急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (農薬抄録 (2012)) (2) ラットのLD50: 雄: 4,665 mg/kg、雌: 5,000 mg/kg (媒体としてコーン油を使用) (農薬抄録 (2011)) (3) ラットのLD50: 雄: 4,670 mg/kg、雌: 5,000 mg/kg (媒体としてコーン油を使用) (食安委 農薬評価書 (2012)) (4) ラットのLD50: > 10,000 mg/kg (媒体として0.5%CMCを使用) (食安委 農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2011)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第11巻第4号 (1986))
【参考データ等】 (5) ラットのLD50: 1,050 mg/kg (MOE初期評価第8巻:暫定的有害性評価シート (2010)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020)) (6) ラットのLD50: 雌: 1,050 mg/kg、雄: 1,250 mg/kg (Canada Pesticides (2007)、HSDB (Access on May 2020))
経皮
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (農薬抄録 (2012)) (2) ラットのLD50: > 2,500 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2011)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第11巻第4号 (1986)) (3) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2011)) (4) ウサギのLD50: 2,260 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020)) (5) ウサギのLD50: > 5,000 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。 なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。 ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (1.4E-004 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): > 6.73 mg/L (食安委 農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2011)) (2) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): > 320 mg/L (食安委 農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2011)、HSDB (Access on May 2020)) (3) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): > 0.343 mg/L (農薬抄録 (2012)) (4) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): > 1.21 mg/L (農薬抄録 (2012)) (5) 本物質の蒸気圧: 9.4E-006 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 1.4E-004 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質のウサギを用いた皮膚刺激性試験で刺激性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2012))。 (2) EPA OPP 81-5に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で刺激性を示さない (EPA Pesticides RED (1997))。 (3) 本物質のウサギを用いた4時間半閉塞適用による皮膚刺激性試験で、刺激性変化はみられず、刺激性はないと判断された (農薬抄録 (2011))。 (4) 本物質は軽度の皮膚刺激性物質である (HSDB (Access on May 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験で軽度から中等度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2012))。 (2) EPA OPP 81-4に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の結膜刺激性を示す (EPA Pesticides RED (1997))。 (3) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験で、虹彩炎及び結膜刺激性がみられたが、48時間後までには全て消失した (農薬抄録 (2012))。 (4) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験で、適用1時間後に結膜発赤、結膜浮腫、分泌物について、スコア1~2程度の反応がみられたが、48時間後までには全て消失した (農薬抄録 (2011))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。なお、EUが区分1の根拠とした (5) のデータは、24h後の反応率 (55%) から、中等度の感作性と報告されているが、この反応は48時間後には5% (1/20例) まで低下しており、刺激性反応と考えるのが妥当と思われる。
【根拠データ】 (1) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) で感作性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2011))。 (2) モルモットを用いたEPA OPP 81-6 に準拠した皮膚感作性試験 (ビューラー法 適用濃度 100%) 及びOECD TG406に準拠した皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 5%)で陰性と報告されている (CLP Report (2019)、農薬抄録 (2011))。 (3) EPA OPP 81-6に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験で陰性と報告されている (EPA Pesticides RED (1997))。 (4) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 5%)で陰性と報告されている (農薬抄録 (2012))。
