急性毒性
経口
GHS分類: 区分4 ラットのLD50値として、716 mg/kg (雌)、782 mg/kg (雄) (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ウサギの経皮ばく露試験において、区分外 (国連分類基準の区分5) に相当する3,000 mg/kg以上で死亡がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 6 (1993)、ACGIH (7th, 2001))。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、本物質は直ちに経皮吸収され、高用量でも局所刺激はないとの記載 (DFGOT vol. 6 (1993)) があるが、局所刺激についての詳細が不明なため採用しなかった。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ニワトリ摘出眼球を用いる眼刺激性試験 (OECD TG 438準拠) で軽度 (mild) の眼刺激性を示したとの記載 (ECHA登録情報 (Access on November 2017)) があるが、本試験は眼に対する重篤な損傷性を引き起こすかどうかを確認する試験のため採用しなかった。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。マウスを用いたLLNA法による皮膚感作性試験 (OECD TG 429準拠) で本物質は皮膚感作性を示さなかったとの記載 (ECHA登録情報 (Access on November 2017)) があるが、その他の動物試験やヒトでの情報が得られなかったため、分類できないとした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陽性である (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、DFGOT vol. 6 (1993)、NTP DB (Access on August 2017))。
発がん性
GHS分類: 分類できない ヒトの発がん性に関する情報はない。実験動物では本物質の塩酸塩をラットに混餌投与 (0.06%) した試験 (投与期間不明) で、肉眼的に肝臓、その他の臓器に腫瘍発生はみられていない (環境省リスク評価第12巻 (2014)、DFGOT vol. 6 (1993))。また、本物質をマウスに28週間混餌投与 (0.195%) し、12週間後に剖検した試験でも、肺腫瘍発生率の増加はみられなかった (投与群17% vs 対照群14%) が、本物質と同時に0.1%で亜硝酸ナトリウムを添加し飲水投与した群では肺腺腫の発生率は61%と有意に増加した (環境省リスク評価第12巻 (2014)、DFGOT vol. 6 (1993))。原著者らは、亜硝酸ナトリウム併用群では発がん性のあるニトロソアミンを生成するニトロソ化が生じたものと結論した (DFGOT vol. 6 (1993))。 以上、本物質をラット、マウスに単独投与した試験で発がん性は示されなかったが、1用量のみ、投与期間が不十分又は不明、かつ病理組織学的検査を十分に実施しない試験であり、いずれの試験も発がん性評価に適した試験とはいえない。この他、分類に利用可能なデータはなく、データ不足のため分類できない。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分1 (血液系、腎臓)、区分2 (神経系) 本物質のヒトでの単回ばく露の情報はない。実験動物では、ラットの単回経口投与試験において、区分2相当の512 mg/kgで自発運動低下、チアノーゼ、褐色尿が認められ、致死量の1,000 mg/kg以上で側臥位、腹臥位、全身の攣縮、流涙、体温低下が認められたとの報告がある (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017))。また、ウサギの単回経口投与試験で、区分1相当の180 mg/kgで血中メトヘモグロビン濃度が23~45%まで上昇し、赤血球数減少、骨髄での造血反応の増加、蛋白尿、糖尿、褐色尿が認められたとの報告 (DFGOT vol. 6 (1993)) 及び最小致死量は区分1相当の240 mg/kgであり、急性毒性症状はチアノーゼ、衰弱、体重減少、呼吸困難、死亡前の痙攣であったという報告 (DFGOT vol. 6 (1993)、ACGIH (7th, 2001)) がある。経皮ばく露では、ウサギの皮膚に本物質を1時間適用した試験で、3,000 mg/kg以上で、チアノーゼと死亡がみられたとの報告がある ((DFGOT vol. 6 (1993)、ACGIH (7th, 2001))。以上の情報から、本物質は区分1相当の用量で血液系と腎臓、区分2相当の用量で神経系に影響を及ぼすと考えられる。したがって、区分1 (血液系、腎臓)、区分2 (神経系) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 区分1 (血液系、呼吸器、肝臓、腎臓) ヒトに関する情報はない。 ラットを用いた28日間反復経口投与毒性試験において、区分1のガイダンス値範囲内である5 mg/kg/day (90日換算: 0.6 mg/kg/day) 以上で脾臓の充血、色素沈着、腎臓の硝子滴変性、25 mg/kg/day (90日換算: 7.8 mg/kg/day) 以上でヘマトクリット値・赤血球数の減少、網状赤血球比率の増加、骨髄の造血亢進、肝臓及び脾臓の髄外造血亢進、125 mg/kg/day (90日換算: 38.9 mg/kg/day) で、プロトロンビン時間の延長、総ビリルビンの増加、黄褐色尿、腎臓の近位尿細管の色素沈着がみられた (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。また、ラットに130回吸入ばく露した試験 (7時間/日) において、区分1のガイダンス値 (蒸気) の範囲内である2.4 ppm = 10.5 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.0123 mg/L) でハインツ小体、7.6 ppm = 33.3 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.038 mg/L) で死亡、メトヘモグロビン血症、肝臓の小葉中心性の肝細胞壊死、中程度の腎障害、肺の浮腫、間質性肺炎の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。 以上、主に血液に対する影響とそれに対応した影響がみられた他、呼吸器、肝臓、腎臓にも影響がみられたことから、区分1 (血液系、呼吸器、肝臓、腎臓) とした。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。