急性毒性
経口
ラットに投与した試験(OECD TG423、GLP)において、300 mg/kgで6匹中死亡はなく、2000 mg/kgで3匹中3匹の死亡が認められ、概ねの致死量は500 mg/kg(厚労省報告 (Access on May, 2012))との報告により、区分4とした。なお、別に報告されたラットのLD50値 520 mg/kg(環境省リスク評価 第5巻 (2006))も区分4に相当している。GHS分類:区分4
経皮
ウサギのLD50値は3000 mg/kg、ラットのLD50値は600 mg/kg(いずれもRTECS (2006))は、ウサギでは区分外、ラットでは区分3に該当する。危険性の高いラットの区分を採用し、区分3とした。GHS分類:区分3
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。GHS分類:分類対象外
吸入:蒸気
データなし。GHS分類:分類できない
吸入:粉じん及びミスト
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚腐食性及び刺激性
ウサギ4匹に本物質の原液0.5 mLを4時間適用した試験(OECD TG 404、GLP)において、各動物ともパッチ除去後24、48および72時間における紅斑のスコア値は0.5~2、浮腫のスコア値は0~2.5の範囲にあり、皮膚一次刺激指数(PII)は2.54であった(ECETOC TR66 (1995))ことから、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3に相当)とした。GHS分類:区分外
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
データなし。GHS分類:分類できない
呼吸器感作性
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚感作性
ヒトにおける皮膚感作性試験や症例報告の中に、接触皮膚炎の患者で行ったパッチテストで本物質に対する陽性反応を示す報告があることから、本物質はヒトで感作性があると考えられる(SIAP (2011))と述べられているが、データの詳細が記載されていないため、データ不足で「分類できない」とした。 GHS分類:分類できない
生殖細胞変異原性
ラットに経口投与による骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)の陰性結果(厚労省報告 (Access on May 2012))に基づき区分外とした。なお、in vitro試験では、エームス試験で陰性(厚労省報告 (Access on May, 2012))、チャイニーズハムスターの培養細胞 (CHL/IU)を用いた染色体異常試験で陽性(厚労省報告 (Access on May, 2012 ))の報告がある。GHS分類:区分外
発がん性
データなし。GHS分類:分類できない
生殖毒性
ラットの経口投与による反復投与毒性および生殖発生毒性併合試験(用量:0、2.5、10、40、160 mg/kg/day)(OECD TG422、GLP)において、性周期、交尾、受胎、妊娠期間および分娩に及ぼす影響はいずれの群においても認められず、新生児に対しても哺育0日の生存児数、死産児数、性比、分娩率および出生率に投与の影響は認められなかったが、160 mg/kg投与群の母動物2例では哺育4日までに全児が死亡し、新生児の生存・発育に及ぼす影響が示唆され、さらに、160mg/kg投与群において哺育期間中の児の死亡が多い傾向にあり、哺育4日の新生児生存率は低い傾向にあった(厚労省報告 (Access on May, 2012))ことから、区分2とした。親動物への影響としては、40 mg/kg以上の投与群の雄で肝臓の少葉周辺性脂肪化の減少、雌で肝細胞内のグリコーゲン量の軽微な増加が観察されている。なお、妊娠11日目のラットに400 mg/kgを皮下投与し、胎仔の死亡、口唇裂及び多指等の奇形の増加がみられた(環境省リスク評価 第5巻 (2006))との報告もある。GHS分類:区分2
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ラットの経口投与による急性毒性試験(OECD TG423、GLP)において、300 mg/kgで一過性の軟便が見られたが、順調な体重増加を示し、14日間の観察期間終了時の剖検において, 内部諸器官の肉眼的変化は認められなかった。2000 mg/kgでは, 自発運動の低下、深大呼吸、下痢および下腹部の汚れが認められ、3匹中3匹が投与後24時間以内に死亡し、剖検では, 内部諸器官の肉眼的変化は認められず、概ねの致死量は500 mg/kgと報告されている(厚労省報告 (Access on May, 2012))。試験の用量範囲はガイダンス値区分2に相当するが、得られた所見から標的臓器の特定が困難なため区分2(全身毒性)とした。GHS分類:区分2(全身毒性)
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ラットの経口投与による反復投与毒性および生殖発生毒性併合試験(用量:0、2.5、10、40、160 mg/kg/day、90日換算:約1.25、5、20、80 mg/kg/day)(OECD TG422、GLP)において、雌で40 mg/kg群の1母体が妊娠22日の分娩途中で、また、160 mg/ kg群の1母体が妊娠22日に死亡したが、一般状態に変化はなく、病理組繊学的検査で死亡に直接関連すると考えられる共通した所見も認められず、その他の変化として、40 mg/kg以上の群において、雄で肝臓の少葉周辺性脂肪化の程度およびその出現頻度の減少、雌では160 mg/kg群において肝臓重量の高値、40 mg/kg以上の群において肝細胞内のグリコーゲン量の軽微な増加が観察された(厚労省報告 (Access on May, 2012))。以上の試験からは本物質投与に起因した重大な悪影響は見られなかったが、区分2のガイダンス値上限付近での用量による影響が不明であるためデータ不足で「分類できない」とした。なお、肝臓への影響は、肝細胞内に分布するグリコーゲン増加を反映するものと考えられたとの記載があり(厚労省報告 (Access on May, 2012))、軽微であると判断し、分類の根拠としなかった。GHS分類:分類できない
吸引性呼吸器有害性
データなし。GHS分類:分類できない