急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分4とした。なお、データの信頼性を考慮し、分類結果を変更した。旧分類とEUで急性毒性(経口)のGHS区分に差異があったため、急性毒性(経口)を見直した(2022年度)。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50:768 mg/kg(OECD TG 401 相当)(CLH Report (2021)、ECHA RAC Opinion(2021)、AICIS IMAP (2014)、SIAR (2003)) (2)ラットのLD50:300 mg/kg(CLH Report (2021)、ECHA RAC Opinion(2021)、ACGIH (2014)、AICIS IMAP (2014)) (3)ラットのLD50:750 mg/kg(厚労省 リスク評価書 (2016))
【参考データ等】 (4)ラットのLD50:277 mg/kg(詳細不明)(CLH Report (2021)、ECHA RAC Opinion(2021)、ACGIH (2014)、厚労省 リスク評価書 (2016)、MOE 初期評価 (2009)、AICIS IMAP (2014)、SIAR (2003)) (5)EU CLPでは区分4として分類されている。
経皮
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: 1.3 mL/kg (1,239 mg/kg) (ACGIH (7th, 2014)) (2) ウサギのLD50: 1,243 mg/kg (ACGIH (7th, 2014)、MOE初期評価第7巻 (2009)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2004)) (3) ウサギのLD50: 1,250 mg/kg (SIAR (2008)、NITE初期リスク評価書 (2008)、AICIS IMAP (2014)) (4) ラットのLD50: 1,300 mg/kg (ACGIH (7th, 2014))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 (1)~(7) より、区分3とした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (113,956 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): 1,000 ppm (ACGIH (7th, 2014)) (2) ラットのLC50 (4時間): 1,350 ppm (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2004)、厚労省リスク評価書 (2016)、ACGIH (7th, 2014)、MOE初期評価第7巻 (2009)) (3) ラットのLC50 (4時間): 1,600 ppm (厚労省リスク評価書 (2016)、MOE初期評価第7巻 (2009)) (4) ラットのLC50 (蒸気、4時間): 5.7 mg/L (1,618.8 ppm) (SIAR (2008)、AICIS IMAP (2014)) (5) ラットのLC50 (4時間): 6.5 mg/L (1,846 ppm) (SIAR (2008)) (6) ラットのLC50 (4時間): 750~1,810 ppm (NITE初期リスク評価書 (2008)) (7) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): < 3,000 mL/m3 (3,000 ppm) (MAK (DFG) (2019)) (8) 本物質の蒸気圧: 86.6 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 113,956 ppm)
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)より、区分1とした。なお、新たに情報収集し、本項目を見直したが、分類結果に変更はない(2022年度)。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG404相当、半閉塞、1時間又は4時間適用、7日観察)において、紅斑及び浮腫がみられ、7日後の観察において壊死(深層に至る壊死及び表層壊死)と明確な紅斑がみられた(1時間適用群の紅斑・痂皮スコア:2/2/2/2/2/3、浮腫スコア:2/3/3/2/2.3/2.3、4時間適用群の紅斑・痂皮スコア:2/2.7/2.7/2/3/2.3、浮腫スコア:2.3/3/3/1.3/2/2.3)との報告がある(厚労省 リスク評価書 (2016)、AICIS IMAP (2014)、SIAR (2003) 、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。
