安全データシート

tert-ブチルメチルエーテル

改訂日:2024-05-09版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: tert-ブチルメチルエーテル
  • CB番号: CB2853178
  • CAS: 1634-04-4
  • EINECS番号: 216-653-1
  • 同義語: MTBE,t-ブチルメチルエーテル

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: ガソリンのオクタン価向上剤
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
GHS改訂4版を使用
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
物理化学的危険性
引火性液体   区分2
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分3 (気道刺激性、麻酔作用)
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2B
皮膚腐食性/刺激性   区分2
分類実施日(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性
-

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS02GHS07
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H315 皮膚刺激。
H225 引火性の高い液体及び蒸気。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P243 静電気放電に対する措置を講ずること。
P242 火花を発生させない工具を使用すること。
P241 防爆型の【電気機器/換気装置/照明機器/機器】を使用すること。
P240 容器を接地しアースをとること。
P233 容器を密閉しておくこと。
P210 熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
応急措置
P332 + P313 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
保管
P403 + P235 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: MTBE
    Methyl tert-butyl ether
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C5H12O
  • 分子量: 88.15 g/mol
  • CAS番号: 1634-04-4
  • EC番号: 216-653-1
  • 化審法官報公示番号: 2-3220
  • 安衛法官報公示番号: 2-(12)-134

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後の嘔吐には対応が必要。誤嚥の危険。気道の開放状態を保つこと。 嘔吐物の誤嚥後は呼吸不全のおそれ。 直ちに医師を呼ぶ。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
二酸化炭素(CO2) 泡 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
周囲温度で空気と反応して爆発性混合物を生じる。
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
逆火に注意する。
可燃性。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

容器を危険ゾーンから移動させて水で冷やすこと。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 熱や発火源から遠ざける。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。 爆発のおそれ。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

火災及び爆発の予防
炎、熱および発火源から遠ざける。静電気放電に対する予防措置を講ずること。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 3: 可燃性液体
保管条件
容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。 熱や発火源から遠ざける。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
TWA: 50 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.4 mm
破過時間: 120 min
試験物質:Camatril? (KCL 730 / Aldrich Z677442, Size M)
身体の保護
難燃静電気保護服。
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。 爆発のおそれ。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色液体 (HSDB (2017))
臭い
テルペン臭 (HSDB (2017))
臭いのしきい(閾)値
情報なし
pH
情報なし

融点・凝固点

-108.6℃ (HSDB (2017))

沸点、初留点及び沸騰範囲

55℃ (HSDB (2017))

引火点

-33.0℃(-27.4°F)(c.c.) (HSDB (2017))

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

該当しない

燃焼又は爆発範囲

1.5~8.5 (HSDB (2017))

蒸気圧

27 kPa (20℃) (ICSC (J) (2000))

蒸気密度

3.0(計算値) (ICSC (J) (2000))

比重(相対密度)

0.741 (20℃/4℃) (HSDB (2017))

溶解度

水:4.8 g/100 g (HSDB (2017)) エタノールに易溶 (HSDB (2017))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 0.94 (HSDB (2017))

自然発火温度

374℃ (HSDB (2017))

分解温度

情報なし

粘度(粘性率)

