安全データシート

シアヌル酸クロリド

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: シアヌル酸クロリド
  • CB番号: CB9852761
  • CAS: 108-77-0
  • EINECS番号: 203-614-9
  • 同義語: 2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン,塩化シアヌル

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 染料・医薬・農薬原料 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R2.3.13、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
急性毒性 (経口)   区分4
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)   区分2
皮膚腐食性/刺激性   区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分1
皮膚感作性   区分1A
生殖毒性   区分2 $DAN29$
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (呼吸器) 区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (呼吸器、血液系) 区分2 (肝臓)
分類実施日(環境有害性)
H18年度、GHS分類マニュアル (H18.2.10版) (R1年度、分類実施中)
環境に対する有害性
-

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS05GHS06
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H302 飲み込むと有害。
H314 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H330 吸入すると生命に危険。
H335 呼吸器への刺激のおそれ。
注意書き
安全対策
P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P284 換気が不十分な場合、呼吸用保護具を着用すること。
応急措置
P301 + P312 + P330 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。口をすすぐこと。
P301 + P330 + P331 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
P304 + P340 + P310 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 直ちに医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362 + P364 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
保管
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: 2,4,6-Trichloro-1,3,5-triazine
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C3Cl3N3
  • 分子量: 184.41 g/mol
  • CAS番号: 108-77-0
  • EC番号: 203-614-9
  • 化審法官報公示番号: 5-1045
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 ただちに眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後は水を飲ませ(多くてもグラス2杯)、嘔吐を避ける(穿孔のリスクあり) 直ちに医師を呼ぶ。中和させようとしないこと。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
泡 水
適切な消火剤
二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
窒素酸化物(NOx)
塩化水素ガス
可燃性。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
次の臓器には触れないであろう: 水
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: いかなる場合も、ほこりを生じさせたり吸い込んだりしないようにすること。触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 慎重に行うこと。適切に廃棄すること。関連エリアを清掃のこと。 ほこりが生じないようにすること。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。 作業場を乾燥状態に保つこと。本品が水と接しないようにすること。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1B: 不燃性、急性毒性カテゴリー1および2 / 猛毒性危険物
保管条件
密閉のこと。 乾燥。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。保管中は、製品と水との接触を絶対に避ける。保管安定性推奨された保管温度2 - 8 °C湿気を遮断し,不活性ガス下で取り扱うこと。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
許容濃度が設定されている物質を含有していない。

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 密着性の高い安全ゴーグル
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
ほこりが生じた際に必要。
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
白色 (ホンメル (1991))
臭い
刺激臭 (ホンメル (1991))

融点/凝固点

146℃ (ホンメル (1991))

沸点、初留点及び沸騰範囲

190℃ (ホンメル (1991))

可燃性

不燃性 (ICSC (2002))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

該当しない

引火点

該当しない

自然発火点

該当しない

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

該当しない

溶解度

水:反応する (ICSC (2002))

n-オクタノール/水分配係数

1.73 (EST) (HSDB (Access on May 2019))

蒸気圧

0.023 mmHg (25℃) (HSDB(Access on May 2019))

密度及び/又は相対密度

1.32(20℃/4℃) (HSDB (Access on May 2019))

相対ガス密度

該当しない

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
引火点より下のおよそ15ケルビンからの範囲は危険とみなされている。
可燃性有機物質及び製剤に概ね該当:微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性が
通常想定される。
水と激しく反応。

10.2 化学的安定性

湿気に弱い

10.3 危険有害反応可能性

次と激しく反応
アンモニア
アルコラート
アルコール類
アミン
ジメチルスルホキシド
ジメチルホルムアミド
メルカプタン
酸化剤
一般的に水と反応するとされる物質。

10.4 避けるべき条件

強力な熱
湿気

10.5 混触危険物質

データなし

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:約 320 mg/kg (雄: 315 mg/kg、雌: 327 mg/kg) (SIDS (2004)) (2) ラットのLD50:425~1,460 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) (3) ラットのLD50:485 mg/kg (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004))
経皮
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50:> 2,000 mg/kg (SIDS (2004)) (2) ラットのLD50:5,000 mg/kg (SIDS (2004))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間、粉じん) : 0.0405~0.108 mg/L (PATTY (6th, 2012)) (2) ラットのLC50 (4時間、蒸気・吸入性粉じん) : 0.170 mg/L、0.0185~0.18 mg/L (SIDS (2004))
【参考データ等】 (3) マウスのLC50 (2時間) : 0.01 mg/L (4時間換算値 : 0.00707 mg/L) (PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004)、SIDS (2004))

