急性毒性
経口
ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (EPA Guideline No. 870.1100準拠) (EPA Pesticide (2005)) 及び1,830 mg/kg (HSDB (Access on August 2017)) との報告があり、1件が区分外、1件が区分4に該当する。ガイドライン準拠試験であるEPA Pesticideの情報を採用して区分外とした。
経皮
ウサギのLD50値として、2,000 mg/kg (HSDB (Access on August 2017)) との報告に基づき、区分4とした。
吸入: ガス
GHSの定義における固体である。
吸入: 蒸気
GHSの定義における固体である。
吸入: 粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1とした。なお、新たな知見に基づき、本項目を見直したが、分類結果に変更はない。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n=3)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、半閉塞、4時間適用、7日観察)において、中等度の紅斑、痂皮、瘢痕組織、皮膚の肥厚、毛の再成長抑制、硬化した暗褐色/黒色のかさぶたがみられ、全層崩壊の兆候を示した(区分1に相当する結果)との報告がある(AICIS (2021)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。 (2)ウサギ(n=1)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、半閉塞、4時間適用、6日観察)において、1時間後及び24時間後に壊死がみられたとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
本物質の皮膚腐食性/刺激性が、区分1に分類されている。事故による本物質のヒトの眼へのばく露で、痛み、結膜炎、かすみ眼、急性炎症が生じたとの記載 (EPA Pesticide (2005)) がある。ウサギを用いた眼刺激性試験で、適用24時間後の評価値が最大10 (最大値10) との記載や、本物質は動物 (動物種不明) に対して眼刺激性を示すとの記載 (HSDB (Access on August 2017)) がある。よって、区分1とした。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)より、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2022年度)。
【根拠データ】 (1)モルモット(n=20)を用いたBuehler試験(OECD TG 406、GLP、局所投与:50%溶液)において、惹起終了24、48時間後の陽性率はともに50%(10/20例)であった(区分1Bに相当する結果)との報告がある(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。 (2)マウス(n=5)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は6.91(25%)、9.66(50%)、8.19(100%)であった(区分1に相当する結果)との報告がある(AICIS (2021)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。
生殖細胞変異原性
データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性との報告がある (NTP DB (Access on August 2017))。
発がん性
データ不足のため分類できない。
生殖毒性
妊娠ラットを用いた経口投与による発生毒性試験において、200 mg/kg/day以上で母動物に体重増加抑制、摂餌量減少など一般毒性影響、胎児には500 mg/kg/dayで体重の低値及び骨格異常 (肋骨の彎曲) がみられた (EPA Pesticide (2005)、HSDB (Access on August 2017))。また、本物質はエストロゲン作用を示すとの記述がある (EPA Pesticide (2005))。以上、本物質は母体の一般毒性用量で胎児の骨格に形態異常を示すこと、及び内分泌かく乱作用の性質を有することから、区分2とした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
ヒトでは、原典の情報がなく、ばく露回数等の詳細は不明であるが、本物質を含む最終使用製品の吸入ばく露の影響として、口・喉・鼻の刺激、咳・窒息感、息切れなどの刺激性関連の症状及びめまい、頭痛、かすみ眼などの神経学的影響が報告されている (EPA Pesticide (2005)、HSDB (Access on August 2017))。したがって、区分1 (神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
ヒトについては、事故のほとんどは刺激反応に関連しているが、めまい、頭痛、視力障害などの神経学的影響も報告されている (EPA Pesticde (2005)、HSDB (Access on August 2017))。 実験動物については、ラットを用いた13週間経皮投与試験 (6時間/日、5日/週) において、全身影響はみられず、局所影響として10 mg/kg/day以上で皮膚刺激性 (紅斑、落屑、痂皮形成)、表皮肥厚、急性あるいは慢性皮膚炎、表皮表面の炎症性滲出液、25 mg/kg/dayで潰瘍等の報告がある (HSDB (Access on August 2017))。 ヒトについて神経系への影響を検討したが、単回ばく露による影響と判断し、反復ばく露では採用しなかった。 以上、データ不足のため分類できないとした。
誤えん有害性*
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。