急性毒性
経口
【分類根拠】 GHSの定義におけるガスであり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
経皮
【分類根拠】 GHSの定義におけるガスであり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: ガス
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間):276,798.8 ppm (DFGOT vol.20 (2003)、ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1988)、BUA 144 (1994)、HSDB (Access on June 2019))
吸入: 蒸気
【分類根拠】 GHSの定義におけるガスであり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 GHSの定義におけるガスであり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1) より、常温でガスであるため区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) GHSの定義によるガス
【参考データ等】 (2) 液化n-ブタンは皮膚及び眼に化学凍傷を起こす可能性がある (DFGOT vol.20 (2003)、PATTY (6th, 2012))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1) より、常温でガスであるため区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) GHSの定義によるガス
【参考データ等】 (2) 本物質はウサギの眼に刺激性を示さない (DFGOT vol.20 (2003))。 (3) 液化n-ブタンは皮膚及び眼に化学凍傷を起こす可能性がある (DFGOT vol.20 (2003)、PATTY (6th, 2012))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 本物質自体のin vivoデータがなく、ガイダンスに従い分類できないとした。
【参考データ等】 (1) in vivoでは、本物質を含む家庭用調理ガスの吸入ばく露によるマウス赤血球小核試験で陽性の報告がある (PATTY (6th, 2012)) が、 確認試験では再現性を認めず陰性であった (McKee et al, Int J Toxicol., 33 (1) suppl, 28S-51S, 2014)。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告がある (DFGOT vol.20 (2003)、PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2017))。
発がん性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) より生殖及び発生に影響はみられていないものの、この試験はスクリーニング試験であること、発生毒性試験のデータがないことからデータ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた吸入ばく露による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) が実施されており、親動物に毒性学的に重要な変化はみられず、生殖及び発生影響もみられていない (McKee et al, Int J Toxicol., 33 (1) suppl, 28S-51S, 2014)。
【参考データ等】 (2) 妊娠27週目にブタンガスによる重度の中毒を患った女性 (その他の詳細は不明) が水頭症の子供を出産した。 著者らは、奇形は胎児脳が発達中である子宮内の酸素欠乏によって引き起こされたと考えている (DFGOT vol.20 (2003))。 (3) 妊娠30週目にブタンガスで自殺を企てた女性が、生後11時間で死亡した子供を出産した。 重症の多嚢胞性脳軟化症と診断され、ブタンガスの物質特有の影響ではなく、母体の酸素欠乏によるものと考えられている (DFGOT vol.20 (2003))。 (4) PATTY (6th, 2012) では、上記2つの症例は、ブタンの妊婦へのばく露は胎児に対して重大な神経発達障害を引き起こす可能性があることを示唆しているとしている。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)~(4) のヒト及び動物での麻酔作用の報告に基づき、区分3 (麻酔作用) とした。
【根拠データ】 (1) ヒトにおいて、本物質の10,000 ppm、10分の吸入で、めまいがみられたとの報告がある (DFGOT vol.20 (2003))。 (2) 本物質がヒトにおいて麻酔作用を生じる濃度は17,000 ppmであるとの記載がある (DFGOT vol.20 (2003))。 (3) ブタンガスを繰り返し吸入した12人のほとんどで、多幸感及び幻覚がみられたとの報告がある (DFGOT vol.20 (2003))。この影響はおそらく初回の吸入ばく露の際にもみられたと考えられる。 (4) マウスにおいて、本物質の130,000 ppm、25分の吸入ばく露で麻酔作用がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.20 (2003)、PATTY (6th, 2012))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1 (中枢神経系) とした。新たな情報を追加し、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ライター用交換缶のブタンガスを4週間乱用した15歳の少女で重篤な脳の障害が生じ、入院加療後に神経性合併症を発症した。MRI検査の結果、灰白質の崩壊や脳の萎縮等がみられた (PATTY (6th, 2012))。 (2) ブタンガスを乱用した青年男女で幻覚、幻聴等の神経症状が発症したとの複数の報告がある (PATTY (6th, 2012))。 (3) ブタンガスを繰り返し吸入した12人のほとんどで、多幸感及び幻覚がみられた (DFGOT vol.20 (2003))。
【参考データ等】 (4) ブタンガスの乱用による重篤な神経影響及び死亡が報告されている。犠牲者の多くは若い男性で、死因は低酸素症と心不全であった (ACGIH (7th, 2017))。 (5) プロパン及びブタンの液化ガス充填ステーションで8,000 mg/m3にばく露された22人の作業者で、喉の渇き、乾性咳、重度の興奮、めまいが報告された。心電図検査の結果、頻脈、期外収縮、不完全右脚ブロック (incomplete right bundle-branch block) がみられた (DFGOT vol.20 (2003)、ACGIH (7th, 2017))。 (6) ブタン及びプロパンガス充填を行なう28歳男性が、吐き気等により入院し、ブタン及びプロパンへの慢性ばく露によると考えられる急性肝炎と診断された (PATTY (6th, 2012))。 (7) ブタン及びイソブタンはアドレナリンに対する心筋感受性を高める (メカニズムは不明) (DFGOT vol.20 (2003))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 GHSの定義におけるガスである。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。