情報なし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

蒸気は空気と爆発性混合物を形成することがある。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

強塩基類
ハロゲン
強酸
酸化剤
次と激しく反応

10.4 避けるべき条件

警告
熱、炎、火花。

10.5 混触危険物質

ゴム, 多様なプラスチック

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、2,963 mg/kg (IARC 73 (1999)、ACGIH (7th, 2002))、3,800 mg/kg (EHC 206 (1998)、EU-RAR (2002)、DFGOT vol. 17 (2002))、3,866 mg/kg (ATSDR (1996)、EHC 206 (1998)、EU-RAR (2002)、PATTY (6th, 2012))、4,000 mg/kg (EU-RAR (2002)、DFGOT vol. 17 (2002))、> 2,000 mg/kg (EU-RAR (2002)) との5件の報告があり、4件が区分外 (国連分類基準の区分5)、1件が区分外 (国連分類基準の区分5)又は区分外に該当する。件数の多い区分を採用し、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
GHS分類: 区分外 ウサギのLD50値として、10,000 mg/kg (EHC 206 (1998)、DFGOT vol. 17 (2002))、> 7,400 mg/kg (IARC 73 (1999))、> 10,000 mg/kg (ATSDR (1996)、EHC 206 (1998))、> 10,200 mg/kg (EHC 206 (1998)、DFGOT vol. 17 (2002)、EU-RAR (2002))、及びラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (EU-RAR (2002))、> 6,800 mg/kg (DFGOT vol. 17 (2002)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 区分外 ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、23,576 ppm (ACGIH (7th, 2002))、85 mg/L (23,800 ppm) (EU-RAR (2002))、86 mg/L (24,080 ppm) (IARC 73 (1999))、33,370 ppm (ATSDR (1996)、EU-RAR (2002)、PATTY (6th, 2012))、39,395 ppm (PATTY (6th, 2012)、EU-RAR (2002))、85~142 mg/L (23,800~39,760 ppm) (DFGOT vol. 17 (2002)) との報告に基づき、区分外とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (267,327 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとして、ppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

GHS分類: 区分2 ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG 404準拠) において、本物質の4時間の適用で中等度から重度の浮腫及び中等度の紅斑が認められたとの報告 (EU-RAR (2002)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2 に分類されている(ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

GHS分類: 区分2B ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405準拠) において、本物質の適用により発赤、肥厚、結膜浮腫、分泌亢進等の眼刺激性を示す症状がみられたが、7日以内に回復したとの報告 (DFGOT vol. 17 (2002)) から、区分2Bとした。

呼吸器感作性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

GHS分類: 区分外 モルモットを用いた皮膚感作性試験において、複数の試験で本物質は陰性であるとの報告 (EHC 206 (1998)、DFGOT vol. 17 (2002)、EU-RAR (2002)、ATSDR (1996)) から、区分外とした。

生殖細胞変異原性

GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの末梢血を用いた小核試験、ラット、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、マウスの脾臓リンパ球を用いた遺伝子突然変異試験、マウスの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験でいずれも陰性、ラットのリンパ球を用いたコメットアッセイで陽性である (EU-RAR (2002)、IARC 73 (1999)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、ACGIH (7th, 2002)、ATSDR (1996)、EHC 206 (1998)、DFGOT vol. 17 (2002)、ECETOC TR72 (1997))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、小核試験、染色体異常試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性、姉妹染色分体交換試験で不明確な結果である (EU-RAR (2002)、IARC 73 (1999)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、ACGIH (7th, 2002)、DFGOT vol. 17 (2002)、EHC 206 (1998)、PATTY (6th, 2012)、ECETOC TR72 (1997))。

発がん性

GHS分類: 分類できない ラットに2年間、マウスに18ヵ月間吸入ばく露した発がん性試験において、ラットでは雄に3,000 ppm で腎臓腫瘍 (尿細管腺腫及びがんの合計頻度) と精巣間細胞腺腫の有意な増加が、マウスの試験では雌の8,000 ppm群で肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫及びがんの合計頻度) の増加がみられた (ACGIH (7th, 2002)、IARC 73 (1999)、EU-RAR (2002))。また、ラットに2年間強制経口投与した発がん性試験では1,000 mg/kg/day で雄に精巣間細胞の腫瘍、雌にリンパ腫及び白血病の増加がみられた (ACGIH (7th, 2002)、IARC 73 (1999)、EU-RAR (2002))。これらの腫瘍のうち、腎臓腫瘍はα2uグロブリン増加に関連した雄ラット特異的な所見で (EU-RAR (2002))、精巣間細胞の腫瘍は加齢による寄与が大きい (ACGIH (7th, 2002)) など、いずれもヒトには当てはまらないと結論された (EU-RAR (2002))。既存分類としては、IARCが実験動物での発がん性の証拠は限定的としてグループ3に分類した (IARC 73 (1999)) のに対し、ACGIHはα2uグロブリンによる雄ラットの腎臓腫瘍と雌マウスの肝臓腫瘍は実験動物での発がん性を示す所見と判断し、A3に分類した (ACGIH (7th, 2002))。一方、EUリスク評価ではマウスの肝臓腫瘍も、ラットのリンパ血液系のがんもヒトへの外挿性を考える上で不確実性があり、本物質の発がん性分類は分類区分なし (non-classification) とカテゴリー3 (旧DSD分類で現行CLP分類のカテゴリー2に相当) との境界域に該当すると結論しており (EU-RAR (2002))、EUは本物質の発がん性に関し分類区分を付していない (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。以上、IARCの結論とEUの見解を踏まえて、区分2とするには根拠が不十分と考え、分類できないとした。

