急性毒性
経口
GHS分類: 区分外
ラットのLD50値として、2,000 mg/kg、2,775 mg/kg、3,050 mg/kg (SIDS (2009)) に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
GHS分類: 区分外
ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (SIDS (2009)) に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分外
ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG404、GLP準拠) において、本物質を90%含む溶液 (10% Octyltin tris (2-EHMA) CAS番号: 27107-89-7) を適用した結果、軽度の落屑がみられたが10日以内に回復したとの報告がある (SIDS (2009))。以上の結果から、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分2
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質の原液 (> 98%) 0.1 mLを結膜嚢に96時間適用した結果、結膜の刺激性が観察されたが4日以内に回復したとの報告がある (SIDS (2009))。以上より、区分2とした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない
分類できない
皮膚感作性
GHS分類: 区分1
モルモットに本物質を90%含む溶液 (10% Octyltin tris (2-EHMA) CAS番号: 27107-89-7) を適用した感作性試験 (OECD TG 406、GLP準拠) において、陽性反応がみられたとの報告がある (SIDS (2009))。また、本物質を含む溶液 (本物質70%、Octyltin tris (2-EHMA) 30%) を用いた感作性試験 (OECD TG 406、GLP準拠) において、明確な陽性反応がみられたとの報告がある (SIDS (2009))。以上の結果から区分1とした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは細菌の復帰突然変異試験で陰性、陽性のデータが報告されている (SIDS (2009))。
発がん性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
生殖毒性
GHS分類: 区分1B
本物質自体のデータはないが、WHO (CICAD 73 (2006))、OECD (SIDS (2009)) は本物質の有害性をジオクチルスズ化合物として類縁物質の試験データを基に評価している。すなわち、SIDSでは本物質とジオクチルスズ・ジクロリド (DOTC: CAS番号: 3542-36-7)、及びジオクチルスズ・ビス (イソオクチルチオグリコレート) (DOT (IOTG) : CAS番号: 26401-97-8) の3物質を同一カテゴリー物質として扱い、本物質以外の2物質については実験動物の生殖発生毒性に係る試験結果があり、催奇形性を含む強い生殖発生毒性が報告されている (SIDS (2009)、CICAD 73 (2006))。
すなわち、DOT (IOTG) とモノオクチル体のMOT (IOTG) を78.8:16.9 の割合で含む混合物をラットに混餌投与した2世代生殖毒性試験で、F0、F1世代の親動物に胸腺重量の減少、F1世代に死産の増加がみられ、NOAELは 20 ppm (0.5~0.7 mg/kg/day) である (SIDS (2009)) との記述、DOTC (94.1%) をラットに混餌投与した簡易生殖毒性試験 (OECD TG 421) で、親動物では低用量 (10 ppm: 0.5~0.7 mg/kg/day) 以上で胸腺リンパ球の著減、中用量の 100 ppm (4.2~5.9 mg/kg/day) 以上で体重増加量、胸腺重量減少、同腹児数の減少、死産の増加、児動物では矮小児の増加、生後4日までの新生児死亡例の増加が示された (SIDS (2009)) との記述から、一般毒性影響とともに、生殖発生影響が極めて低用量から認められている。
一方、発生毒性としては、DOT (IOTG) と MOT (IOTG) の80 : 20混合物をマウス、ラット、又はウサギの器官形成期に強制経口投与した催奇形性試験において、ラットでは母動物に体重増加抑制がみられる用量 (25 mg/kg/day) で、胎児死亡の増加がみられたのみであったが、マウスでは母動物に胸腺重量の減少がみられる用量 (45 mg/kg/day) をやや上回る用量 (67 mg/kg/day) から口蓋裂、さらに100 mg/kg/dayでは前肢又は後肢の彎曲、肋骨の彎曲又は癒合、脊柱彎曲、外脳症など奇形発生の頻度増加がみられている (SIDS (2009)、CICAD 73 (2006))。また、ウサギでは100 mg/kg/day まで投与しても母動物に一般毒性影響はみられなかったものの、胎児には10 mg/kg/dayで頭蓋骨の骨化不全、100 mg/kg/dayで内臓の奇形 (腎盂拡張、動脈弓に発生源が由来する小血管の奇形、骨格異常) がみられ、最小の発生毒性NOAEL値として、胎児への影響から 1 mg/kg/day と報告されている (SIDS (2009)、CICAD 73 (2006))。
以上、本物質の類縁化合物のジオクチルスズ化合物には実験動物で催奇形性を含む強い生殖発生影響がみられており、本物質も同様の有害性を考慮すべきと考え、本項は「区分1B」とした。
なお、EUは本物質 (DOTE)、及び本物質とMOTE の反応生成物に対して、Repr.1B としてSVHC指定している (ECHA (Access on July 2015))。