安全データシート

メルカプト酢酸アンモニウム

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: メルカプト酢酸アンモニウム
  • CB番号: CB5445341
  • CAS: 5421-46-5
  • 同義語: チオグリコール酸アンモニウム,チオグリコール酸アンモニウム (約60%水溶液)

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: パーマネントウェーブ用剤,羊毛染色整理剤,塩ビ安定剤,防錆剤,金属表面処理剤 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R5.3.31、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
急性毒性(経口)   区分3
皮膚感作性   区分1A
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(全身毒性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分2(血液系、肝臓)
分類実施日(環境有害性)
-
環境に対する有害性
-

ラベル要素

絵表示又はシンボル
GHS05GHS06
注意喚起語
危険
危険有害性情報
金属腐食のおそれ
飲み込むと有毒
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
水生生物に有害
注意書き
[安全対策]
他の容器に移し替えないこと。
ミスト、蒸気、スプレーの吸入を避けること。
環境への放出を避けること。
この製品を使用する時に、飲食または喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
取扱い後は手や顔をよく洗うこと。
保護手袋を着用すること。
[応急措置]
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。口をすすぐこと。
皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。皮膚刺激または発疹が生じ
た場合:医師の診断、手当てを受けること。汚染された衣類を脱ぐこと。そし
て再使用する場合には洗濯をすること。
物的被害を防止するため流出したものを吸収すること。
[保管]
耐食性のある容器に保管すること。
施錠して保管すること。
[廃棄]
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に委託す
ること。

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質/混合物の区別: : 混合物
  • 化学名又は一般名: : チオグリコール酸アンモニウム (約60%水溶液)
  • 濃度又は濃度範囲: : ....
  • CAS RN: : 5421-46-5
  • 別名 : Ammonium Mercaptoacetate (ca. 60% in Water) , Thioglycolic Acid Ammonium Salt(ca. 60% in Water)
  • 化学式: : C2H7NO2S
  • 官報公示整理番号 化審法: : 該当なし

4. 応急措置

吸入した場合:

空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。気分が悪い時
は、医師の診断、手当てを受けること。

皮膚に付着した場合:

直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぐこと、取り除くこと。多量の水と石鹸で
洗うこと。皮膚刺激または発疹が生じた場合は、医師の診断、手当てを受ける
こと。

目に入った場合:

水で数分間注意深く洗うこと。コンタクトレンズを容易にはずせる場合は外し
て洗うこと。眼の刺激が続く場合は、医師の診断、手当てを受けること。

飲み込んだ場合:

直ちに医師に連絡すること。口をすすぐこと。

応急措置をする者の保護:

救助者はゴム手袋、密閉ゴーグルなどの保護具を着用する。

5. 火災時の措置

適切な消火剤:

粉末, 泡, 水噴霧, 二酸化炭素

火災時の特定危険有害性:

燃焼や高温により分解し、有毒なヒュームを発生する恐れがあるので注意する。

特有の消火方法:

消火作業は、風上から行い、周囲の状況に応じた適切な消火方法を用いる。関係者以外は安全な場所に退去させる。周辺火災時、移動可能な容器は、速やかに安全な場所に移す。

消火を行う者の保護:

消火作業の際は、必ず保護具を着用する。

6. 漏出時の措置

人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置:

個人用保護具を着用する。
漏出場所の風上から作業し、風下の人を退避させる。
十分に換気を行う。
漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立入りを禁止す
る。

環境に対する注意事項:

製品が排水路に排出されないよう注意する。

封じ込め及び浄化の方法及び機材:

ウエス、乾燥砂、土、おがくずなどに吸収させて回収する。
大量の流出には盛土で囲って流出を防止する。
付着物、回収物などは、関係法規に基づき速やかに処分する。

7. 取扱い及び保管上の注意

取扱い

技術的対策:
取扱いは換気のよい場所で行う。適切な保護具を着用する。漏れ、あふれ、飛散しないよう注意し、みだりに蒸気を発生させない。取扱い後は手や顔などをよく洗う。
注意事項:
できれば、密閉系で取扱う。蒸気やエアゾールが発生する場合には、換気、局所排気を用いる。
安全取扱い注意事項:
皮膚、眼および衣類との接触を避ける。耐食性のある装置や器具を使用する。

