急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 930 mg/kg (ACGIH (7th, 2014)、EPA Pesticides RED (1998)、GESTIS (Access on June 2020)、HSDB (Access on June 2020)) (2) ラットのLD50: 雌: 1,150 mg/kg、雄: 1,500 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2012)) (3) ラットのLD50: 1,350 mg/kg (農薬工業会「日本農薬学会誌」第24巻第1号 (1998)、HSDB (Access on June 2020))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: 13,300 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、ACGIH (7th, 2014)、EPA Pesticides RED (1998)、農薬抄録 (2012))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)、(2) からは区分を特定できず、分類できないとした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (3.2E-004 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): > 1.04 mg/L (食安委 農薬評価書 (2013)、EPA Pesticides RED (1998)、農薬抄録 (2012)、HSDB (Access on June 2020)) (2) ラットのLC50 (4時間): > 5.1 mg/L (HSDB (Access on June 2020)) (3) 本物質の蒸気圧: 2.20E-005 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 3.2E-004 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分に該当しない (国連分類基準の区分3相当) とした。
【根拠データ】 (1) ウサギを用いた皮膚刺激性試験において軽度の刺激性を示した (食安委 農薬評価書 (2013))。 (2) 本物質はウサギにおいて重篤な皮膚及び眼に対する刺激性は示さない (ACGIH (7th, 2014))。 (3) 本物質のEPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で、重篤な刺激性は示さず、毒性カテゴリーIV (適用72時間後において軽度の刺激性 (刺激性なし或いは軽度の紅斑)) と報告されている (EPA Pesticides RED (1998))。 (4) 本物質のウサギを用いた24時間適用による皮膚刺激性試験でごく軽度~軽度の紅斑及び浮腫がみられ、一次刺激性インデックスは1.9 (最大8) であり、軽度刺激性と報告されている (農薬工業会「日本農薬学会誌」第24巻第1号 (1998))。 (5) 本物質のウサギを用いた24時間適用による皮膚刺激性試験で、適用24及び72時間後の紅斑の平均スコアはともに1.0、浮腫の平均スコアは1.0及び0.5であり、軽度刺激性と判定された (農薬抄録 (2012)、HSDB (Access on June 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ウサギを用いた眼刺激性試験において軽度の刺激性を示した (食安委 農薬評価書 (2013))。 (2) 本物質はウサギにおいて重篤な皮膚及び眼に対する刺激性は示さない (ACGIH (7th, 2014))。 (3) 本物質はEPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で、重篤な刺激性は示さず、毒性カテゴリーIV (24時間以内に消失する軽微な影響) と報告されている (EPA Pesticides RED (1998))。 (4) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験で重大な刺激性反応はみられず、一次刺激性インデクスは0.4 (最大110) であり、本物質は非刺激性と報告されている (農薬工業会「日本農薬学会誌」第24巻第1号 (1998))。 (5) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験で、適用1及び2日後に軽度の結膜発赤がみられたが、適用72時間後までに全て消失した (農薬抄録 (2012)、HSDB (Access on June 2020))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法)において感作性を示した (食安委 農薬評価書 (2013))。 (2) 本物質はモルモットに対して感作性を示す (ACGIH (7th, 2014))。 (3) EPA OPPTS 870.2600に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験で陽性と報告されている (EPA Pesticides RED (2007))。 (4) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (改変ビューラー法) で、8/10例が陽性と判定された (農薬工業会「日本農薬学会誌」第24巻第1号 (1998)、農薬抄録 (2012))。
【参考データ等】 (5) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2020))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、ラット、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験、ラットの肝臓を用いた染色体異常試験、ラットの鼻部上部細胞を用いたコメットアッセイにおいて陰性の報告がある。一方、ラットの肝細胞を用いた不定期DNA合成試験では陽性及び陰性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2013)、EPA Pesticides RED (1998)、ACGIH (7th, 2014)、農薬抄録 (2012))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験において陽性の報告がある (同上) (3) 本物質はDNA 付加体形成及び DNA 一本鎖切断の増加を誘発するとの記載がある (ACGIH (7th, 2014))。 (4) 本物質は生体において問題となる遺伝毒性はないものと考えられるとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2013))。