【参考データ等】 (2)本物質をコーン油に溶解した20%溶液を皮膚に塗布した実験では、30名中10名に刺激反応がみられた。との報告がある(産衛学会 許容濃度の勧告等 (2004)、厚労省 リスク評価書 (2016)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2009)、ACGIH (2014))。 (3)本物質原液を誤って左脚と長靴の中にかけた作業者は、8日後に左足首に発赤、痛み、水泡を生じた。最初の事故の17日後において、2度目のばく露があり、全身性接触皮膚炎と診断される症状を発症した。との報告がある(産衛学会 許容濃度の勧告等 (2004)、厚労省 リスク評価書 (2016)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2009))。 (4)ウサギ(n=2)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG404相当、閉塞、4時間適用、8日観察)において、24時間後に紅斑(紅斑スコア:3)、48時間後に表層壊死が2/2例に認められた。浮腫は24時間後に最も顕著(紅斑スコア:4)であり、8日後に軽減(紅斑スコア:2または3)した(24/48時間の平均スコア:紅斑3.5、浮腫3.5)との報告がある(AICIS IMAP (2014))。 (5)本物質は動物試験から、中等度(moderate)の刺激性を示す(ACGIH (2014))。 (6)EUではSkin Irrit. 2に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Oct. 2022))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)より、区分1とした。なお、新たに情報収集し、本項目を見直したが、分類結果に変更はない(2022年度)。
【根拠データ】 (1)皮膚腐食性/刺激性で区分1である。
【参考データ等】 (2)ウサギ(n=1)を用いた眼刺激性試験において、眼刺激性反応がみられ、眼刺激性指数(AOI)は66と算出されたとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2016)、AICIS IMAP (2014)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2003)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。 (3)工場労働者等13名を対象とした本物質の8週間ばく露における健康影響についての調査では、すべての参加者が弱から中程度の眼瞼炎と結膜炎を最初から最後まで示していたとの報告がある(産衛学会 許容濃度の勧告等 (2004)、厚労省 リスク評価書 (2016)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2009)、ACGIH (2014))。 (4)化学工場の労働者60名を対象とした疫学調査では、アクリル酸エステルなどの製造工場において本物質、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メチルメタクリル酸、アクリロニトリル、スチレン、ベンゼン及びトルエンにばく露されている労働者60名とばく露されていない労働者60名を8年間前向きに追跡した。ばく露群のでは眼と咽喉の刺激が40%にみられたが、対照群では20 %であった。との報告がある(産衛学会 許容濃度の勧告等 (2004)、厚労省 リスク評価書 (2016))。 (5)In vitro 眼刺激性試験(OECD TG 437、GLP)において、in vitro刺激性スコア(IVIS)は12.55であった。本物質は腐食性物質ではないと判断されたとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。 (6)EUではEye Irrit. 2に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Oct. 2022))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)より、区分1Aとした。なお、新たに情報収集し、本項目を見直したが、分類結果に変更はない(2022年度)。
【根拠データ】 (1)本物質は日本産衛学会では皮膚感作性第2群に分類されている(産衛学会 許容濃度の勧告等 (2021))。
【参考データ等】 (2)本物質をコーン油に溶解した20%溶液を皮膚に塗った実験では、22名中2名にアレルギー性の反応がみられたとの報告がある(産衛学会 許容濃度の勧告等 (2004)、厚労省 リスク評価書 (2016)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2009)、ACGIH (2014))。 (3)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は、0.8(1%)、0.8(2.5%)、1.3(5%)、1.6(10%)及び3.8(25%)であり、EC3値は19.6%と算出されたとの報告がある(AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。 (4)EUではSkin Sens. 1に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Oct. 2022))。 (5)DFGではShに分類されている(List of MAK and BAT values (2021))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、 区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) in vivoにおいて、マウスの経口および吸入による骨髄細胞を用いた2件の小核試験で陰性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、MOE初期評価第7巻 (2009)、SIDS Dossier (2008)、SIAR (2008))。