保管

適切な保管条件:
容器を密栓して冷暗所に保管する。施錠して保管する。酸化剤などの混触危険物質から離して保管する。
安全な容器包装材料:
法令の定めるところに従う。他の容器に移し替えないこと。

8. ばく露防止及び保護措置

設備対策:

密閉化した設備又は局所排気装置を設ける。取扱い場所の近くに洗眼及び身体洗浄用の設備を設ける。

管理濃度:

設定されていない。

保護具

呼吸用保護具:
防毒マスク、自給式呼吸器、送気マスク等。
手の保護具:
不浸透性の手袋。
眼、顔面の保護具:
保護眼鏡(ゴーグル型)。状況に応じ保護面。
皮膚及び身体の保護具:
不浸透性の保護衣。状況に応じ、保護長靴。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
液体(GHS判定)
無色~淡いピンク
臭い
強烈なスカンクのような不快臭

融点/凝固点

データなし

沸点、初留点及び沸騰範囲

≒100 ℃(GESTIS(2022))

可燃性

データなし

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

データなし

引火点

データなし

自然発火点

データなし

分解温度

データなし

pH

7.0-7.2(HSDB in PubChem(2022))

動粘性率

データなし

溶解度

水: (可溶)(GESTIS(2022)) 水: (混和性)(HSDB in PubChem(2022))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow: -2.85(推定値)(HSDB in PubChem(2022))

蒸気圧

データなし

密度及び/又は相対密度

1.205 (20℃)(HSDB in PubChem(2022)) 1.23 g/cm³(GESTIS(2022))

相対ガス密度

データなし

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

反応性:

情報なし

化学的安定性:

適切な条件下においては安定。

危険有害反応可能性:

特別な反応性は報告されていない。

避けるべき条件:

情報なし

混触危険物質:

酸化剤

危険有害な分解生成物:

二酸化炭素, 一酸化炭素, 窒素酸化物, 硫黄酸化物

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分3とした。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50(純度71%):25~200 mg/kgの間(25 mg/kgで0/10例、200 mg/kgで全例死亡、100%換算:17.75~142 mg/kg)(OECD TG 401、GLP)(SIAR (2009)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022)) (2)ラットのLD50(純度71%):50~200 mg/kgの間(50 mg/kgで0/6例、200 mg/kgで全例死亡、100%換算:35.5~142 mg/kg)(OECD TG 423、GLP)(SIAR (2009)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))
【参考データ等】 (3)本物質は、非常に吸湿性が高く酸化しやすいため、71%水溶液として製造されている。(SIAR (2009))
経皮
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分を特定できず、分類できない。
【参考データ等】 (1)ラットのLD50(純度71%):> 2,000 mg/kg(100%換算値:1,420 mg/kg)(OECD TG 402、GLP)(SIAR (2009)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022)) (2)ウサギのLD50(純度71%):> 200 mg/kg(100%換算値:142 mg/kg)(SIAR (2009)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)本物質71%溶液について、ウサギ(n=3)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、半閉塞、4時間適用、6日間観察)において、2例で軽微な紅斑がみられたが、みられた影響は6日以内に回復した(紅斑・痂皮スコア:1/0/0、浮腫スコア:0/0/0)との報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。
【参考データ等】 (2)本物質71%溶液について、ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(閉塞、24時間適用)において、6例中3例が試験中に死亡した。生存例3例の無傷皮膚における24/72h後の紅斑・痂皮スコアの平均は3.0、3.0、3.0であり、浮腫スコアの平均は2.5、3.0、2.5であったとの報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。 (3)ヒトの皮膚刺激性及び感作性について、本物質の14.4~18%溶液を用いた多数の研究(上腕又は背中の皮膚に対する反復侵襲パッチテスト)と本物質を4.4%含有した整髪製品を用いた研究が報告されている。これらの試験では誘導期の最初数回の適用で皮膚反応のために、多くの人が試験から脱落した。皮膚反応のほとんどは軽微であったが、視認可能な発赤又は紅斑(スコア(4段階):0~1)であった。一方、軽度の紅斑(スコア:1/4)又は中等度の紅斑(スコア:2/4)の症例もみられた(SIAR (2009))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)本物質71%溶液について、ウサギ(n=3)を用いた眼刺激性試験(OECD TG 405、GLP、72時間観察)において、全例で軽度の結膜影響がみられたが、みられた影響は72時間以内に回復した(角膜混濁スコア:0/0/0、虹彩炎スコア:0/0/0、結膜発赤スコア:0.7/1/1、結膜浮腫スコア:0.7/0.7/0.7)との報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。 (2)本物質71%溶液について、ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(7日間観察)において、全例で結膜発赤がみられたが、7日以内に回復した(24/48/72h後の角膜混濁スコアの平均:0、虹彩炎スコアの平均:0、結膜発赤スコアの平均:2.6、結膜浮腫スコアの平均:0)との報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。

