急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 7,758 mg/kg (EU EFSA (2012)) (2) ラットのLD50: 雌: 7,758 mg/kg、雄: 10,435 mg/kg (EU CLP CLH (2017)、農薬抄録 (2008)) (3) ラットのLD50: 雌: 7,760 mg/kg、雄: 10,400 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2014))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (EU CLP CLH (2017)、食安委 農薬評価書 (2014)、EU EFSA (2012)、農薬抄録 (2008))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): > 6 mg/L (EU CLP CLH (2017)、食安委 農薬評価書 (2014)、EU EFSA (2012)、農薬抄録 (2008))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質のOECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で、皮膚反応は認められず、皮膚刺激性なしと判定された (RAC Background Document (2017))。 (2) ウサギを用い皮膚刺激性試験で、刺激性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2014)、EU EFSA (2012)、農薬抄録 (2008))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質のOECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で、スコア1の結膜発赤が認められたが、適用72時間後までには全て消失した (RAC Background Document (2017))。 (2) ウサギを用いた眼刺激性試験で、刺激性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2014)、EU EFSA (2012)、農薬抄録 (2008))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2) より区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質のOECD TG 406に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 2%) で、皮膚反応はみられず、皮膚感作性は陰性と判定された (RAC Background Document (2017))。 (2) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 5%) で、皮膚感作性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2014)、EU EFSA (2012)、農薬抄録 (2008))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、経口投与したマウスの骨髄細胞を用いた小核試験において陰性の報告がある (RAC Background Document (2017)、食安委 農薬評価書 (2014))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験、遺伝子突然変異試験、不定期DNA合成試験において陰性の報告がある (同上)。
発がん性
【分類根拠】 (1)~(3) より区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPAでNL (Not Likely To Be Carcinogenic To Humans) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on November 2020):1998年分類) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験では、発がん性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2014))。 (3) 雌雄のマウスに本物質を18ヵ月間混餌投与した発がん性試験では、発がん性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2014))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(3) より、母動物毒性がみられる用量であるが、胎児に対する重篤な影響がみられていることから区分1Bとした。なお、新たな情報源に基づき旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性がみられない用量 (300 mg/kg/day) で胎児に仙・尾椎における化骨遅延が認められ、母動物毒性 (軟便、体重増加抑制、摂餌量減少) がみられる用量で (1,000 mg/kg/day) で、胎児に死亡率増加、胎児体重減少、椎体椎弓の奇形胎児合計 (5腹8胎児、4.9%) 増加、骨格奇形合計胎児数 (6腹14胎児)、骨格奇形出現率 (8.6%) 増加、椎体椎弓化骨遅延胎児数合計 (9腹20胎児、12.3%) 増加、骨格異常胎児数 (10腹22胎児) 及び出現率 (13.6%) 増加、骨格変異 (頸肋、腰肋 (14肋骨)、椎体分離及び椎体亜鈴型) 増加、化骨遅延 (後頭骨鱗部化骨胎児数及び胎児当たりの胸骨核数、中手骨数、中足骨数及び仙・尾椎数が減少) が認められた (食安委 農薬評価書 (2014))。 (2) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (脱毛及び尿による汚染、体重増加抑制並びに摂餌量及び食餌効率の減少) がみられる用量で (750 mg/kg/day) で、胎児に吸収増加、体重低下、側脳室の拡張等、骨格(胸椎、胸骨及び肋骨の異常及び化骨遅延)の変異を有する胎児数及び腹数増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2014))。 (3) 雌ウサギの妊娠6~19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制) がみられる用量 (150 mg/kg/day) で、初期胚死亡率高値傾向 (有意差なし) が認められた (食安委 農薬評価書 (2014))。
【参考データ等】 (4) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、親動物では3,600 ppmで体重増加抑制及び摂餌量減少が認められ、児動物では同用群で体重増加抑制が認められた。繁殖能に対する影響は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2014))。 (5) EU CLP分類ではRepr.1Bに分類されている (EU CLP分類 (Access on November 2020))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの急性ばく露影響に関する報告はない。実験動物では、(1)~(3) より、経口、経皮、吸入のいずれの経路の試験からも標的臓器を特定可能な所見は得られず、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットの単回経口投与ばく露試験において、4,000 mg/kg (区分2超) 以上で、ばく露後1時間で鎮静、尿による汚れ、円背位、軟便、運動失調、流涎、眼及び鼻周囲の赤色汚れ、脱毛がみられた (食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2008))。 (2) ラットの単回経皮適用試験において、2,000 mg/kg (区分2超) で症状及び死亡例はなかった (食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2008))。 (3) ラットの4時間吸入ばく露試験において、6.0 mg/L (区分2超) で運動性低下、努力呼吸、赤色及びピンク色の鼻汁、口周囲の濡れ、眼周囲の痂皮がみられたが、死亡例はなかった (食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2008))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (3) で区分2の範囲で雌に血液への影響がみられているが、片性のみの所見であり他の試験において区分2の範囲において血液への影響はみられていないことから、当該所見は分類根拠としないこととした。(1)~(6) より、経口及び経皮経路の反復投与毒性は区分に該当しないと考えられるが、吸入経路の情報が得られていないことから分類できないとした。
【参考データ等】 (1) ラットを用いた90日間混餌投与試験の結果、区分2の範囲では影響はみられず、6,400 ppm (雄/雌: 497/640 mg/kg/day、区分2超) の雌雄で体重増加抑制、食餌効率減少、腎尿細管上皮細胞色素沈着、雄で ALT 及びクレアチニン増加がみられた (食安委 農薬評価書 (2014)、EU CLP CLH (2017))。 (2) イヌを用いた90日間経口投与試験の結果、40 mg/kg/day (区分2の範囲) の雌で体重増加抑制が、160 mg/kg/day (区分2超) 以上の雌雄でアルブミン及びトリグリセリド減少、肝重量増加、雌で摂餌量減少、赤血球数、ヘマトクリット値及びヘモグロビン減少がみられた (同上)。 (3) イヌを用いた経口投与による1年間慢性毒性試験の結果、10.0 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上の雄で総コレステロール減少が、40.0 mg/kg/day (区分2の範囲) の雌雄で体重増加抑制、雌で赤血球数、ヘモグロビン及びヘマトクリット値の減少がみられた (同上)。 (4) ラットを用いた混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験の結果、2,500 ppm (雄/雌: 108/139 mg/kg/day、区分2超) の雄で体重増加抑制が、5,000 ppm (雌: 225 mg/kg/day、区分2超) の雌で体重増加抑制がみられた (同上)。 (5) ラットを用いた混餌投与による発がん性試験の結果、7,000 ppm (雄/雌: 972/1,210 mg/kg/day、区分2超) の雄で体重増加抑制がみられた (同上)。 (6) ラットを用いた21日間の経皮毒性試験で10~1,000 mg/kg/dayを経皮適用した結果、体重増加抑制のみがみられた (同上)。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性クラスの内容に変更はない。