急性毒性
経口
ラットのLD50値としてGLPにて実施された2件の試験データ(3978 mg/kgおよび4200 mg/kg)(SIDS (1996))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。GHS分類:区分外
経皮
ラットに2000 mg/kgの投与で、死亡はなく、LD50値は>=2000 mg/kg(OECD TG 402、GLP)(SIDS (1996))との結果から区分外とした。GHS分類:区分外
吸入:ガス
GHSの定義における固体である。GHS分類:分類対象外
吸入:蒸気
ラットに41.7 mg/m3(飽和蒸気圧濃度)を2時間ばく露(4時間換算:0.021 mg/L)により死亡は発生しなかった(IUCLID (2000))との報告により、LC50値は0.021 mg/L/4h以上と推定されるが、区分を特定できないので分類できない。GHS分類:分類できない
吸入:粉じん及びミスト
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚腐食性及び刺激性
ウサギ6匹に水で湿らせた本物質を24時間適用した皮膚刺激性試験で、刺激性なし(no irritation)の結果(SIDS (1996))から区分外とした。また、ヒトでも皮膚炎を有する者を含む30人の従業員および15人の健常作業員に本物質の純品を適用した閉塞貼付試験において、刺激性はみられず陰性の結果(SIDS (1996))が報告されている。GHS分類:区分外
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギ6匹に本物質55 mgを適用した眼刺激性試験の結果、刺激性スコア(AOIに相当)は18.8(最大値110)で軽度の刺激性(slightly irritating)であった。症状は48~120時間で徐々に改善し、スコアは7日後に全て0になり(SIDS (1996))、完全に回復したことから区分2Bとした。GHS分類:区分2B
呼吸器感作性
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚感作性
モルモットを用いた皮膚感作性試験において、マキシマイゼーション法(OECD 406; GLP)とビューラー法で感作性なし(not sensitizing)で陰性の結果(SIDS (1996))が得られているが、その他にはマキシマイゼーション法による複数の試験で陽性(SIDS (1996))となり、本物質が感作物質であり、アレルギーを誘発する可能性が示されている。一方、ヒトでは25人の被験者によるマキシマイゼーション試験で感作性反応は示されず、このヒトでの陰性結果は本物質が感作物質ではないとの見解を支持する(SIDS (1996))。以上より、動物およびヒトで複数の試験データが示されているが、結果が相反し結論されていないことから「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
生殖細胞変異原性
マウスに経口または腹腔内投与による骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)でいずれも陰性の結果(SIDS (1996)、NTP DB (Access on May. 2012))に基づき、区分外とした。なお、in vitro試験では、エームス試験(OECD TG471)で陰性(NTP DB (1982)、SIDS (1996))およびCHO細胞を用いた染色体異常試験(OECD TG473)で陰性(SIDS (1996))の結果が得られている。GHS分類:区分外
発がん性
ラットに2年間混餌投与した試験で、発がんは認められなかったと報告されている(SIDS (1996))が、その他に有力なデータはなく、データ不足のため「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
生殖毒性
雌ラットを用い、交配の7日前から、交配、妊娠、分娩の各時期を経て分娩後4日まで経口投与した試験で、母動物に体重増加抑制、摂餌量の低下が見られたが、仔に影響は見られなかったとの報告(JECFA 1021 (2002))があるが、詳細が不明のためデータ不足で「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ラットを用いた3件の急性経口毒性試験において、最初の試験(2000~3980 mg/kg; LD50=3978 mg/kg)で肺のうっ血、2番目の試験(2510~3960 mg/kg; LD50=3300 mg/kg)で肺と肝臓の充血および消化管の炎症、3番目の試験(2150~10000 mg/kg; LD50=3830 mg/kg)では肺の出血、消化管の刺激、腎臓と副腎のうっ血が報告されている(SIDS (1996))が、いずれも死亡例の所見でガイダンス値の上限以上の用量で観察されている。また、ラットに2000 mg/kgを経皮投与した試験では死亡、臨床症状および剖検による異常は認められなかった(SIDS (1996))。以上より、経口投与試験は用量がガイダンス値範囲の上限以上に設定され、死亡例以外の所見の記載がないこと、経皮投与ではガイダンス値範囲の上限用量で異常が認められなかったことから、経口および経皮では区分外相当と考えられる。しかし、吸入経路についてはデータがなく影響が不明のため、特定標的臓器毒性(単回ばく露)の分類としては「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ラットの反復経口投与試験のNOELに関して、91日間の混餌投与試験では3000 ppm(150 mg/kg/day)以上、16週間の混餌投与試験では10000 ppm(500 mg/kg/day)以上、26週間混餌投与試験では10000 ppm(500 mg/kg/day)以上、1年間混餌投与試験では50000 ppm(2500 mg/kg/day)以上、2年間混餌投与試験では20000 ppm(1000 mg/kg/day)以上と報告され(SIDS (1996))、複数の試験でいずれもガイダンス値範囲の上限を超えている。さらに、イヌに26週間カプセル投与した試験では、ガイダンス範囲の上限に相当する100 mg/kg/dayの用量で病理学的検査を含め悪影響は報告されていない(SIDS (1996))。以上の結果から、経口では区分外に相当するが、他経路についてはデータがなく、またはデータ不足のため、特定標的臓器毒性(反復ばく露)の分類としては「分類できない」とした。なお、ラットに4ヵ月間の吸入ばく露により、神経系および心血管系などに影響があると報告されている(USEPA/HPV (2001))が、ばく露時間などの試験条件や結果の詳細が不明である。GHS分類:分類できない
吸引性呼吸器有害性
データなし。GHS分類:分類できない