呼吸器感作性

データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)より、区分1Aとした。
【根拠データ】 (1)マウス(n=5/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は2.7(0.5%)7.0(8%)、全例死亡のため測定不能(20%)であり、EC3値は0.65%と算出されたとの報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。
【参考データ等】 (2)メルカプト酢酸の塩、特に本物質を含む製品を用いて作業する理容師で多くの皮膚感作症例が報告されている(AICIS IMAP (2014))。 (3)ヒトの皮膚刺激性及び感作性について、本物質の14.4~18%溶液を用いた多数の研究(上腕又は背中の皮膚に対する反復侵襲パッチテスト)と本物質を4.4%含有した整髪製品を用いた研究が報告されている。誘導期及び誘発期を完了した被験者のうち、いずれかの期間に皮膚反応を生じた割合は9~47%であり、4試験のうちアレルギー性接触皮膚炎様の2症例が発生したとの報告がある(AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)~(3)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)In vitroでは、本物質(71%水溶液)について、細菌を用いた復帰突然変異試験(OECD TG471、GLP)、及びマウスリンパ腫L5178Y細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陰性の結果であった(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014))。 (2)In vivoでは、チオグリコール酸ナトリウム(CAS番号 367-51-1:純度99.4%)について、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験(単回経口投与、最大250 mg/kg)では陰性の結果であった(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014))。 (3)チオグリコール酸(CAS番号 68-11-1)の80.2%水溶液(pH 4)について、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験(2日間経皮投与、雄:最大1,000 mg/kg、雌:同500 mg/kg)では、雌雄とも最高用量まで小核誘発の増加は認められず、陰性と判断された(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014))。
【参考データ等】 (4)チオグリコール酸ナトリウム(純度99%)について、マウスの末梢血を用いた小核試験(13週間経皮投与、最大360 mg/kg)では、雄は陰性であったが、雌は最高投与群で小核を有する正染性赤血球の比率の有意な増加がみられ陽性と判断された。なお、チオグリコール酸はin vitroで染色体異常を誘発せず、チオグリコール酸ナトリウムは最大耐用量まで経皮および経口経路で急性投与した場合、染色体異常誘発性の証拠を示さなかったため、この結果は疑わしいと報告されている。(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014))。