なお、別系統のマウスを用いた腹腔内投与による骨髄細胞を用いた小核試験で陽性の報告もあるが、試験詳細が不明であり、小核の出現の増加と投与量に明確な用量依存性はなかった (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2008))。 (2) in vitroにおいて、細菌の復帰突然変異試験でほとんどが陰性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陰性、陽性の報告、染色体異常試験で陽性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、MOE初期評価第7巻 (2009)、SIDS Dossier (2008)、SIAR (2008))。
発がん性
【分類根拠】 ヒトでの発がん性に関する情報はない。既存分類は、(1) のとおり分類され、マウスでは発がん性が認められていないが、本物質は厚生労働省が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針の対象物質であり、ラットでは雌雄ともに鼻腔腫瘍が発生しており、IARCでも動物での発がん性の証拠は十分と評価している。以上のことから、有害性評価小検討会の審議を経てヒトにおける懸念から同省が指針を出したことを重視し、区分1Bとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 122 (2019))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2004年提案))、EPA (IRIS) でD (not classifiable as to human carcinogenicity) (IRIS (1990)) に分類されている。 (2) 本物質は労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための改正指針の対象物質である (令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号)。 (3) 雌雄のラットに本物質を104週間吸入ばく露した発がん性試験で、雌雄とも鼻腔に腫瘍の発生が認められ、雄では鼻腔に扁平上皮がんの発生率の有意な増加が認められた。雌では、鼻腔に扁平上皮がんの発生がみられ有意差は認められなかったが、この腫瘍は背景データにおいて発生のない極めて稀な腫瘍であった。この結果から、雄ラットに対するがん原性を示す証拠 (clear evidence of carcinogenic activity)、及び雌ラットに対するがん原性を示唆する証拠 (some evidence of carcinogenic activity) が得られたと結論された (厚労省委託がん原性試験結果 (2017)、IARC 122 (2019))。 (4) 雌雄のラットに本物質を24ヵ月間吸入ばく露した発がん性試験で、雄で軟部組織 (皮膚又は皮下組織) 肉腫及び悪性白血病腫瘍 (白血病、リンパ腫、リンパ肉腫) の有意な発生率の増加、雌で下垂体腺腫の有意な発生率の増加が認められた (IARC 122 (2019))。 (5) 雌雄のマウスに本物質を雄は94週間、雌は97週間吸入ばく露した発がん性試験では、雌雄とも腫瘍の発生増加はみられなかった (厚労省委託がん原性試験結果 (2017)、IARC 122 (2019))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(3) より、生殖毒性が認められていないことから、区分に該当しないとした。なお、新たな情報として、(1)、(3) が得られたことから旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた吸入経路による2世代生殖毒性試験 (OECD TG 416) において、親動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少、鼻部の病理組織学的傷害) がみられる用量においても生殖能に対する影響はみられていないが、児動物で体重増加抑制がみられている (MAK (DFG) (2019))。 (2) 雌ラットの妊娠6~20日に吸入ばく露した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少) のみられる用量で胎児体重の有意な低値がみられた。最高用量群の胎児1例に奇形がみられたが、本物質に起因したものではないと考えられており、胚/胎児の死亡、奇形の発生に影響はみられていない (厚労省リスク評価書 (2016)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2004)、MOE初期評価第7巻 (2009)、SIDS (2008)、MAK (DFG) (2019))。 (3) 雌ウサギの妊娠6~28日に吸入ばく露した発生毒性試験において、母動物毒性 (嗅上皮の変性と萎縮) がみられる用量においても発生影響はみられていない (MAK (DFG) (2019))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)~(4)より、区分3(気道刺激性)とした。なお、(5)で呼吸器にみられた影響は死戦期特有の症状であると考え、分類結果を変更した。旧分類とEUで特定標的臓器毒性(単回ばく露)のGHS区分に差異があったため、本項目を見直した(2022年)。
