安全データシート

1,2,4-トリクロロベンゼン (1mg/mlメタノール溶液) [水質分析用]

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 1,2,4-トリクロロベンゼン (1mg/mlメタノール溶液) [水質分析用]
  • CB番号: CB8852926
  • CAS: 120-82-1
  • EINECS番号: 204-428-0
  • 同義語: トリクロロベンゼン,1,2,4-トリクロロベンゼン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 染料・顔料中間体,溶剤
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
H31.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
急性毒性(経口)   区分4
発がん性   区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分3(麻酔作用、気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分2(肝臓)
分類実施日(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性(急性)   区分1
水生環境有害性(長期間)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS07GHS09
注意喚起語
警告
危険有害性情報
H302 飲み込むと有害。
H315 皮膚刺激。
H410 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性。
注意書き
安全対策
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋を着用すること。
応急措置
P301 + P312 + P330 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。口をすすぐこと。
P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水で洗うこと。
P332 + P313 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
P391 漏出物を回収すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C6H3Cl3
  • 分子量: 181.45 g/mol
  • CAS番号: 120-82-1
  • EC番号: 204-428-0
  • 化審法官報公示番号: 3-74
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後はただちに水を飲ませること(多くても2杯) 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
塩化水素ガス
可燃性。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1C: 可燃性、急性毒性カテゴリー3 / 毒性化合物または慢性効果を引き起こす化合物
保管条件
密閉のこと。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
C: 5 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: バイトン®
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Vitoject? (KCL 890 / Aldrich Z677698, Size M)
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.4 mm
破過時間: 10 min
試験物質:Camatril? (KCL 730 / Aldrich Z677442, Size M)
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要 次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨し
ます。DIN EN 143、DIN 14387および使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
液体。17℃以下では無色ないし白色の結晶。
無色
臭い
除虫粉剤のようなにおい。
臭いのしきい(閾)値
情報なし
pH
情報なし

融点・凝固点

17 ℃(HODOC (1989)、ホンメル (1996)、Howard (1997)、ICSC (2003)、Merck (2006)、SAX'S (2000)、SRC、GESTIS (Accessed 2018))

沸点、初留点及び沸騰範囲

約213 ℃(HODOC (1989)、ホンメル (1996)、Howard (1997)、ICSC (2003)、Merck (2006)、SAX'S (2000)、SRC、GESTIS (Accessed 2018))

引火点

約110 ℃( (230°F))(ホンメル (1996)、GESTIS (Accessed 2018)、Merck (2006)、SAX'S (2000)、ICSC (2003))

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

情報なし

燃焼又は爆発範囲

2.5~6.6 Vol.%(ホンメル (1996)、GESTIS (Accessed 2018)、ICSC (2003))

蒸気圧

2.90×10-001 mm Hg(25 ℃)(Howard (1997)) 40 Pa(25 ℃)(ICSC (2003)) 0.46 mm Hg(25 ℃、実測値)(SRC)

蒸気密度

6.26(ホンメル (1996)、GESTIS (Accessed 2018)、SAX'S (2000)、ICSC (2003))

比重(相対密度)

約1.454(20℃/4℃、25℃/25℃)(HODOC (1989)、SAX'S (2000)) 約1.46(/4℃、25℃/25℃)(ホンメル (1996)、Merck (2006)) 1.5(ICSC (2003))

溶解度

水: 35 mg/L(25 ℃)(GESTIS (Accessed 2018)) 水: 34.6 mg/L 水: 49 mg/L(25 ℃、実測値)(Howard (1997)、SRC) その他の情報: Sparingly soluble in alcohol. Miscible with ether, benzene, petroleum ether, carbon disulfide.(Merck (2006))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 4.02(GESTIS (Accessed 2018)、Howard (1997)、SRC) 3.98(ICSC (2003))

自然発火温度

571 ℃(GESTIS (Accessed 2018)、ICSC (2003)) 645 ℃(ホンメル (1996))

分解温度

情報なし

粘度(粘性率)

情報なし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
引火点より下のおよそ15ケルビンからの範囲は危険とみなされている。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

