質を含む溶剤にばく露された塗料製造工場の作業者を対象に認知機能及びメンタルヘルスを評価するように計画された横断的疫学研究では有害性影響はみられなかった (PATTY (6th, 2012)) との記述がある。 実験動物ではラットに13週間強制経口投与した試験において、500 mg/kg/day までの用量で、組織変化を伴わない肝臓、腎臓重量の僅かな増加がみられた (PATTY (6th, 2012))。吸入経路では、ラット及びサルに本物質蒸気を1,025 ppm までの高濃度 (4.78 mg/L/6時間: 1 ppm= 4.66 mg/m3 (ACGIH (7th, 2001)) で9ヶ月間ばく露した試験で、いずれの動物種でも肺機能、心電図、臨床検査に異常はみられず、神経毒性影響 (臨床症状及び神経伝達速度) も含めて毒性影響はみられなかった (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2001)) との記述がある。 以上、実験動物では2経路による有害性知見として、ガイダンス値範囲内の用量で標的臓器を特定可能な毒性所見が認められないが、ヒトでの知見が極めて限定的であることから、旧分類と同様に「区分外」と分類するのは困難と考え、「分類できない」とした。
吸引性呼吸器有害性
13を超えない炭素原子で構成されたケトンで、動粘性率が0.954 mm2/sec (30℃、CERI計算値) であり、区分2に該当するため、現行分類ガイダンスに従い分類できない。