【根拠データ】 (1)本物質は動物とヒトの粘膜に高度の刺激性を示すとの報告がある(SIAR (2003)、AICIS IMAP (2014)、ACGIH (2014))。 (2)75 ppmにばく露したヒトで、鼻、眼、肺の刺激がみられたとの報告がある(ACGIH (2014))。 (3)ラットを用いた単回吸入ばく露試験(4時間、蒸気)において、眼と気道の強い刺激、及び呼吸困難(息切れ)がみられたとの報告がある(AICIS IMAP (2014)、SIAR (2003))。 (4)ラットを用いた単回吸入ばく露試験(4時間、蒸気)において、3.82~7.70 mg/L(区分1の範囲)で眼、鼻、呼吸気道への刺激がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2016)、ACGIH (2014))。
【参考データ等】 (5)ラットを用いた単回吸入ばく露試験(4時間、蒸気)において、10.8 mg/L(区2の範囲)で呼吸の減少、横隔膜呼吸、喘ぎ、呼吸音、赤くカサカサした目と鼻、唾液分泌、浅黒い皮膚、立毛、過興奮、振戦がみられ、最終的に死亡例(雄:5/5例、雌:2/5例)がみられたとの報告がある(DFG MAK(2019))。 (6)EU CLPでは、区分3(気道刺激性)として分類されている。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2) より、ヒトにおいて呼吸器への影響がみられるとの情報があり、実験動物においては (3)~(5) より、区分1の用量で呼吸器への影響がみられるとの情報があったことから、区分1 (呼吸器) とした。旧分類では腎臓も標的臓器としていたが、ヒトでの影響についての十分な証拠が得られなかった。情報の再検討の結果、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 化学繊維工場の労働者195人を対象に、本物質及びアクリル酸 (CAS番号 79-10-7) の平均ばく露濃度が21.3、1.0 mg/m3 のA群51人、4.7、5.2 mg/m3のB群62人、アクリル酸のみのばく露 (11.2 mg/m3) のC群22人、非ばく露の対照群60人について自覚症状を調べたところ、咳、息切れ、痰、咽頭痛は主に本物質にばく露されていたA群に限られた。また、咽頭部の充血、胸部レントゲンでの肺紋理の発生率もA群で有意に高かった (MOE初期評価第7巻 (2009))。 (2) アクリル酸エステル製造工場で実施された前向き疫学研究 (ばく露群60人、対照群60人、両群の平均年齢40才、本物質への平均ばく露期間13年) では、ばく露群の約40%に眼や喉の灼熱感、刺激性の咳や頭痛、吐き気やめまい、皮膚の違和感の訴えがあり、トリグリセライド、単球の増加がみられた (MOE初期評価第7巻 (2009))。 (3) 本物質のラットの90日間吸入ばく露試験では、242 ppm (0.852 mg/L相当 [90日換算0.568 mg/L]、区分2の範囲) 以上で眼、鼻の刺激及び呼吸困難、鼻腔の嗅上皮の萎縮と壊死、626 ppm (2.2 mg/L相当 [90日換算1.47 mg/L]、区分2超の範囲) で気管炎、肺の充血、気管支肺炎がみられた (MAK (DFG) (2019))。 (4) 本物質のラットの2年間吸入ばく露試験では、15 ppm (0.0528 mg/L相当、区分1の範囲) 以上で嗅上皮萎縮、45 ppm (0.158 mg/L相当、区分1の範囲) で鼻粘膜の基底細胞過形成がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、MOE初期評価第7巻 (2009)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2004))。 (5) 本物質のラットの104週間吸入ばく露試験では、40 ppm (0.141 mg/L相当、区分1の範囲) 以上で嗅上皮の萎縮や再生、基底細胞や呼吸上皮杯細胞の過形成及び呼吸上皮化生、160 ppm (0.563 mg/L相当、区分2の範囲) で鼻腔の扁平上皮や移行上皮の過形成、扁平上皮化生、移行上皮や嗅上皮の炎症、腺の変性、炎症性ポリープ、甲介の癒着及び鉱質沈着がみられた (厚労省委託がん原性試験結果 (2017))。
【参考データ等】 (6) 化学品製造工場における、10人の製造作業者、4人の間欠ばく露者、以前にごく少量のばく露があった1人のインダストリアルハイジニストを対象とした8週間以上にわたるケース・クロスオーバー研究では、肺機能検査の一つであるスパイロメトリー検査とメタコリン吸入試験において作業開始前、作業中及び作業後での変化はみられなかった。但し、事前の調査では、研究対象者の50%、製造に関わる全ての作業者の60%が研究開始時に気管支過敏反応を訴えていた (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2004)、MAK (DFG) (2019))。 (7) 本物質のラットの13週間飲水投与試験では、20 mg/kg (区分2の範囲) で尿細管の拡張、好酸性円柱の発生等の腎障害がみられた。しかし、試験に用いたラットの系統に通常発生する自然発生的な腎臓病変であり、投与による影響ではないと考察されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。