次により発熱反応を生じる
酸化剤
アルカリ金属
アルカリ土類金属
次との反応で爆発のおそれ
火災を助長する物質

10.4 避けるべき条件

強力な熱

10.5 混触危険物質

強酸化剤

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 OECD TG401準拠である(1)~(3)のデータを優先して採用し、これらはいずれも区分4に該当する。よって区分4とした。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50:1,107 mg/kg(雄)(OECD TG 401)(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)) (2)ラットのLD50:1,019 mg/kg(雌)(OECD TG 401)(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)) (3)ラットのLD50:930 mg/kg(OECD TG 401)(SIAR(2003)、EU-RAR(2003))
【参考データ等】 (4)ラットのLD50:756 mg/kg(雌)(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)、ACGIH(7th, 2001)、Patty(2012))
経皮
【分類根拠】 ラットについて、OECD TG402準拠である(1)のデータを優先して採用し、区分外と判定できる。またウサギについて、(2)及び(3)のデータより、区分外と判定できる。よって、区分外とした。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50:11,356 mg/kg(OECD TG402)(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)、REACH登録情報(Accessed Oct. 2018)) (2)ウサギのLD50:約5,000 mg/kg(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)) (3)ウサギのLD50:>5,000 mg/kg(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)、REACH登録情報(Accessed Oct. 2018))
【参考データ等】 (4)ラットのLD50:6,139 mg/kg(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)、ACGIH(7th, 2001))
吸入:ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)及び(3)のデータより、区分4~区分外に該当と考えられる。また(2)のデータから、区分外と判断できる。よって、区分外とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度(2.5 mg/L)以上のため、(1)~(3)の試験はミストが混在するものとして、mg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1)ラットのLD0:3.1 mg/L(418 ppm)(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)) (2)ラットのLD0:13.6 mg/L(1,800 ppm)(7時間)(4時間換算値:17.7 mg/L)(SIAR(2003)、EU-RAR(2003)) (3)ラットのLD0:2.5 mg/L(330 ppm)(7.5時間)(4時間換算値:3.4 mg/L(452 ppm))(SIAR(2003)、EU-RAR(2003))

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)より、区分外とした。なお、(2)(3)のデータもあるが試験の詳細が不明である。(4)のデータはISCSを引用しており、List1の情報源の情報を優先した。
【根拠データ】 (1)ウサギを用いた皮膚刺激性試験(OECD TG404、n=6)において、本物質原体は14日間の観察期間に置いて紅斑スコア1、浮腫スコア1のわずかな刺激が見られたとの報告がある。(SIAR(2003)、REACH登録情報(Accessed Sept. 2018))。
【参考データ等】 (2)モルモットを用いた皮膚刺激性試験において、本物質は若い個体にはModerateの、高齢の個体にはSevereの刺激性を示したとの報告がある(SIAR(2003)、ATSDR(2014))。 (3)マウスでは紅斑が4/8で見られたとの報告がある(SIAR(2003))。 (4)本物質は皮膚に付くと皮膚の乾燥や発赤、肌荒れを生じるとの報告がある(環境省リスク評価書第8巻(2010))。 (5)反復ばく露によって、皮膚の炎症や脱脂が生じる明らかな証拠があると報告されている(SIAR(2003)、環境省リスク評価書第8巻(2010))。 (6)既存分類ではEUがSkin Irrit. 2に分類している。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)より、区分外とした。(2)のデータについて、米国と欧州のDraizeスコアの解釈が異なるとも記載されており、試験詳細が確認できないことから分類判断には用いなかった。(3)のデータはICSCを引用しており、List1の情報源の情報を優先した。
【根拠データ】 (1)ウサギを用いた眼刺激性試験(OECD TG405)で、角膜及び虹彩に影響は見られず、結膜では発赤スコア:1、浮腫スコア:0-2が得られたとの報告がある(SIAR(2003)、REACH登録情報(Accessed Sept. 2018))。
【参考データ等】 (2)ウサギを用いた眼刺激性試験で、Severeな結膜炎が生じ、48時間後も回復しなかったとの報告がある(SIAR(2003))。 (3)本物質は眼に入ると発赤、痛みを生じるとの報告がある(環境省リスク評価書第8巻(2010))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)、(2)のデータもあるが、データ不足のため分類できない。ヒト知見が得られていないことから、旧分類から区分を変更した。
【参考データ等】 (1)モルモットを用いたMaximization試験(OECD TG406、n=20)で、2/20で感作性が見られたとの報告がある(SIAR(2003)、REACH登録情報(Accessed Sept. 2018))。 (2)モルモットを用いた皮膚感作性試験で、陽性反応は見られなかったとの方向がある(SIAR(2003))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)、(2)より、ガイダンスに従い分類できないとした。
【根拠データ】 (1)In vivoでは、マウスを用いた経口投与によるin vivo小核試験(OECD TG 474, GLP)では陰性の結果であった(EU-RAR(2003))。 (2)In vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験で陰性(EU-RAR(2003)、ATSDR(2014))、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験で陰性であった(EU-RAR(2003)、環境省リスク評価第8巻(2010))。
【参考データ】 (3)マウスを用いたin vivo小核試験で腹腔内投与した2試験で僅かな陽性反応がみられた(EU-RAR(2003)、ATSDR(2014))。