【参考データ等】 (5) EPA OPP 81-6に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 10%) で、惹起 (25%)後、24h後には11/20例に軽度の紅斑がみられ、48h後には1/20例のみに反応がみられ、24h後の反応率 (55%) から、中等度の感作性と報告されている (CLP Report (2019))。 (6) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on August 2020))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、ラットを用いた優性致死試験及びラット骨髄細胞を用いた染色体異常試験、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験において陰性の報告がある (EPA Pesticides RED (1997)、農薬抄録 (2012))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性及び陰性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性の報告がある (同上)。
発がん性
【分類根拠】 (1)~(3) より区分2とした。新たな情報源を用いて検討し、分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPAでグループC (Possible Human Carcinogen) (EPA Pesticides RED (1997)) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験において、雌雄で甲状腺腺腫の有意な増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2012))。 (3) 雌雄のマウスに本物質を18ヵ月間混餌投与した発がん性試験では、投与による腫瘍発生の増加は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2012))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(4) の報告があり、 (3)、(4) より、区分2とした。新たな情報源を用い検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた混餌による2世代繁殖試験において、親動物に体重増加抑制、摂餌量減少がみられる用量で、児動物に体重低下、軽度で有意差のない新生児同腹児数減少がみられている (食安委 農薬評価書 (2012)、CLP Report (2019))。 (2) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性、胎児毒性ともにみられていない (食安委 農薬評価書 (2012)、CLP Report (2019))。 (3) 雌ウサギの妊娠6~18日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に摂餌量及び飲水量低下並びに体重増加抑制がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2012))。この試験について、CLP Report (2019) では、母動物毒性はみられていないが、胎児に12対未満の肋骨及び欠損/不完全脊椎の発生率増加がみられているとしている。 (4) CLP Report (2019) では、(3) で明らかな母動物毒性が認められない場合に発生影響が認められていることに基づき、試験の限界 (骨格標本が骨の骨化部分だけを染色するアリザリンレッド染色のみが行われ、軟骨の染色は含まれないことから、12対未満の肋骨が、肋骨欠損を真に反映しているのかどうかを結論付けることは困難である。また、胎児の骨格骨化が影響を受けたことを示す他の徴候が無いこと) を考慮して生殖影響区分2 (Repr.2) に分類することを提案している。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの急性ばく露影響に関する報告はない。実験動物では、(1)~(3) より、経口、経皮、吸入のいずれの経路においても標的臓器を特定可能な所見は得られず、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットの単回経口投与試験において、2,500 mg/kg (区分2超) 以上で、流涎、行動不活発、尿の変色、虚脱、尿量増加がみられ、別のラットの単回経口投与試験では5,000 mg/kg (区分2超) 以上で自発運動低下がみられた (食安委 農薬評価書 (2012))。 (2) ラットの単回経皮適用試験において、5,000 mg/kg (区分2超) で血涙 (1例)、尿の変色及び被毛の黄色着染 (全投与群) がみられた (食安委 農薬評価書 (2012))。 (3) ラットの4時間単回吸入ばく露試験 (鼻部ばく露) において、6.73 mg/L (区分2超) で呼吸困難、流涙、あえぎ呼吸、湿潤ラ音がみられたが、媒体対照群にも観察されていたことから、吸入ばく露による症状であり、本物質の中毒症状ではないと報告されている (食安委 農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2011))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1 (肝臓) とした。(1) では血液への影響もみられているが、雌のみにみれた変化であり、同様の他の試験では血液への影響がみられず一貫性がないことから標的臓器としなかった。また、(2) では甲状腺への影響もみられているが、肝代謝活性化に伴う二次的影響と考えられることから標的臓器としなかった。新たな情報を用いて検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた90日間の混餌投与試験において、1,800 ppm (90 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雌で体重増加抑制、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値の減少がみられたと報告されている (食安委 農薬評価書 (2012))。 (2) ラットを用いた2年間の経口投与試験において、100 ppm (5 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雌雄で門脈周囲肝細胞肥大、肝細胞のすりガラス細胞質変性及び脂肪変性が、500 ppm (25 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雌雄で同心性層状細胞形質体、甲状腺ろ胞上皮細胞の分泌顆粒増加、雄で肝重量増加が、2,500/5,000 ppm (125/250 m/kg/day、区分2超) の雌雄で体重増加抑制、甲状腺重量増加、肝結節性過形成、雌で摂餌量減少、肝重量増加がみられた (食安委 農薬評価書 (2012))。 (3) イヌを用いた2年間の経口投与試験において、50 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上の雌雄で肝慢性炎症及び胆汁うっ滞、雄でALP増加、雌で胆管過形成、肝細胞壊死がみられたと報告されている (食安委 農薬評価書 (2012)、EPA Pesticides RED (1997))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性クラスの内容に変更はない。