安全データシート

フルフラール

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: フルフラール
  • CB番号: CB9182277
  • CAS: 98-01-1
  • EINECS番号: 202-627-7
  • 同義語: フルフラール,フルフラ-ル

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 溶剤、フラン樹脂原料、潤滑油精製、医薬品原料
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性
引火性液体   区分3
健康に対する有害性
急性毒性(経口)   区分3
急性毒性(経皮)   区分3
急性毒性(吸入:蒸気)   区分2
皮膚腐食性/刺激性   区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2A
発がん性   区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (呼吸器、肝臓)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (呼吸器、肝臓)
分類実施日(環境有害性)
平成26年度、政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性 (急性)   区分3
水生環境有害性 (長期間)   区分3

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS02GHS06GHS08
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H226 引火性液体及び蒸気。
H301 飲み込むと有毒。
H312 皮膚に接触すると有害。
H315 皮膚刺激。
H319 強い眼刺激。
H330 吸入すると生命に危険。
H335 呼吸器への刺激のおそれ。
H351 発がんのおそれの疑い。
H401 水生生物に毒性。
H412 長期継続的影響によって水生生物に有害。
注意書き
安全対策
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P210 熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
P233 容器を密閉しておくこと。
P240 容器を接地しアースをとること。
P241 防爆型の【電気機器/換気装置/照明機器/機器】を使用すること。
P242 火花を発生させない工具を使用すること。
P243 静電気放電に対する措置を講ずること。
P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P284 換気が不十分な場合、呼吸用保護具を着用すること。
応急措置
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
P304 + P340 + P310 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 直ちに医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
P332 + P313 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
保管
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P403 + P235 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C5H4O2
  • 分子量: 96.08 g/mol
  • CAS番号: 98-01-1
  • EC番号: 202-627-7
  • 化審法官報公示番号: 5-40
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 医師に相談する。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ場合は水を飲ませる(多くても2杯)。ただちに医師の診察を受けること。1時間以内に治療が受けられないという例外的な状況のみ、嘔吐させ(相手に完全に意識のある場合のみ)、活性炭(10%懸濁液に20~40g)を投与してできるだけ早く医師の診察を受ける。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
可燃性。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
高温で空気と反応して爆発性混合物を生じる。
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

容器を危険ゾーンから移動させて水で冷やすこと。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 熱や発火源から遠ざける。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。 爆発のおそれ。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。 蒸気やエアロゾルが生じないようにすること。
火災及び爆発の予防
炎、熱および発火源から遠ざける。静電気放電に対する予防措置を講ずること。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 3: 可燃性液体
保管条件
容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。 一度開けた容器は注意深く再度密封し、漏れを避けるためまっすぐ立てておく。 アルゴン下で取扱う。容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。 熱や発火源から遠ざける。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。空気および湿気に反応する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
OEL-M: 2.5 ppm 9.8 - 日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告
TWA: 0.2 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ブチルゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Butoject® (KCL 898)
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: バイトン®
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 120 min
試験物質:Vitoject? (KCL 890 / Aldrich Z677698, Size M)
身体の保護
難燃静電気保護服。
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要 次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨し
ます。DIN EN 143、DIN 14387および使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。 爆発のおそれ。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
情報なし
臭い
アーモンド様の臭い (HSDB (2017))
臭いのしきい(閾)値
0.0240 mg/m3~20.0 mg/m3 (HSDB (2017))
pH
情報なし

融点・凝固点

-36.5℃ (ICSC (J) (2012))

沸点、初留点及び沸騰範囲

162℃ (ICSC (J) (2012))

引火点

60℃ (c.c.) (ICSC (J) (2012))

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

該当しない

燃焼又は爆発範囲

2.1 vol.%~19.3 vol.% (HSDB (2017))

蒸気圧

2.21 mmHg(25℃) [換算値 294 Pa(25℃)] (HSDB (2017))

蒸気密度

3.3 (ICSC (J) (2012))

比重(相対密度)

1.16 (ICSC (J) (2012))