発がん性

【分類根拠】 発がん性に関して、利用可能なヒトを対象とした報告はない。 (1)、(2)のデータから、雌雄マウスに悪性腫瘍の発生増加が認められたが、ラットでは雄のジンバル腺腫瘍の増加傾向のみで発がん性の証拠は限定的であった。(4)のEPAの分類結果は(3)の経皮試験結果のみを評価対象としたもので、古い分類結果ですでに利用できない。以上の結果より、本項は区分2が妥当と判断した。
【根拠データ】 (1)ラットの発がん性試験(2年間混餌投与:100~1,200 ppm (雄:5.5~67 mg/kg/day、雌:6.7~79 mg/kg/day)、50匹/性/群)では、雌に腫瘍発生の増加はみられなかったが、雄に有意ではないがジンバル腺腫瘍の増加傾向が示された(環境省リスク評価第8巻(2010)、EU-RAR(2003)、ATSDR(2014))。 (2)マウスの発がん性試験(2年間混餌投与:150~3,200 ppm(雄:21~522 mg/kg/day、雌:26~575 mg/kg/day)、50匹/性/群)では、中用量以降で肝細胞がんの有意な発生増加が認められた(環境省リスク評価第8巻(2010)、EU-RAR(2003)、ATSDR(2014))。 (3)マウスの皮膚に本物質の30%及び60%溶液を0.03 mL(9及び18 mg/匹)、2年間適用した発がん性試験において、高濃度群の雄2 匹で乳頭腫、雌1 匹で扁平上皮がんがみられた(環境省リスク評価第8巻(2010)、EU-RAR(2003))。 (4)国内外の分類機関による既存分類では、EPAがD(Not classifiable as to human carcinogenicity)に分類したが、1989年の分類結果で、(3)のマウス経皮適用試験結果のみを評価対象としたものであった(IRIS(1989)、ATSDR(2014))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1)のラット2世代試験では生殖発生毒性は検出されなかったが、最高用量で唯一みられた影響がF0、F1児動物の離乳時の副腎重量増加のみで、成熟後のF0、F1親動物には一般毒性影響も生殖影響もみられていないため、最高用量が確実中毒量に到達していなかったと考えられる。また、(2)、(3)の2件の発生毒性試験結果のうち、(3)のデータは母動物の死亡率が10%を超えており、分類に用いるのは不適切と考えられる。以上のことから、本物質の生殖発生影響を評価するには情報不足であり、データ不足のため分類できない。
【参考データ等】 (1)母ラットに飲水投与(25~400 ppm)し、生まれたF0児動物を離乳時まで母動物の乳汁を介して間接ばく露し、離乳後にF0に母動物と同用量を直接飲水投与し、約90日齢で交配させ、F1児動物の離乳まで投与した。F1児動物も同様に離乳後に同一用量の飲水投与を開始し、F0と同様に交配させた2世代生殖毒性試験では、F0及びF1児動物の高用量(400 ppm:53.6 mg/kg/day(F0雄)、33.0 mg/kg/day(F0雌))群の雌雄に離乳時に副腎重量の増加がみられたが、育成後のF0及びF1親動物の生殖能、及びF1、F2児動物への発生・発達影響は認められなかった(環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014))。 (2)妊娠6~15日のラットに強制経口投与した発生毒性試験では、母動物に150 mg/kg/day以上でヘモグロビン・ヘマトクリットの減少、肝臓への影響(門脈周囲肝細胞細胞質における好酸球増加、肝細胞の核の大小不同)、300 mg/kg/dayでは甲状腺の濾胞サイズの減少・空胞化など一般毒性がみられたが、胎児に有意な変化はみられなかった(環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014))。 (3)妊娠ラットの妊娠9~13日に強制経口投与して妊娠14日に帝王切開した発生毒性試験では、360 mg/kg/dayの投与群に重篤な母動物毒性(死亡(2/9例)、体重増加抑制、肝細胞肥大)を発現し、着床数減少、胎児死亡の増加、頭長・頭臀長の減少、体節数の減少がみられたが、吸収胚や奇形発生率の増加はなかった (環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014))。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

【分類根拠】 (1)から気道刺激性を、また(2)から動物で中枢抑制を示唆する嗜眠がみられ麻酔作用を支持するデータと考え、区分3(麻酔作用、気道刺激性)とした。
【根拠データ】 (1)ヒトでは眼や喉の刺激は3~5 ppmで生じると考えられるとの記述がある(環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014))。 (2)ラットに本物質(蒸気)を6時間吸入ばく露した試験で、区分1の範囲の70 ppm(ガイダンス値:0.64 mg/L)以上で嗜眠及び流涙がみられた(ATSDR(2014))。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

