急性毒性
経口
ラットLD50値:3249mg/kg(産衛学会勧告, 1995)、3250mg/kg(CERIハザードデータ集, 2002)および750mg/kg(CERIハザードデータ集, 2002)に基づき、計算を適用した。計算値は1049mg/kgであったことから、区分4とした。
経皮
IUCLID(2000)にラットLD50値:>2500mg/kgとの記述があるが、他にデータがなく、区分5か区分に該当しないか判断できないため、分類できないとした。
吸入: ガス
GHSの定義により固体である。
吸入: 蒸気
データなし。
吸入: 粉じん及びミスト
データなし。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
CERIハザードデータ集(2002)のウサギの皮膚に適用した試験において刺激性はみられていないとの記述から、区分に該当しないとした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
CERIハザードデータ集(2002)のウサギの眼に適用した試験において刺激性は認められていないとの記述があるが、ACGIH(7th, 2001)には、ヒトへの影響として眼を軽度に刺激するとの記述があり、眼に対する刺激性の有無については明確でないため、分類できないとした。
呼吸器感作性
データなし。
皮膚感作性
CERIハザードデータ集(2002)のモルモットを用いた試験において感作性は認められていないとの記述から、区分に該当しないとした。
生殖細胞変異原性
IUCLID(2000)にin vivo変異原性試験であるマウスを用いた小核試験(使用組織不明)で陰性の結果との記述があることから、区分に該当しないとした。
発がん性
【分類根拠】 (1)、(2)より、マウスの雌およびラットの雌雄では発がん性に陰性の結果が得られている。これに対し、マウスの雄に肝臓の血管肉腫のわずかな発生増加がみられたが不明確な結果であり、現在の情報から発がん性を判断しないのが妥当と考え、分類できないとした。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。旧分類ではDFGの分類結果が踏まえられていないため、発がん性項目のみ見直した(2021年)。
【根拠データ】 (1)マウスを用いた強制経口投与による2年間発がん性試験で、雄で肝臓の血管肉腫のわずかな発生増加が見られたが、試験を実施したNTPは不明確な証拠と結論している。雌では発がん性の証拠は見られなかった(NTP TR428(1993)、ACGIH (2001)、産衛学会許容濃度提案理由書(1995)、NICNAS IMAP (2017)、HSDB (Accessed November 2021)、化学物質安全性(ハザード)データ集(Accessed November 2021))。 (2)ラットを用いた強制経口投与による2年間慢性毒性/発がん性試験で、腫瘍の増加は見られなかった(ACGIH (2001)、産衛学会許容濃度提案理由書(1995)、NICNAS IMAP (2017)、HSDB (Accessed November 2021)、化学物質安全性(ハザード)データ集(Accessed November 2021))。 (3)国内外の評価機関による既存分類結果として、DFGが(2)より発がん性の疑いを排除できないとしてCategory 3Aに(List of MAK and BAT values 2020 (Accessed Oct. 2021))分類している。ただし、データは十分でないとしている。その他、ACGIHでA4(ACGIH (2001))にそれぞれ分類されている。
生殖毒性
ACGIH(7th, 2001)、PATTY(4th, 1994)、CERIハザードデータ集(2002)およびNTP TR418(1993)のラットを用いた妊娠中経口投与試験において母動物に一般毒性が認められる用量でのみ吸収胚数の増加や胎児の奇形がみられているとの記述から、区分2とした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
産衛学会勧告(1995)、ACGIH(7th, 2001)、PATTY(4th, 1994)およびCERIハザードデータ集(2002)のヒト事故暴露例にメトヘモグロビン血症、めまい、意識消失が認められたとの記述、CERIハザードデータ集(2002)のモルモットへの経口投与により傾眠、痙攣が認められたとの記述から、血液が標的臓器であり、麻酔作用もあると判断して、区分1(血液)および区分3(麻酔作用)とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
産衛学会勧告(1995)、ACGIH(7th, 2001)、CERIハザードデータ集(2002)、NTP TR418(1993)のラットを用いた4週間吸入暴露試験またはマウスを用いた2週間経口投与試験においてメトヘモグロビン血症などの血液への影響が区分1のガイダンス値範囲の用量で認められたとの記述から、区分1(血液)とした。
誤えん有害性*
データなし。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。