溶解度

水:8.3 g/100 mL (20℃) (ICSC (J) (2012)) ベンゼン、クロロホルムに可溶; エタノール、アセトンに易溶; エチルエーテルと混和 (HSDB (2017))

n-オクタノール/水分配係数

0.41 (HSDB (2017))

自然発火温度

315℃ (ICSC (J) (2012))

分解温度

情報なし

粘度(粘性率)

1.587 mPa・s (25℃) (HSDB (2017))

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

蒸気/空気混合物は、強く温めると爆発性となる。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

次と激しく反応
アルカリ性水酸化物/水酸化アルカリ
塩基
強酸化剤
次との反応で爆発のおそれ
鉱酸

10.4 避けるべき条件

空気 湿気を避ける。 光。
加熱

10.5 混触危険物質

ゴム, 多様なプラスチック

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
GHS分類: 区分3 ラットのLD50値として、50~100 mg/kg (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989))、50~149 mg/kg (EU-RAR (2008))、125 mg/kg (DFGOT vol. 9 (1998))、122~158 mg/kg (CICAD 21 (2000)) との報告に基づき、区分3とした。
経皮
GHS分類: 区分3 ウサギのLD50値として、> 310 mg/kgとの報告がある (EU-RAR (2008))。また、ウサギの経皮ばく露試験で致死量が620 mg/kgであったとの報告及び500 mg/kgでは死亡例はなかったが、1,000 mg/kgでは全例が死亡したとの報告がある (いずれもEU-RAR (2008))。これらの情報からLD50値は310~1,000 mg/kgの範囲に存在すると考えられ、区分3に該当する。したがって区分3とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 区分2 ラットの1時間吸入ばく露試験のLC50値として、189 ppm (4時間換算値: 95 ppm) (CICAD 21 (2000)、DFGOT vol. 9 (1998))、1,037 ppm (4時間換算値: 519 ppm) (CICAD 21 (2000)、EU-RAR (2008))、4時間吸入ばく露試験のLC50値として、0.6 mg/L (153 ppm) (EU-RAR (2008))、235 ppm (CICAD 21 (2000)、DFGOT vol. 9 (1998)、EU-RAR (2008))、6時間吸入ばく露試験のLC50値として、175 ppm (4時間換算値: 214 ppm) (CICAD 21 (2000)、DFGOT vol. 9 (1998)、EU-RAR (2008)) との計5件の報告がある。うち1件が区分1、3件が区分2、1件が区分3に該当する。件数の多い区分を採用して、区分2とした。なお、ばく露濃度が、飽和蒸気圧濃度 (2,917 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとして、ppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

GHS分類: 区分2 ウサギを用いた2件の皮膚刺激性試験で、本物質500 mgを24時間適用した場合に刺激性ありとの記載及び本物質45~500 mg/kgを48時間適用した場合に軽度の刺激性との記載 (いずれもEU-RAR (2008)) や、ヒトの皮膚に対して刺激性を有するとの記載 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989)、IARC 63 (1995)、CICAD 21 (2000)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2, H315 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on August 2017))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

GHS分類: 区分2A ウサギを用いた眼刺激性試験で、0.09~1 mLの本物質の適用で角膜の混濁などの刺激性を認めたが9日後には回復したとの記述 (EU-RAR (2008))、本物質の10%水溶液の点眼で眼瞼と結膜に発赤と腫脹がみられたが、24時間後には回復したとの記載 (ACGIH (7th, 2001)) から、区分2Aとした。なお、EU CLP分類において本物質はEye Irrit. 2, H319 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on August 2017))。

呼吸器感作性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

GHS分類: 分類できない モルモットを用いた2件の皮膚感作性試験 (ビューラー法及びマキシマイゼーション試験、いずれもOECD TG 406準拠) で、いずれの試験においても感作性は認められず、本物質はこの試験法での皮膚感作性はないと結論づけている (EU-RAR (2008))。 ヒトにおいては、長期のばく露により皮膚の感作を生じるとの記載 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989)) がある。相反する情報があることから、分類できないとした。