【分類根拠】 (1)~(5)のデータから、肝臓、腎臓、甲状腺、血液系が標的臓器の候補と考えられるが、(6)の本物質の標的臓器に対するATSDRの見解から、腎臓影響は雄ラット特有の機序による可能性が高く、また(1)のラット13週間投与でみられた甲状腺影響は、(3)、(4)の2年間の長期投与試験でみられていないことから、腎臓、甲状腺とも標的臓器から除外する。さらに、血液影響については、ATSDRが経口、経皮及び吸入経路による多くの試験の殆どで血液学的/血液生化学的検査で影響がみられていないことから、血液影響に関して懐疑的であり、また(1)~(4)の経口投与試験では区分2までの用量範囲内で明確な所見としてみられていないことから、標的臓器としない。以上より、区分2(肝臓)とした。なお、旧分類から標的臓器として腎臓、甲状腺、血液系を除外し、肝臓のみとした。なお(7)は、ばく露期間が長くなるにつれ、肝臓影響が弱くなっていることから、採用しなかった。
【根拠データ】 (1)ラットの13週間混餌投与試験で、区分2の範囲の1,000 ppm(雄/雌:82/101 mg/kg/day)で、肝臓への影響(重量増加、脂肪浸潤、肝細胞の空胞化・変性)及び甲状腺への影響(濾胞サイズの減少、濾胞上皮の高さの増加、コロイド密度の減少)がみられた(環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014)、EU-RAR(2003))。 (2)ラットの3ヵ月間混餌投与試験で、区分2の範囲の600 ppm(雄:32~96 mg/kg/day、雌:40~108 mg/kg/day)以上の群に腎臓への影響(相対重量増加(雌雄)、尿細管の拡張・顆粒状円柱・硝子滴・腎乳頭石灰化・間質性腎炎・再生尿細管(雄))、肝臓への影響(絶対・相対重量増加(雌)、小葉中心性肝細胞肥大(雄))、区分2上限~区分2超の1,800 ppm(雄:96~242 mg/kg/day 、雌:108~276 mg/kg/day)で血液影響(赤血球数の減少(雄)、ヘモグロビン・ヘマトクリットの減少(雌雄))がみられた (環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014)、EU-RAR(2003))。 (3)ラットの104週間混餌投与試験では、区分2の範囲の350~1,200 ppm で、肝臓影響に加え、腎臓影響(重量増加(雌雄)、慢性進行性腎症の悪化(雄)、腎乳頭石灰化(雌雄)、尿細管移行上皮細胞の過形成(雄))が雌雄に認められた(環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014)、EU-RAR(2003))。 (4)マウスの104週間混餌投与試験では、区分2超の700 ppm(100.5 mg/kg/day(雄))及び3,200 ppm(522(雄)/574(雌)mg/kg/day)で小葉中心性肝細胞肥大が認められたが、雌雄のいずれの群にも腎臓への影響はみられなかった(環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014)、EU-RAR(2003))。 (5)ウサギの本物質市販品(本物質70%、1,2,3-TCB 30%含有)の4週間経皮適用試験では、区分2の範囲の150及び450 mg/kg/day(90日換算:33.0及び98.9 mg/kg/day)で、雌に血液影響(赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリット値の減少)がみられた(EU-RAR(2003))。 (6)ATSDRは腎臓の組織所見は雄ラットに特異的なα2μ-グロブリン腎症に関連した影響の可能性を、また、ラット13週間投与試験でみられた甲状腺の所見については、ほぼ同レベルの用量を用いたラットの長期投与試験、及びマウスの試験でみられていないことを指摘している。また、(5)のウサギ経皮試験について、血液学的パラメーター変化がみられているが正常範囲内であり、経皮、吸入経路での試験報告からは血液影響はみられななかったと記述している(ATSDR(2014))。
【参考データ等】 (7)吸入経路では雄ラットの最長26週間吸入ばく露試験で、途中の13週間ばく露終了時に区分1の範囲の25 ppm(ガイダンス値換算:0.16 mg/L)以上で肝臓に肝細胞肥大、腎臓に硝子滴変性がみられたが、これらの変化は26週間ばく露終了時には明瞭にみられることはなく、比較的短期間の変化と考えられている(環境省リスク評価第6巻(2010)、ATSDR(2014)、EU-RAR(2003))。

吸引性呼吸器有害性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

データなし
ミジンコ等の水生無脊
EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 1.4 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(OECD 試験ガイドライン 202)
藻類に対する毒性
止水式試験 ErC50 - Pseudokirchneriella subcapitata (緑藻) - 1.4 mg/l - 96 h
(US-EPA)

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 2321    IMDG (海上規制): 2321    IATA-DGR (航空規制): 2321

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): TRICHLOROBENZENES, LIQUID
IMDG (海上規制): TRICHLOROBENZENES, LIQUID
IATA-DGR (航空規制): Trichlorobenzenes, liquid

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

強酸化剤

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物(法第57条、施行令第17条別表第3第1号並びに施行令第18条及び第18条の2別表第9)

労働基準法

疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

消防法

第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1)

大気汚染防止法

有害大気汚染物質(中央環境審議会第9次答申)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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