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)~(3) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験 (4時間半閉塞適用) で24/48/72時間の平均スコアは0.67-1.67であり、平均スコアが1.5を上回ったのは1/6例のみであった (SIDS (2004))。 (2) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験 (4時間半閉塞適用) で刺激性を認めなかった (SIDS (2004))。 (3) 本物質はウサギの皮膚に重度の刺激性を示す (PATTY (6th, 2012))。
【参考データ等】 (4) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験 (24時間半閉塞適用) で刺激性を示した (SIDS (2004))。 (5) ヒトにおいて本物質は皮膚、眼、気道に強い腐食性を有する (SIDS (2004))。 (6) EU-CLP分類でSkin Corr. 1B (H314) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) ウサギを用いた眼刺激性試験で24/48/72時間の平均スコアは角膜混濁:3、虹彩:2、結膜発赤:3、結膜浮腫:3であった (SIDS (2004))。 (2) 本物質は皮膚、眼、気道に強い刺激性を有する (SIDS (2004))。 (3) 2系統のウサギを用いた眼刺激性試験で角膜、虹彩、結膜に影響を与え、重度の刺激性を示した (SIDS (2004))。 (4) 本物質はウサギの眼に重度の刺激性を示す (PATTY (6th, 2012))。
【参考データ等】 (5) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で刺激性 (Irritating) と報告されている (SIDS (2004))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 (1) より、区分1とした。なお、新たな情報が得られたことにより区分を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質は感作性を有し、ヒトにおいて喘息及び接触性皮膚炎の報告がある (SIAP (2001))。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1Aとした。
【根拠データ】 (1) 本物質は感作性を有し、ヒトにおいて喘息及び接触性皮膚炎の報告がある (SIAP (2001))。 (2) OECD TG 406に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (皮内感作 : 0.01%、貼付感作 : 2%、惹起 : 1%)において陽性率100%を示した (SIDS (2004)) 。 (3) OECD TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA ) において2.5%以上で陽性反応を認めた (SIDS (2004))。
【参考データ等】 (4) モルモットを用いた皮膚感作性試験では陽性と陰性の結果がある (PATTY (6th, 2012))。 (5) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)、(2) よりin vivo、in vitro試験ともに陰性知見がみとめられたことから、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウス骨髄の小核試験で陰性の報告がある (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告がある (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012))。

発がん性

【分類根拠】 国際機関による既存分類もなく、データ不足のため分類できない。
【参考データ等】 (1) ラットに本物質10 mgを餌に混ぜて2年間投与した結果、乳腺の線維腺腫5例、子宮の横紋筋肉腫1例、腸組織のリンパ肉腫1例、前立腺がん1例など腫瘍発生がみられたが、いずれも自然発生的な腫瘍で投与に関連した腫瘍発生ではないとされた (SIDS (2004))。 (2) ラット (25匹/性/群) に本物質を3.5ヵ月間皮下投与し、20.5ヵ月間後に屠殺した結果、9例の局所壊死部位に肉腫が認められ、原著者により刺激性影響によると考察された (SIDS (2004))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1) より、母動物毒性がみられる用量において催奇形性はみられていないが、着床後胚吸収の増加、生存胎児数の減少がみられていることから区分2とした。
【根拠データ】 (1) 雌ラットの妊娠6~19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (被毛粗剛、流涎、呼吸の異常音、体重増加の抑制等) がみられた用量で、胚/胎児毒性 (着床後胚吸収の増加、生存胎児数の減少) がみられている (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004)、SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 ヒトでは (1)~(3)、実験動物では (5) で吸入ばく露により、呼吸器への影響がみられている。また、実験動物では (4) の経口ばく露で、区分1上限の用量で麻酔作用を示す中枢神経系への影響がみられている。以上より、区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。旧分類は神経系も標的臓器としていたが、根拠とされた影響は麻酔作用に包含されていると考えられるため、分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ヒトでは本物質の急性ばく露の影響は、皮膚、眼粘膜、鼻腔、咽頭、気道の刺激である。本物質の粉じん又は蒸気の吸入により、下部気道にまで達する刺激が生じる (SIDS (2004)、環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004)、BUA 125 (1993))。 (2) 工場での事故により本物質の紛末のばく露を受けた54歳男性1名が、皮膚、眼、咽頭に刺激を生じ、その後に肺胞毛細血管でのガス交換の不全を伴う重篤な閉塞性肺症候群を発症したが、心機能には影響はみられず、20日後までには回復した (SIDS (2004)、BUA 125 (1993))。 (3) 事故で本物質の粉じんのばく露を受けた2名の労働者が、皮膚に表在性の化学熱傷を生じ、1名は閉塞を伴う化膿性の気管支炎、もう1名は眼の熱傷も生じたが、肺機能への影響はみられなかった (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004)、BUA 125 (1993))。
(4) ラットの単回経口投与試験において、300 mg/kg (区分1上限) 及びそれ以上の用量で、運動機能減退、嗜眠、筋緊張低下、反射喪失、立毛、速迫呼吸、体温低下が認められた。死亡例は325 mg/kgからみられた (SIDS (2004)、SIDS Dossier (2004))。 (5) ラットの4時間単回吸入ばく露試験において、本物質の粉じん (蒸気を含む) 0.15 mg/L及びそれ以上の濃度で、立毛、あえぎ、鼻の出血と痂皮、眼窩周囲の痂皮、チアノーゼと悪液質、反射減弱が認められた。0.15 mg/L ばく露群での死亡は10例中4例であった。生存例及び死亡例の剖検結果では、肺水腫が認められた ((SIDS (2004)、SIDS Dossier (2004))。0.15 mg/Lは、ガイダンスの粉じん/ミスト又は蒸気のいずれにおいても区分1に相当する。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

