急性毒性
経口
GHS分類: 区分3
ラットのLD50値として、240 mg/kg (IPCS, PIM G022 (1998))、304.5 mg/kg (82.26%製剤、100%換算値: 250 mg/kg) (EPA Pesticide (2006)) との報告に基づき、区分3とした。
経皮
GHS分類: 区分3
ラットのLD50値として、930 mg/kg (82.26%製剤、100%換算値: 765 mg/kg) (EPA Pesticide (2006))、1,560 mg/kg (IPCS, PIM G022 (1998)) との報告があり、1件が区分3、1件が区分4に該当する。有害性の高い区分を採用し、区分3とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 区分2
ラットを用いた本物質のエアロゾルの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、0.053 mg/L (HSDB (Access on August 2017)) との報告に基づき、区分2とした。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分1
本物質が皮膚に対して腐食性又は強い刺激性を示すとの報告 (NICNAS IMAP (Access on September 2017)、IPCS, PIM G022 (1998)、EPA Pesticide (2006)) や、ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OPPTS 87.2500) で腐食性を示したとの報告 (EPA Pesticide (2006)) から、区分1とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分1
皮膚腐食性/刺激性が区分1に分類されている。また、ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405準拠、GLP適合) で、ウサギ3匹の結膜嚢に本物質の10%溶液を 0.1 mL適用した結果、全ての動物に角膜、虹彩、結膜への重度の障害が生じ、角膜 (角膜混濁、角膜の障害) と虹彩 (虹彩炎) は観察期間終了の21日目まで障害は持続し、結膜の発赤と浮腫は3匹中2匹が21日目まで障害が持続し、MMAS (刺激性スコア: AOIに相当) は108 (最大値110) であったとの報告 (ECETOC TR48(2) (1998)) がある。よって、区分1とした。
呼吸器感作性
GHS分類: 区分1
本物質の長期間のばく露により職業性喘息を発症したとの記載 (IPCS, PIM G022 (1998)) がある。よって、区分1とした。
皮膚感作性
GHS分類: 区分1
2人の医師が本物質を含む消毒液に浸した器具を扱うことにより感作され、本物質を含む目薬によりアレルギー性結膜炎を発症したとの報告 (IPCS, PIM G022 (1998)、NICNAS IMAP (Access on September 2017)) や、本物質を6%含む皮膚軟化剤の使用歴を有し、屈側型湿疹 (flexural eczema) を発症した6人の患者全てがパッチテストにより本物質に対するIV型アレルギーであったとの報告 (HSDB (Access on August 2017))、また本物質は感作性物質としてContact Dermatitis (Frosch) (5th, 2011) に掲載されていることから、区分1とした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、ヒト末梢血の小核試験で陽性である (HSDB (Access on August 2017))。なお、旧分類のin vivo変異原性試験の陰性結果は確認できなかった。
発がん性
GHS分類: 分類できない
EPAは本物質はラット及びマウスで発がん性を示さないと結論した (EPA Pesticide (2006))。また、8,5%ないし17%の本物質溶液をマウスに80週間、ウサギに90週間経皮適用 (0.2 mL) した結果、いずれの動物種も適用部位に潰瘍及び炎症が生じたが、腫瘍の発生はみられなかったとの報告がある (HSDB (Access on August 2017))。国際機関による既存分類結果はない。以上、実験動物を用いた経口及び経皮経路での試験結果はいずれも陰性であった。ただし、本物質は刺激性物質であるが、吸入経路での発がん性情報がないため、区分外とせず分類できないとした。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない
雌ラットに本物質25~200 mg/kg を単回膣内投与し、妊娠21日に屠殺した結果、母動物には100 mg/kg以上で体重増加抑制、及び膣炎、200 mg/kgで着床数の減少がみられ、胎児には50 mg/kg以上で用量依存的な生存児数の減少、100 mg/kg以上で胸骨の異常 (欠損、配列不整) 頻度の増加がみられた (HSDB (Access on August 2017))。しかし、このデータは投与経路が特殊で分類に利用するのは適切でないと考えられる。この他、利用可能なデータは得られず、データ不足のため分類できないとした。