発がん性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【参考データ等】 (1)チオグリコール酸ナトリウム(CAS番号 367-51-1)について、マウスを用いた経皮投与による発がん性試験において、投与群(1.0 %(6.6 mg/kg/day)、2.0%(13.3 mg/kg/day))、対照群ともに様々な臓器に腫瘍発生がみられたが、投与群と対照群との間で腫瘍発生頻度に有意な差はみられなかった。表皮の腫瘍はみられなかったと報告されている(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1)より、本物質はナトリウム塩のデータを使用して分類を行った。(2)、(3)より、ナトリウム塩を用いた経口投与による生殖毒性試験では、雌親動物に約24~40%の高死亡率が生じた高用量群で二次的影響として生殖発生影響がみられたものの、中用量群では親動物、児動物ともに明瞭な毒性影響はみられなかった。(4)~(6)より、本物質又はナトリウム塩を用いた経口及び経皮投与による発生毒性試験では、母動物の致死用量でも胎児には無影響か軽微な影響に限られた。以上より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1)本物質を含むメルカプト酸の塩は溶液中で解離し、メルカプト酢酸アニオンと毒性の低い金属カチオン(カルシウム、アンモニウム、カリウム、ストロンチウム、ナトリウム)を生成するとの報告がある(AICIS IMAP (2014))。 (2)チオグリコール酸ナトリウム(CAS番号 367-51-1)について、ラットを用いた強制経口投与による二世代生殖毒性試験(OECD TG416、10~40 mg/kg/day)において、最高用量(40 mg/kg/day)ではF0親動物に著しい一般毒性影響として、死亡(雌:4/25例)、肝門脈域の空胞化(雄:2/25例、雌:6/25例)、血中脂肪酸濃度の低下(雌)がみられたが、生殖能には有害影響はみられなかったとの報告がある。同群のF1及びF2児動物には親動物毒性の二次的影響とみられる生存率低下がみられた以外に発生影響はみられなかったとの報告がある。なお、母毒性のNOAELは20mg/kg/day、生殖毒性のNOAELは20mg/kg/dayとされたとの報告がある(AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed 2022))。 (3)チオグリコール酸ナトリウム(CAS番号 367-51-1:純度98.9%)について、ラットを用いた強制経口投与による生殖発生毒性スクリーニング試験(OECD TG421、GLP、20~80 mg/kg/day)では、中用量(40 mg/kg/day)以上で親動物に流涎がみられ、死亡例が中用量で雌1/12例に、高用量(80 mg/kg/day)で雄2/12例、雌5/12例にみられたとの報告がある。生殖発生影響として、妊娠期間の延長、着床数・産児数の減少、黄体数の低値傾向、全胚吸収雌(1例)、精嚢相対重量低値が高用量群でみられたとの報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed 2022))。 (4)本物質(71%水溶液)について、ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(OECD TG414、GLP、3~75 mg/kg bw/d)において、最高用量(75 mg/kg/day)で母動物毒性(死亡2/25例、営巣行動増加)がみられたが、胎児に発生影響はみられなかったとの報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed 2022))。 (5)チオグリコール酸ナトリウムについて、ラットを用いた経皮投与による発生毒性試験(OECD TG414、6時間/日、50~200 mg/kg bw/d)において、母動物で局所影響以外に死亡(1/25例)及び体重増加抑制がみられた高用量(200 mg/kg/day)で、胎児に低体重がみられたのみであったとの報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed 2022))。 (6)チオグリコール酸ナトリウムについて、ウサギを用いた経皮投与による発生毒性試験(OECD TG414、6時間/日、10~65 mg/kg bw/d)において、最高用量(65 mg/kg/day)まで母動物に局所影響(紅斑)のみがみられ、胎児にも影響はみられなかったとの報告がある(SIAR (2009)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed 2022))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 (1)より、経口経路において区分1の用量範囲で標的臓器を特定できない影響がみられることから、区分1(全身毒性)とした。
【根拠データ】 (1)ラットを用いた2つの単回経口投与試験(純度71%)において、200 mg/kg(区分1の範囲)で全例が死亡し、死亡前に活動性低下、握力・四肢・体幹の緊張低下、呼吸数低下、呼吸困難等がみられ、剖検で消化管刺激の所見、肺気腫等がみられたとの報告がある(SIAR & SIDS Dossier (2009)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。
【参考データ等】 (2)ラットを用いた単回経皮投与試験(純度71%)において、2,000 mg/kg(区分2の範囲)で死亡例も症状発現もみられなかったとの報告がある(SIAR & SIDS Dossier (2009)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。 (3)チオグリコール酸(CASRN:68-11-1)を被験物質とした、ラットを用いた単回吸入ばく露試験において、LC50(蒸気、4時間)は1.98 mg/L(雄)、1.09 mg/L(雌)であり、症状として不規則・努力呼吸、被毛粗剛、運動性低下、後肢の振戦・麻痺がみられたとの報告がある(AICIS IMAP (2014)、SIAR (2009))。 (4)急性または反復投与毒性試験で観察された死亡及び全身毒性は、主にミトコンドリアにおける脂肪酸のβ酸化阻害によって生じた結果であると結論付けている (SIAR (2009))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 本項は、チオグリコール酸ナトリウム(CASRN:367-51-1)のデータに基づき分類した。(1)、(2)より、区分2の用量範囲で血液系、肝臓への影響がみられることから区分2(血液系、肝臓)とした。
【根拠データ】 (1)チオグリコール酸ナトリウム(46.1%水溶液)を被験物質とした、ラットを用いた強制経口投与による13週間反復経口投与試験(OECD TG 408、GLP)において、60 mg/kg/day(区分2の範囲)で血液系(総白血球数・リンパ球・白血球各分画の減少、赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリットの減少、PTの増加、脾臓及び肝臓における髄外造血)及び肝臓(AST・ALT・脂肪酸の増加、小葉構造明瞭化、門脈周囲肝細胞の微細空胞化(中性脂質包含)、単細胞壊死等)、心筋(変性性心筋症(雌1例))、腎臓(血中尿素の増加、クレアチニン増加(雄のみ)、近位尿細管空胞化(雌のみ))への影響がみられたとの報告がある(SIAR & SIDS Dossier (2009)、AICIS IMAP (2014))。 (2)チオグリコール酸ナトリウム(46.1%水溶液)を被験物質とした、ラットを用いた強制経口投与による二世代生殖毒性試験(OECD TG 416、GLP、交配前10週間投与)において、40 mg/kg/day(区分2の範囲)で肝細胞の微細空胞化(雄2/25例、雌6/25例)、尿素の減少(雄)、脂肪酸の減少(雌)がみられ、肝臓の微細空胞化を生じた妊娠雌6例中の4例が死亡、残り2例も切迫と殺されたとの報告がある(AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。
【参考データ等】 (3)チオグリコール酸ナトリウム(純度99%)を被験物質とした、ラットとマウスを用いた13週間反復経皮投与試験(5日/週)において、ラットでは11.25 mg/kg/day(区分2の範囲)以上、マウスでは22.5 mg/kg/day(区分2の範囲)以上で適用部位皮膚の傷害(表皮・皮脂腺の過形成、錯角化症、過角化、炎症)がみられた。その他、肝臓、腎臓等に臓器重量変化がみられたが病理組織学的に変化は認められず、標的臓器は投与部位皮膚のみと判断されたとの報告がある(SIAR & SIDS Dossier (2009)、AICIS IMAP (2014))。

