急性毒性
経口
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、4,729 mg/kg (SIDS (2012)、PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
GHS分類: 区分外 ウサギのLD50値として、> 2,000 mg/kg (SIDS (2012)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 区分外 ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、22,200 ppm、26,643 ppm (SIDS (2012)、PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分外とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (238,884 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分外 ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG 404及び OPPTS 870.2500 相当) で、4時間適用の場合に軽度の刺激性の報告 (SIDS (2012)) と刺激性はなしとの報告 (ECHA登録情報 (Access on December 2017)) がある。又、24時間適用試験において軽度の刺激性がみられたとの記載 (SIDS (2012))、適用時間は不明だが軽度の刺激性や適用部位において軽度の発赤や変色がみられたとする記載 (PATTY (6th, 2012)) がある。よって、本物質は軽度の刺激性を有すると考え、ガイダンスの軽度刺激性に該当する区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分2B ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405準拠) で、適用後に全ての動物に眼刺激性がみられたが7日以内に回復し、軽度の眼刺激性と考えられたとの記載 (ECHA登録情報 (Access on December 2017)) や、ウサギを用いた他の複数の試験において軽度の眼刺激性を示したとの記載 (SIDS (2012)、HSDB (Access on August 2017)) がある。よって、区分2Bとした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 区分1 モルモットを用いた皮膚感作性試験で、試験動物の全てが惹起後24又は48時間後に皮膚所見 (発赤、浮腫) のスコアが1~3を示し、感作性物質であったとの記載 (SIDS (2012)) や、マウスを用いたLLNA法による皮膚感作性試験 (OECD TG 429準拠) において感作濃度25、50、100%の場合にSI値が3を上回り、本物質は皮膚感作性を示したとの記載 (ECHA登録情報 (Access on December 2017)) がある。よって、区分1とした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない In vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いる小核試験で陰性 (SIDS (2012))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、陰性の結果、姉妹染色分体交換試験で陰性である (SIDS (2012)、HSDB (Access on August 2017))。以上より、ガイダンスに従い分類できないとした。
発がん性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物に明らかな一般毒性影響 (体重増加抑制、肝臓・腎臓・血液系などへの影響) がみられた高用量 (200 mg/kg/day) 群で、出生児に軽微な影響 (生後4日の体重低値) がみられた以外に生殖発生影響は認められなかった (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017)、SIDS (2012))。また、妊娠ラット又は妊娠マウスに最高200 ppmまで吸入ばく露 (6時間/日: 妊娠6~19日 (ラット)、妊娠6~16日 (マウス)) した発生毒性試験において、最高濃度においても母動物、胎児ともに本物質ばく露による影響はみられなかった (SIDS (2012))。 以上、経口経路によるラット生殖発生毒性スクリーニング試験、吸入経路によるラット及びマウスを用いた発生毒性試験において、いずれも生殖発生毒性は陰性の結果であった。しかしながら、経口投与試験はスクリーニング試験であること、また吸入経路による発生毒性試験は母動物に一般毒性影響が出現する濃度までばく露されておらず、陰性と結論するには用量が不十分であったと考えられることから、以上の試験結果のみでは区分外とはできず、分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分3 (気道刺激性、麻酔作用) 本物質のヒトでの単回ばく露の情報はない。実験動物では、ラットの4時間単回吸入ばく露試験において、区分2超の55.0 mg/L以上で流涙、努力呼吸、活動性低下、虚脱、運動失調が、82.6 mg/L以上で振戦が認められたとの報告がある (SIDS (2012)、PATTY (6th, 2012))。また、別のラットの4時間単回吸入ばく露試験で、区分2超の57.0 mg/L以上で、ばく露後約15分以内に、眼と鼻をこする動作、閉眼、くしゃみ、流涙などの粘膜刺激性を示す所見がみられ、更に呼吸促進、不穏、協調運動能阻害、よろめき歩行、筋力低下、チアノーゼ、鎮静、嗜眠が認められたとの報告がある (SIDS (2012)、SIDS Dossier (2012))。以上より、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 区分2 (血液系、肝臓) 実験動物について、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、区分1のガイダンス値の範囲内である10 mg/kg/day (90日換算: 4.7 mg/kg/day) 以上でα2uグロブリン腎症を示すと考えられる腎臓の近位尿細管の硝子滴沈着及び好塩基性尿細管、区分2のガイダンス値の範囲内である50 mg/kg/day (90日換算: 23.3 mg/kg/day) 以上で総コレステロールの増加、肝臓の小葉中心性肝細胞肥大、小葉周辺性脂肪変性等、200 mg/kg/day (90日換算: 93.3 mg/kg/day) で体重の低値、赤血球、ヘモグロビン及びヘマトクリットの低値、血小板数の高値、プロトロンビン時間及び活性化部分トロンボプラスチン時間の延長、アルブミン及びγ-GTの増加、脾臓のヘモジデリン沈着等がみられている (SIDS (2012))。また、ラットを用いた13週間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において、区分1のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である0.033mg/L (90日換算: 0.024 mg/L) 以上でα2uグロブリン腎症と思われる慢性腎症 (雄のみ)、区分2のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である0.36 mg/L (90日換算: 0.26 mg/L) 以上で腎臓の絶対及び相対重量増加 (雄のみ)、肺胞マクロファージ増加がみられている (SIDS (2012))。 以上、腎臓の変化は雄ラット特有の所見と考えられ、肺胞マクロファージの増加は異物に対する生理的反応であるため分類根拠としなかった。 したがって、区分2 (血液系、肝臓) とした。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。