生殖細胞変異原性

GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、トランスジェニックマウスの肝臓を用いた遺伝子突然変異試験、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、ラット及びマウスの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験でいずれも陰性である(EU-RAR (2008)、IARC 63 (1995)、DFGOT vol. 9 (1998)、JECFA FAS 46 (Access on September 2017)、NTP DB (Access on August 2017))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性の結果が多いが陽性結果もあり、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である(EU-RAR (2008)、IARC 63 (1995)、DFGOT vol. 9 (1998)、JECFA FAS 46 (2000)、NTP DB (Access on August 2017))。

発がん性

GHS分類: 区分2 ヒトでの発がんに関する情報はない。実験動物ではラット、マウスに2年間強制経口投与による発がん性試験において、ラットでは高用量 (60 mg/kg/day) で雄2/50例に胆管がんがみられ、背景データの発生率 (3/2,145 (0.1%)) より高く本物質投与による影響と判断された (NTP TR362 (1990)、IARC 63 (1995)、DFGOT vol. 9 (1998)、EU-RAR (2008))。マウスの試験では高用量 (175 mg/kg/day) で肝細胞腺腫、及び肝細胞がんの頻度増加が雄に、肝細胞腺腫の頻度増加が雌に認められ、同群の雌には加えて前胃乳頭腫の頻度増加がみられた (NTP TR362 (1990)、IARC 63 (1995)、DFGOT vol. 9 (1998)、EU-RAR (2008))。NTPでは発がん性は雄ラットである程度の証拠、雌ラットで証拠なし、雄マウスで明らかな証拠、雌マウスである程度の証拠と結論している (NTP TR362 (1990))。IARCはNTP以外の試験データも含めて、実験動物での発がん性の証拠は限定的としてグループ3に分類した (IARC 63 (1995))。これに対し、EUではCMRワーキンググループが本物質はカテゴリー3 (現行CLP分類ではCarc. 2に該当) に分類されると結論した (EU-RAR (2008))。また、ACGIHは本物質のNTP試験結果に加えて、本物質を主代謝物として産生するフルフリルアルコール (CAS番号 90-00-0) を用いた2年間吸入ばく露試験 (NTP TR482) において、雄ラットに鼻腔の腫瘍 (腺腫・がん・扁平上皮細胞がん) の増加がみられたことを根拠にA3に分類した (ACGIH (7th, 2017))。以上、IARCの分類より新しいEU及びACGIHの分類結果を採用し、本項は区分2とした。

生殖毒性

GHS分類: 分類できない 妊娠ラットに強制経口投与した発生毒性試験において、母動物では中用量 (100 mg/kg/day) で3/25例、高用量 (150 mg/kg/day) で16/25例の死亡が認められたが、胎児には150 mg/kg/dayでも胎児体重の低値がみられただけであった (EU-RAR (2008)、SIAP (2008))。この結果とNTPの2年間経口投与による発がん性試験で生殖器官への有害影響がみられていないことから、EUのCMRワーキンググループは本物質を生殖毒性物質として分類すべきでないと結論し (EU-RAR (2008))、SIAPにも同様に本物質は生殖毒性物質ではないと考えられるとの記述がある (SIAP (2008))。この他、ラットに最大300 mg/kg/dayを混餌投与した発生毒性試験で、母動物のLOAELである300 mg/kg/dayにおいても、胎児への影響は体重の低値のみであったとの記述がある (ACGIH (7th, 2017))。以上、発生毒性試験結果より本物質は重大な発生毒性を示さないと考えられるが、生殖能・性機能への影響を調べた試験成績がなく、データ不足のため分類できないとした。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