誤えん有害性*

データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

生態毒性:

魚類:
情報なし
甲殻類:
情報なし
藻類:
情報なし

残留性・分解性:

情報なし

生体蓄積性(BCF):

情報なし

土壌中の移動性

オクタノール/水分配係数:
情報なし
土壌吸着係数(Koc):
情報なし
ヘンリー定数(PaM 3/mol):
情報なし

オゾン層への有害性:

情報なし

13. 廃棄上の注意

適切な保護具を着用する。
地方条例や国内規制に従う。
空容器を処分する時は、内容物を完全に除去した後に行う。
処理施設がないなどの理由で廃棄できない場合は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託する。

14. 輸送上の注意

国連番号:

2922

品名(国連輸送名):

Corrosive liquid, toxic, n.o.s.

国連分類:

クラス8(腐食性物質)

副次的危険性:

クラス6.1(毒物)

容器等級:

輸送の特定の安全対策及び条件:

運搬に際しては容器に漏れのないことを確かめ、転倒、落下、損傷のないように
積み込み、荷崩れの防止を確実に行い、法令の定めるところに従う。

15. 適用法令

労働安全衛生法

該当しない

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

該当しない

毒物及び劇物取締法

該当しない

水質汚濁防止法

有害物質(法第2条、施行令第2条)

船舶安全法

腐食性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)

航空法

腐食性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)

港則法

その他の危険物・腐食性物質(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
免責事項:

本MSDS中の情報は指定された製品にのみ適用され、特に規定がない限り、本製品とその他の物質の混合物には適用されません。本MSDSは、製品使用者の適切な専門的なトレーニングを受けた者にのみ製品安全情報を提供します。本MSDSの使用者は、本SDSの適用性について独自に判断しなければならない。本MSDSの著者は、本MSDSの使用によるいかなる傷害にも責任を負わない。

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