発がん性
【分類根拠】 (1)~(3) より区分2とした。新たな情報源を用いて検討し分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2014))、EPAでは高用量でL、低用量ではNL (Likely to be Carcinogenic to Humans: at High Doses; Not Likely to be Carcinogenic to Humans at Low Doses (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on September 2020):1997年分類))、EU CLP分類でCarc.2 (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験が3つ実施され、腺胃腫瘍発生動物数及び悪性神経内分泌細胞腫発生頻度、鼻腔呼吸上皮腺腫の発生頻度の有意な増加、腺胃のがん肉腫、甲状腺腺腫及び腺がんが認められた (食安委 農薬評価書 (2013))。 (3) 雌雄のマウスに本物質を18ヵ月間混餌投与した2つの発がん性試験では、投与に関連した腫瘍性病変の発生頻度増加は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2013))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、親動物毒性 (腎臓増重量増加、慢性腎炎増加、卵巣重量増加等) がみられる用量において、児動物で腎臓重量増加がみられたが、繁殖能に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2013))。 (2) 雌ウサギの妊娠7~19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制及び摂餌量減少) 用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2013))。
【参考データ等】 (3) 雌ラットの妊娠6~19日に強制経口投与した発生毒性試験において、重篤な母動物毒性 (死亡 (4/25例)、軟便、体重増加抑制等) がみられる用量で胎児に対する影響 (初期及び後期胚吸収の軽微な増加による平均着床後死胚数の軽微な増加並びに平均生存胎児数減少) が認められたが催奇形性はみられていない (食安委 農薬評価書 (2013))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの急性ばく露影響に関する報告はない。(1)、(2) より、区分2 (神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットの単回吸入ばく露試験において、1.04 mg/L (区分2の範囲) で、分泌性刺激、軽度の呼吸刺激作用がみられた (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2012))。 (2) ラットの単回経口投与試験 (影響がみられた最小用量の記載なし、少なくともLD50値 (930 mg/kg、区分2の範囲) 付近で影響がみられたと推定) において、運動失調、振戦、多動性、嗜眠、呼吸困難、痙攣がみられ、単回吸入ばく露試験 (影響がみられた最小用量の記載なし、少なくともLC50値 (1.04 mg/L、区分2の範囲) 付近で影響がみられたと推定) において、眼及び鼻に炎症がみられた (HSDB (Access on June 2020))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの反復ばく露に関する有害性の報告はない。実験動物では、(1)~(3) より区分2の用量で鼻腔、肝臓への影響がみられていることから、区分2 (鼻腔、肝臓) とした。新たな情報の追加により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) イヌの6ヵ月間カプセル経口投与試験では、25 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で死亡率の増加、ALT、ALP増加、肝比重量増加、さらに雄では血中尿素窒素増加、肝脂肪変性、雌では総タンパク質の減少、肝胆管増生がみられ、50 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上では雄で総タンパク質減少、肝絶対重量増加、肝胆管増生、雌で肝脂肪変性がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2013))。 (2) ラットの2年間 (雄: 27ヵ月間、雌: 25ヵ月間) 混餌投与試験では、42 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で小葉中心性肝細胞肥大、肝細胞細胞質すりガラス様変性、さらに雄では肝細胞細胞質層状構造、小葉中心性肝細胞壊死がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2013)、ACGIH (7th, 2014)、農薬抄録 (2012))。 (3) ラットの2年間混餌投与試験では、15 mg/kg/day (区分2の範囲) で鼻粘膜下腺過形成及び鼻腔の炎症がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2012))。
【参考データ等】 (4) ラットの2年間 (雄/雌: 27/25ヵ月間) 混餌投与試験では、14 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で眼病変がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2013)、ACGIH (7th, 2014)、農薬抄録 (2012)) が、これはラット (系統: Long Evans) に特有と考えられており、ヒトでの再現性はなかったと報告されている (EPA Pesticides RED (1998)、ACGIH (7th, 2014))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性クラスの内容に変更はない。