(4) ラットに4~100 mg/kg/dayを28日間経口投与した試験において、4 mg/kg/day (90日換算: 4 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で死亡がみられ、死亡動物で脾臓のリンパ濾胞の萎縮、胃炎、生存例で、胃粘膜のびらん、潰瘍、前胃粘膜の限局性乳頭腫増殖及び角質増殖、20 mg/kg/day (90日換算: 6 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で小腸におけるリンパ結節の活発な胚中心、100 mg/kg/day (90日換算: 31 mg/kg/day、区分2の範囲) で肝細胞の空胞化、肝細胞核の多型化、体重及び摂餌量の減少、肝臓及び副腎重量増加、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値の低下、ALP活性の増加が報告されている (SIDS (2004))。
【参考データ等】 (5) ウサギに50~500 mg/kgの用量で21日間経皮適用した試験において、皮膚の局所影響 (皮膚刺激及び炎症) が対照群を含む全ての投与群でみられ、50 mg/kg以上の雄で好中球の増加、150 mg/kg以上の雄で体重減少 (処置及び皮膚の傷害によるストレスによる影響を排除できない)、白血球数の増加、500 mg/kgの雌で体重減少が報告されている (SIDS (2004))。
【分類根拠】 (1) より、ヒトにおいて吸入ばく露により呼吸器への影響、(2)、(3) より、ラットへの吸入ばく露により区分1の範囲で呼吸器及び血液系への影響、(4) より、ラットへの経口投与により区分2の範囲で肝臓及び血液系への影響がみられていることから、区分1 (呼吸器、血液系)、区分2 (肝臓) とした。なお、情報源を見直して検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質のガス及び粉じんを吸入した労働者で下気道に達する刺激が現れて強い咳が出たとの報告がある。また、気管支炎及び気管支肺炎の発症も報告されている (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004))。 (2) ラットに0.01~0.25 mg/m3 (SIDSには蒸気と記載) を13週間 (6時間/日、5日/週) 吸入ばく露した試験において、0.25 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.0002 mg/L、区分1の範囲) で気道の炎症、鼻腔における好中球を含む黄色滲出液、内腔への多形核好中球の出現、気管炎の増加、雄で泡沫マクロファージ及びリンパ球浸潤を伴う肺のうっ血の増加がみられている。病因は局所刺激によるというより感染症起源であると原著者は考察している。しかし、SIDS (2004) では、鼻及び肺の変化は最高濃度で最も激しいため、ばく露による併発感染の悪化は排除できないとしている (SIDS (2004))。 (3) ラットに1.88 mg/m3 (蒸気と推定) (ガイダンス値換算: 0.001 mg/L、区分1の範囲) を75日間 (4時間/日、5日/週) 吸入ばく露した試験において、眼及び上部気道粘膜の刺激、不活発、赤血球数減少、ヘモグロビン減少、体重増加抑制、死亡 (3/10例)、肝臓、腎臓及び心筋の顆粒状の形態変化が報告されている (SIDS (2004)、環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
止水式試験 LC50 - Poecilia reticulata (グッピー) - > 1,000 mg/l - 96 h
(OECD 試験ガイドライン 203)
備考: (類似製品と同様)
ミジンコ等の水生無脊
止水式試験 EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 1,000 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(OECD 試験ガイドライン 202)
藻類に対する毒性
止水式試験 ErC50 - Selenastrum capricornutum (緑藻) - 620 mg/l - 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)
備考: (類似製品と同様)
微生物毒性
最大無影響濃度 - 活性汚泥 - 576 mg/l - 5 Days
備考: (ECHA)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 28 d
結果: 8 % - 易分解性ではない。
(OECD 試験ガイドライン 301E)
備考: (類似物質からの類推では)

12.3 生体蓄積性

生物濃縮されない。

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

加水分解の場合に考えられる分解生成物:
塩化水素ガス
環境への放出は必ず避けなければならない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 2670    IMDG (海上規制): 2670    IATA-DGR (航空規制): 2670

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): CYANURIC CHLORIDE
IMDG (海上規制): CYANURIC CHLORIDE
IATA-DGR (航空規制): Cyanuric chloride

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 8    IMDG (海上規制): 8    IATA-DGR (航空規制): 8

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

15. 適用法令

労働安全衛生法

変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達)【136 2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン】

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【283 2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン】

毒物及び劇物取締法

該当しない

化学物質審査規制法

旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号439 2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン(平成23年4月1日をもって廃止)】

航空法

腐食性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2670 シアヌル酸クロライド】

船舶安全法

腐食性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2670 シアヌル酸クロライド】

港則法

その他の危険物・腐食性物質(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2ヌ シアヌル酸クロライド】

大気汚染防止法

有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【134 2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン】

16. その他の情報

略語と頭字語

EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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