生殖毒性

GHS分類: 分類できない ラットを用いた吸入ばく露による1世代試験では、親動物では250 ppm 以上で2回目の妊娠時に妊娠率の低下傾向 (有意差なし)、児動物には1,000 ppm以上で出生時及び生後4日での生存率低下がみられたが、2腹目の児動物には生存率の低下はみられなかった (EU-RAR (2002))。また、ラットを用いた吸入ばく露による2世代試験において、親動物ではF0の3,000 ppm以上で活動性低下及び眼瞼痙攣、8,000 ppm以上で体重増加抑制、F1の3,000 ppm以上で体重増加抑制が、児動物ではF1の8,000 ppmで死亡児数の増加がみられた (一腹で全児16匹の死亡がみられたことによる死亡児数増加で、全体の生存率には変化がなく、本物質投与による影響とは考えられなかった) だけで、生殖能への影響は示されなかった (EU-RAR (2002)、ACGIH (7th, 2002))。一方、妊娠ラット又は妊娠マウスの器官形成期に吸入ばく露した発生毒性試験では、ラット、マウスとも250 ppmから母動物に摂餌量減少がみられたが、胎児には2,500 ppmまでラットでは影響なし、マウスでは2,500 ppmで胸骨分節癒合がみられた (EU-RAR (2002)、ACGIH (7th, 2002)) が、肋骨、脊椎骨に異常がないことから投与による影響ではないと考えられた (EU-RAR (2002))。また、妊娠マウス及び妊娠ウサギを用いたより高濃度 (最高8,000 ppm) の発生毒性試験においても、ウサギの試験では発生影響はみられず、マウスの試験では8,000 ppmで胎児に口蓋裂の頻度増加がみられた (EU-RAR (2002)、ACGIH (7th, 2002)) が、顕著な母動物毒性 (4,000 ppm以上で運動失調、衰弱、努力呼吸などの症状、8,000 ppmで体重増加抑制、着床後胚損失など) による二次的影響と考えられた (EU-RAR (2002))。
一方、ACGIHでは妊娠マウスを用いた発生毒性試験において、4,000 ppm以上でみられた骨格変異頻度の増加、及び8,000 ppmでの口蓋裂はともに本物質投与による影響と判断し、母動物毒性、発生毒性に対するNOELはともに1,000 ppmであると記述されている (ACGIH (7th, 2002))。 以上、吸入経路によるラットを用いた1世代及び2世代試験、及び複数の発生毒性試験からは生殖発生毒性の証拠は示されなかった。しかしながら、妊娠マウスを用いた発生毒性試験の最高用量でみられた口蓋裂の頻度増加が母動物毒性による二次的影響かどうかの判断は難しく、本項は分類ガイダンスに従い、分類できないとした。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

