急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分3とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:121 mg/kg (ACGIH (7th, 2019)) (2) ラットのLD50:178.46 mg/kg (REACH登録情報 (Access on August 2019))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:> 2,000 mg/kg (REACH登録情報 (Access on August 2019))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験 (4時間半閉塞適用) において、24/48/72hの紅斑及び浮腫の平均スコアはそれぞれ1.8及び2.9であり、14日後にも痂皮及び瘢痕が残ったことから腐食性ありと判定された (REACH登録情報 (Access on July 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1) より、皮膚腐食性 (区分1) と判定されているため、区分1とした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験 (4時間半閉塞適用) において24/48/72hの紅斑及び浮腫の平均スコアはそれぞれ1.8及び2.9あり、14日後にも痂皮及び瘢痕が残り皮膚腐食性 (区分1) と判定されている (REACH登録情報 (Access on July 2019))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 (1)~(2) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 本物質の職業ばく露と関連した気管支喘息及び接触皮膚炎の症例が複数報告された (NTP TR84 (2018))。 (2) 病院内で本物質を用いる内視鏡部門の作業者70人の健康有害影響を調べた研究において、17人が接触皮膚炎、職業喘息及び眼刺激と診断された (NTP TR84 (2018))。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1) で使用されたマウス系統はOECD TG 429の推奨系統ではないが、EC3は区分1A相当の0.051%と報告されており、(2) の結果も区分1Aを支持することから、区分1Aとした。
【根拠データ】 (1) BALB/cマウスを用いたマウス局所リンパ節試験 (LLNA) においてEC3は0.051%と報告されている (ACGIH (7th, 2019))。 (2) モルモット (20例、雌) を用いたマキシマイゼーション試験 (OECD TG 406、GLP、皮内感作 0.1%、経皮感作1%、誘発0.1%) において、19/20例で陽性反応がみられた (REACH 登録情報 (Access on July 2019))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、遺伝毒性の懸念なしとするに足る十分なデータがなく、データ不足で分類できない。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、ラットを用いた小核試験 (3ヵ月吸入ばく露) で陰性、マウスを用いた小核試験 (3ヵ月吸入ばく露) で陰性又は曖昧な結果の報告がある (NTP DB (Access on June 2019)、NTP TR84 (2018))。 (2) in vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験で陽性結果の報告がある (NTP DB (Access on June 2019)、NTP TR84 (2018))。
発がん性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) より、発生毒性に関しては母動物毒性がみられる用量においても胚/胎児に対する影響はみられていない。しかし、生殖能に関するデータがないことからデータ不足で分類できないとした。
【根拠データ】 (1) 雌ラットの妊娠6~15日に経口投与した発生毒性試験 (EPA OPP 83-3準拠) において、母動物では死亡例がみられる中及び高用量においても、胎児には体重低値及び骨格変異がみられただけであった (REACH 登録情報 (Access on July 2019))。
【参考データ等】 (2) ラット及びマウスを用いた吸入経路による14週間反復投与毒性試験において、ラットで精巣、精巣上体及び精巣上体尾部の重量の減少、ラット及びマウスで精子の運動性の低下、精巣及び精巣上体の病理組織学的病変 (精巣上体で剥離した生殖細胞の増加、精巣で精子細胞変性、胚上皮のアポトーシス、及び間細胞萎縮等) がみられた (NTP TR84 (2018))。 (3) 妊娠中にフタルアルデヒドにばく露された実験動物では妊娠中絶や先天性欠損症の徴候はみられなかったが、母動物毒性がみられた高用量で骨化遅延がみられた。 実験動物においてフタルアルデヒドが不妊を引き起こす可能性に関するデータは入手できなかった。しかしながら、低濃度のフタルアルデヒドに繰り返しばく露した後、精巣に対する損傷ならびに精子数の減少及び運動性が雄動物において観察された (HSDB (Access on June 2019))。これらのデータについては混合物のデータで詳細が不明のため参考データとした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)~(3) で、ヒトにおいて呼吸器に影響を与えるとの報告より、区分1 (呼吸器) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質を用いて消毒され、洗浄が不十分であった医療機器 (食道及び大腸内視鏡等) の使用による患者のばく露事故例が多数報告されている (NTP TR84 (2018))。原典論文には、一例として、患者が口唇、舌、喉頭、食道に熱傷を生じた症例が記載されている (Venticinque et al., Anesth. Analg. 97, 1260-1261, 2003)。 (2) 消毒剤として使用された本物質が不十分な洗浄のために残留・付着していた内視鏡の使用により、患者が中咽頭と喉頭に熱傷を生じた症例が1例、報告されている (HSDB (Access on June 2019))。 (3) 消毒剤として使用された本物質が不十分な洗浄のために残留・付着していた経食道超音波装置の使用により、患者が口唇、舌、咽頭、食道の皮膚と粘膜に広範で重篤な損傷を生じた症例が1例、報告されている (HSDB (Access on June 2019))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1 (呼吸器、生殖器 (男性)) とした。
【根拠データ】 (1) ラットに0.44~7.0 ppm (ガイダンス値換算: 0.002~0.03 mg/L、区分1の範囲) の濃度で14週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日間/週) した結果、0.44 ppm 以上で鼻腔の化膿性炎症、0.88 ppm 以上で異常呼吸、くしゃみ、精巣重量の減少、鼻腔、喉頭、気管への影響等、3.5 ppm以上で死亡、肺胞及び気管支への影響、精巣の間細胞萎縮等がみられ、7.0 ppm では全例が死亡した (NTP TR84 (2018))。 (2) マウスに0.44~7.0 ppm (ガイダンス値換算: 0.002~0.03 mg/L、区分1の範囲) の濃度で14週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日間/週) した結果、0.44 ppm 以上で鼻腔の化膿性炎症、精子運動性の減少等、0.88 ppm以上でヘモグロビン、ヘマトクリット値の減少、鼻腔への影響等、1.75 ppm以上で赤血球数減少、喉頭の慢性活動性炎症等、3.5 ppm以上で死亡、異常呼吸、気管、肺の細気管支への影響、骨髄過形成 (骨髄芽球/赤芽球比の増加) 等がみられ、7.0 ppmで全例が死亡した。このうち血液系及び骨髄への影響については、呼吸器等の炎症に伴った変化であると考察されている (NTP TR84 (2018))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。