急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットLD50:1,780 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)、NITE初期リスク評価書 (2007)) (2) ラットLD50:1,070 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第15巻 (2017))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50:1,440 mg/kg、1,445 mg/kg、1,680 μL/kg (1,444.8 mg/kg) (ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第15巻 (2017))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【参考データ等】 (1) ラットの室温飽和蒸気 (約130 ppm) 吸入ばく露試験 (8時間) (4時間換算値:260 ppm):死亡は認められなかった (NITE初期リスク評価書 (2007))。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) ウサギに1分、5分、20時間閉塞適用した試験で20時間後において壊死を認め、腐食性と判定されている (REACH登録情報 (Access on July 2019))。 (2) ウサギに0.01 mLを24時間適用した試験で腐食性ありと報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007))。 (3) 本物質はウサギの皮膚に適用した場合、24時間以内に壊死を引き起こす。また、点眼した場合には角膜壊死を生じる (ACGIH (7th, 2001))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) ウサギに50 μLを投与した眼刺激性試験で24/48/72時間の角膜、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の平均スコアは1.35、0.3、2.65、1.65であり、刺激性 (irritating) と判定されている (REACH登録情報 (Access on July 2019))。 (2) ウサギに50 μLを投与した眼刺激性試験で24/48/72時間の角膜、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の平均スコアは1、0.25、1.25、0.25であった。 刺激性 (irritating) と判定されている (REACH登録情報 (Access on July 2019))。
【参考データ等】 (3) ウサギに0.01 mLを投与した眼刺激性試験で角膜腐食性ありと報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、Smyth et al., (1954))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) よりin vitro染色体異常試験で陽性知見が認められたが、in vivo小核試験では陰性であったことから、専門家判断に基づき、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。JIS改正に伴い旧分類から変更となった。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陰性の報告がある (環境省リスク評価第15巻 (2017)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019))。 (2) in vitroでは、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験及び細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第15巻 (2017)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019)、NTP DB (Access on June 2019))。哺乳類培養細胞の染色体異常試験では陰性と陽性の報告がある (環境省リスク評価第15巻 (2017))。
発がん性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)、(2) より、生殖影響は認められていないが、発生毒性試験のデータがないことからデータ不足で分類できないとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた経口経路での簡易生殖毒性試験において、親動物に神経症状 (一過性流涎、不穏、自発運動低下、ケージ舐め、咀嚼様行動、振戦、間代性痙攣、強直性痙攣、発声)、死亡がみられたが、生殖能、児の発生に対する影響は認められていない (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019)、環境省リスク評価第15巻 (2017))。 (2) ラットに雄で交配前28日間、雌で交配前から授乳4日までの50日間吸入ばく露した生殖毒性試験において、親動物に鼻腔上皮の変性がみられているが、生殖影響はみられていない (環境省リスク評価第15巻 (2017))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2) より、本物質は経口経路で神経系に影響を示すと考えられる。影響がみられた最小用量の記載はないが、(3) のLD50値付近で影響がみられたとすると、区分2に相当する。また、(4) より、気道刺激性を示すと考えられる。したがって、区分2 (神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。なお、旧分類が根拠としたヒトでの情報は、出典がList 3の情報源であるICSCであり、詳細不明であることから使用しなかった。
【根拠データ】 (1) ラットにおいて、本物質の単回経口又は腹腔内投与により、痙攣と神経筋遮断を生じ、その結果として呼吸停止を生じるとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。 (2) 本物質は中程度のコリンエステラーゼ阻害剤であるとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。 (3) 本物質のラットにおける経口LD50値は1,070 mg/kg 又は1,780 mg/kgと報告されている (ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2007))。 (4) ラットに本物質蒸気を6時間/日、5日間吸入ばく露した試験で、33 ppm以上のばく露群で鼻への刺激 (鼻をこする動作) がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。反復ばく露試験であるが、鼻への刺激は初回ばく露からみられた可能性がある。ACGIH (7th, 2001) も同じ試験結果を引用し、本物質の鼻への刺激性の根拠としている。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2) より、ラットへの経口投与で区分2の範囲で行動異常、痙攣、振戦といった中枢神経系への影響を示す所見がみられ、(3) より、ラットへの吸入ばく露では区分1の範囲で呼吸器への影響がみられていることから、区分1 (呼吸器)、区分2 (中枢神経系) とした。新たな情報を追加して検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットに10~250 mg/kg/dayを雄は交配14日前から交配期間を含めて29日間、雌は分娩3日まで強制経口投与した結果、250 mg/kg/day (90日換算: 81 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で不穏、軽度の自発運動低下、ケージ舐め及び咀嚼様動作、間代性痙攣等、雌で振戦、強直性痙攣、連続した発声、死亡 (1例) がみられた (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019)、環境省リスク評価第15巻 (2017))。 (2) ラットに25~400 mg/kg/dayを28日間強制経口投与した結果、100 mg/kg/day (90日換算: 31 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で立ち上がり回数の増加が、400 mg/kg/day (90日換算: 122 mg/kg/day、区分2超) で死亡 (雄3例、雌5例)、痙攣、攣縮、振戦、異常発声、蒼白、喘ぎ呼吸、呼吸数減少、腹臥位姿勢、位置移動回数の増加等がみられた (同上)。 (3) ラットに20.6~236.3 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.006~ 0.02 mg/L、区分1の範囲) を雄は交配前から28日間、雌は授乳4日までの50日間吸入ばく露した結果、喉頭上皮の変性、鼻腔の移行上皮、呼吸上皮、嗅上皮の変性/再生、精巣、精巣上体の重量減少、精細管の変性等がみられた。このうち鼻腔の移行上皮、呼吸上皮の変性については毒性変化とされており、精巣への影響についてはストレスによるものと判断されている (環境省リスク評価第15巻 (2017))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。