GHS分類: 区分1 (呼吸器、肝臓) ヒトでは本物質の単回吸入ばく露により、鼻と喉の刺激を生じるとの報告がある (DFGOT vol. 9 (1998)、CICAD 21 (2000)、ACGIH (7th, 2017)、EU-RAR (2008)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989))。実験動物では、ラットにおいて区分1相当の50 mg/kgの単回経口投与で肝臓に散在性の好酸性滴状物と分裂期肝細胞数の有意な増加が認められ、投与6時間後に最も顕著であったが、その後は減少し、肝臓の壊死も死亡例もなかったとの報告がある (DFGOT vol. 9 (1998)、EU-RAR (2008))。また、ラットの単回吸入ばく露試験で、0.37 mg/L、1時間のばく露で肺に中程度のうっ血と血管周囲の水腫が認められたとの報告がある (IARC 63 (1995)、CICAD 21 (2000)、ACGIH (7th, 2017))。この試験の用量の4時間換算値は0.185 mg/Lであり、区分1に該当する。以上より、区分1 (呼吸器、肝臓) とした。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

GHS分類: 区分1 (呼吸器、肝臓) ヒトについては、米国労働安全衛生研究所 (NIOSH) の調査で、グラファイト製造工場で本物質結合剤を使用した作業者に鼻出血、眼の灼熱感、鼻・喉の刺激、息切れ、胸の圧迫感、発疹、皮膚の灼熱感、日光過敏症がみられたと報告されている (高濃度で本物質に暴露された作業者の個人ばく露濃度は2~4.2 ppm)。また、本物質を含む樹脂を扱う別の工場の作業者では1.6~2.1 ppmの本物質にばく露され、頭痛、喉の刺激、眼の充血が報告されている (ACGIH (7th, 2017))。なお、換気の不適切なフルフラール工場の作業者に舌と口腔粘膜の知覚鈍麻、味覚の喪失、呼吸困難などの症状が認められたが、職場の環境濃度は不明であったとの報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989)、ACGIH (7th, 2001))。なお、この舌と口腔粘膜の知覚鈍麻、味覚の喪失等の報告についてはACGIH (7th, 2001) に記載があるが、その後に出されたACGIH (7th, 2017) には記載されていない。 実験動物については、ラットを用いた28日間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において、区分1のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である20 mg/m3 (90日換算: 0.004 mg/L) 以上で鼻腔の呼吸上皮の扁平上皮化生、過形成がみられている (EU-RAR (2008))。また、ラットを用いた13週間経口投与毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である11 mg/kg/day (90日換算: 7.9 mg/kg/day) 以上で小葉中心性肝細胞空胞化がみられている (EU-RAR (2008)、NTP TR382 (1990))。 以上、ヒトで皮膚、粘膜、呼吸器に対する刺激性の影響のほか、舌と口腔粘膜の知覚鈍麻、味覚の喪失、呼吸困難等がみられているがこれについては、他に神経系に対する影響がみられないことから神経系に対する影響というよりは刺激性によるものと考えられる。また、実験動物で呼吸器、肝臓への影響が区分1のガイダンス値の範囲内でみられたことから、区分1 (呼吸器、肝臓) とした。

吸引性呼吸器有害性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on August 2017) に収載された数値データ (粘性率: 1.587 mPa・s (25℃)、密度: 1.1594 g/cm3 (20℃)) より、動粘性率は1.37 mm2/sec (25/20℃) と算出される。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
LC50 - Pimephales promelas (ファットヘッドミノウ) - 16.79 - 26.35 mg/l -
96 h
備考: (ECOTOX データベース)
ミジンコ等の水生無脊
EC50- Daphnia magna (オオミジンコ) - 10 - 56 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
備考: (ECOTOX データベース)
微生物毒性
止水式試験 EC50 - 活性汚泥 - 760 mg/l - 30 min
(OECD 試験ガイドライン 209)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 14 d
結果: 100 % - 易分解性。
(OECD テスト ガイドライン 301C)

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1199    IMDG (海上規制): 1199    IATA-DGR (航空規制): 1199

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): FURALDEHYDES
IMDG (海上規制): FURALDEHYDES
IATA-DGR (航空規制): Furaldehydes

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1 (3)    IATA-DGR (航空規制): 6.1
(3) (3)

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

ゴム, 多様なプラスチック

15. 適用法令

労働安全衛生法

危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号) 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

消防法

第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)

港則法

その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)

大気汚染防止法

揮発性有機化合物 法第2条第4項 (平成14年度VOC排出に関する調査報告)

海洋汚染防止法

有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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