急性毒性
経口
ラットを用いた経口投与試験のLD50値3,560 mg/kg、12,000 mg/kg(環境省リスク評価 第6巻(2008)、HSDB(2006))から、低い値3,560 mg/kgは国連GHS急性毒性区分5に該当するが、国内では不採用区分につき、区分外とした。
経皮
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値2,960 mg/kg(Patty(5th, 2001)) は国連GHS急性毒性区分5に該当するが、国内では不採用区分につき、区分外とした。
吸入
吸入(ガス): GHS定義上の液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
吸入(蒸気): データがないので分類できない。
吸入(ミスト): 25℃における飽和蒸気圧濃度は0.18 mg/Lである。マウスを用いた2時間吸入ばく露試験のLC50値5,500 mg/m3(環境省リスク評価第6巻(2008)、Patty(5th, 2001))よりミスト基準を適用する。4時間換算LC50値は2.75 mg/Lであり、ミスト基準を適用し、区分4とした。
皮膚腐食性・刺激性
ウサギを用いた24時間皮膚刺激性試験の結果で、「非希釈液で刺激性スコア5.8/8.0であり、10-14日で回復」(HSDB(2006))との記述があるが、データ不足のため分類できない。 なお、ヒトについて、「ボランティア実験で、本物質2%を含むワセリンは皮膚の刺激や感作を示さなかった」(環境省リスク評価第6巻(2008)、Patty(5th, 2001))との記述があるが、非希釈の本物質を使用したデータではないため採用できない。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
「1-ノナノールの眼刺激性スコアをEU基準で評価すると眼刺激物質であると考えられる」(Patty(5th,2001))との記述、及び、ウサギを用いた24時間眼刺激性試験で「非希釈液の平均刺激スコアが33.3/110であり、症状はslightな紅斑、大量の眼漏(copious discharge)、角膜のにごりである」(HSDB(2006))との記述から、区分2Aとした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
呼吸器感作性:データがないので分類できない。
皮膚感作性:「ボランティア実験で、本物質2%を含むワセリンは皮膚の刺激や感作を示さなかった」(環境省リスク評価 第6巻(2008))、「ヒトに対してノナノール(2%ペトロラタム溶液)は皮膚感作性物質ではない」(Patty(5th, 2001))旨の記述があるが、一般化するには不充分であり、加えて動物データもないので分類できない。
生殖細胞変異原性
データがないので分類できない。
発がん性
主要な国際的評価機関による評価がなされておらず、データもないので分類できない。
生殖毒性
妊娠期間1日から19日の雌ラットを用いた7時間吸入ばく露試験で、「母ラットの体重、胚吸収、胎仔の体重、性比、骨格、内臓等への投与に関連した影響はみられなかった」(環境省リスク評価 第6巻(2008)、Patty(5th, 2001))旨、記述されている。また、妊娠期間1日から15日の雌ラットを用いた経口投与試験で、「胚・胎児毒性、骨化遅延を含む胎児の発育遅延が報告されている」(Patty(5th, 2001))旨の記述があり、一次文献(Sov. J. Dev. Biol. 22 (1990))を調査したところ、「胎児について、催奇形性はみとめられないが内臓や骨格の発育異常をもたらす」旨、記述されているが、症状については、メタノールからデカノールまでのいくつかのアルコールに対する結果で、ノナノールでいかなる症状が現れたのかは不明である。以上より、分類できない。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
動物に対する急性試験の結果で、「皮膚や眼、気道に対する刺激性がある」(Patty(5th, 2001))との記述から、区分3(気道刺激性)とした。 なお、ラットを用いた経口投与試験の結果、「体重減少、衰弱の進行(increasing weakness)、眼漏、虚脱の兆候があり、剖検の結果、肺の出血、肝臓の変色、胃腸炎が観察された」(HSDB(2006))旨の記述があるが、発現した投与量が不明である。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ウサギを用いた6ヶ月間吸入ばく露試験で、区分2のガイダンス値の範囲内で「網膜の光受容細胞及びミュラー線維で微細構造に変化がみられた」(環境省リスク評価第6巻(2008)、HSDB(2006))旨、記述されていることから、区分2(眼)とした。
吸引性呼吸器有害性
「10匹中10匹のラットがaspirationにより死亡し、死亡は即時であり、呼吸停止が原因である」(Patty(5th, 2001))旨の記述がある。また、20℃における動粘性率を計算すると14.13mm2/s(HSDB(2006))であり、40℃では20.5mm2/s以下になることが予想されるが、炭化水素ではないため該当しない。国連GHS区分2に該当するが国内では不採用区分であり、分類できない。