GHS分類: 区分3 (気道刺激性、麻酔作用) マウスの単回吸入ばく露試験において、300 mg/m3以上で、ばく露開始直後から呼吸数の低下が認められ、気道刺激性を示すものであると報告されている (EHC 206 (1998)、ACGIH (7th, 2002)、EU-RAR (2002))。また、ラットの4時間単回吸入ばく露試験において、区分2超の20 mg/L以上で運動失調、歩行異常、振戦が認められたとの報告がある (EHC 206 (1998)、ACGIH (7th, 2002)、EU-RAR (2002)、DFGOT vol. 17 (2002)、IARC 73 (1999))。更にラットの単回経口投与試験において、区分2超の2,000 mg/kg以上で、自発運動低下、筋力低下、過呼吸、運動失調、振戦、立ち直り反射の消失がみられたとの報告がある (EHC 206 (1998)、EU-RAR (2002))。これらの症状は、報告者らにより、一過性の中枢神経系の抑制を示すものであると考察されている (EHC 206 (1998)、EU-RAR (2002)、DFGOT vol. 17 (2002))。以上より区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。なお、ヒトでは、ボランティアによる吸入ばく露試験で、75 ppm、3時間の吸入ばく露で、問診の結果、被験者の一部がごく軽微な頭重感を訴えたとの報告がある (EU-RAR (2002)、EHC 206 (1998)、DFGOT vol. 17 (2002))。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

GHS分類: 分類できない ヒトについては、本物質を含むガソリンにばく露された労働者のうち血中濃度が高いヒトで、ばく露と関連した症状 (頭痛、眼刺激、鼻や喉の灼熱感) を1 つ以上訴えた人達のオッズ比は8.9 (95%信頼区間1.2~75.6) と有意に高いことが報告されている (環境省リスク評価第4巻 (2005)、ACGIH (7th, 2002))。 実験動物については、ラットあるいはマウスを用いた複数の経口あるいは吸入毒性試験が実施されており、区分2のガイダンス値の範囲内では分類根拠となる影響はみられていない。なお、区分2のガイダンス値の範囲を超える用量において主に神経系への影響がみられたほか、雄ラット特有の腎障害がみられている (環境省リスク評価第4巻 (2005)、ACGIH (7th, 2002)、EHC 206 (1998)、DFGOT vol. 17 (2002)、EU-RAR (2002))。 以上、分類根拠となる所見はみられないものの、ヒトにおいて刺激性のほか頭痛がみられていること、実験動物においても高用量で神経系への影響がみられることから区分外とはせず分類できないとした。

吸引性呼吸器有害性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
半静止試験 LC50 - Menidia beryllina - 574 mg/l - 96 h
(OECD 試験ガイドライン 203)
ミジンコ等の水生無脊
流水式試験 EC50 - Americamysis bahia (Mysid) - 187 mg/l - 96 h
椎動物に対する毒性
(アミ類急性毒性試験)
藻類に対する毒性
止水式試験 IC50 - Pseudokirchneriella subcapitata (緑藻) - 491 mg/l - 96 h
微生物毒性
止水式試験 EC10 - Pseudomonas putida (シュードモナス‐プチダ) - 710 mg/l
- 18 h
備考: (ECHA)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 28 d
結果: 0 % - 易分解性ではない。
(OECD 試験ガイドライン 301D)

12.3 生体蓄積性

生物濃縮因子(BCF): 1.5
で 25 °C(メチル-ターシャリ-ブチルエーテル)
生体蓄積性 Cyprinus carpio (コイ) - 28 d

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 2398    IMDG (海上規制): 2398    IATA-DGR (航空規制): 2398

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Methyl tert-butyl ether
IMDG (海上規制): METHYL tert-BUTYL ETHER
ADR/RID (陸上規制): METHYL tert-BUTYL ETHER

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 3    IMDG (海上規制): 3    IATA-DGR (航空規制): 3

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

非該当
ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

ゴム, 多様なプラスチック

15. 適用法令

労働安全衛生法

危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号) 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

消防法

第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)

港則法

その他の危険物・引火性液体類(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)

航空法

引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)

船舶安全法

引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)

水質汚濁防止法

指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)

海洋汚染防止法

有害液体物質(Z類物質)(施行令別表第1)

化審法

新規公示化学物質(2011年3月31日以前届出)

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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