安全データシート

酢酸ビニル (モノマー)

改訂日:2024-05-09版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 酢酸ビニル (モノマー)
  • CB番号: CB7852732
  • CAS: 108-05-4
  • EINECS番号: 203-545-4
  • 同義語: 酢酸ビニル,酢酸ビニルモノマー

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 酢酸ビニル樹脂・共重合樹脂原料、ポリビニルアルコール・ガムベース原料 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
R2.3.13、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1)) を使用
物理化学的危険性
自己反応性化学品   タイプG
引火性液体   区分2
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分2 (呼吸器)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分3 (気道刺激性) 区分3 (麻酔作用)
発がん性   区分1B
生殖細胞変異原性   区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2
皮膚腐食性/刺激性   区分2
急性毒性 (吸入: 蒸気)   区分4
分類実施日(環境有害性)
H21年度、政府向けGHS分類ガイダンス (H21.3版) (R1年度、分類実施中)
環境に対する有害性
水生環境有害性 (急性)   区分2

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS02GHS07GHS08
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H412 長期継続的影響によって水生生物に有害。
H351 発がんのおそれの疑い。
H335 呼吸器への刺激のおそれ。
H332 吸入すると有害。
H225 引火性の高い液体及び蒸気。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P261 ミスト/蒸気の吸入を避けること。
P243 静電気放電に対する措置を講ずること。
P242 火花を発生させない工具を使用すること。
P241 防爆型の【電気機器/換気装置/照明機器/機器】を使用すること。
P240 容器を接地しアースをとること。
P233 容器を密閉しておくこと。
P210 熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
応急措置
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
P304 + P340 + P312 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P235 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Acetoxyethylene
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C4H6O2
  • 分子量: 86.09 g/mol
  • CAS番号: 108-05-4
  • EC番号: 203-545-4
  • 化審法官報公示番号: 2-728
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 医師に相談する。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後はただちに水を飲ませること(多くても2杯) 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
二酸化炭素(CO2) 泡 粉末

5.2 特有の危険有害性

周囲温度で空気と反応して爆発性混合物を生じる。
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
逆火に注意する。
可燃性。
かなりの距離にわたり逆火が考えられる。, 火災時に容器爆発をおこす可能性がある。
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

容器を危険ゾーンから移動させて水で冷やすこと。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 熱や発火源から遠ざける。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。 爆発のおそれ。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。 蒸気やエアロゾルが生じないようにすること。
火災及び爆発の予防
炎、熱および発火源から遠ざける。静電気放電に対する予防措置を講ずること。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 3: 可燃性液体
保管条件
容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。 熱や発火源から遠ざける。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
ACL: 10 ppm - 作業環境評価基準、健康障害防止指
TWA: 10 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ブチルゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 240 min
試験物質:Butoject® (KCL 898)
身体の保護
難燃静電気保護服。
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要 次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨し
ます。DIN EN 143、DIN 14387および使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。 爆発のおそれ。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色 (ホンメル (1991))
臭い
甘ったるいにおい (ホンメル (1991))

融点/凝固点

-93.2℃ (HSDB (Access on October 2019))

沸点、初留点及び沸騰範囲

72℃ (NFPA (2010))

可燃性

可燃性液体 (ホンメル (1991))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

2.6~13.4 vol% (NFPA (2010))

引火点

-8℃ (c.c.) (NFPA (2010))

自然発火点

402℃ (NFPA (2010))

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

0.43 cPs (20℃) (HSDB (Access on November 2019))

溶解度

水:2 g/100 mL (20℃) (ICSC (2014)) 有機液体溶媒に可溶 (HSDB (Access on November 2019))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 0.73 (HSDB (Access on September 2019))

蒸気圧

90.2 mmHg (20℃) (HSDB (Access on November 2019))

密度及び/又は相対密度

0.93 (水=1) (ICSC (2014))

相対ガス密度

3.0 (空気 = 1) (ICSC (2014))

粒子特性

該当しない

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

蒸気は空気と爆発性混合物を形成することがある。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

禁止剤がなくなると不安定となる。

10.4 避けるべき条件

警告

10.5 混触危険物質

データなし

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 2,920 mg/kg (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)、PATTY (6th,2012)、HSDB (Access on September 2019)) (2) ラットのLD50: 3,470 mg/kg (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)、DFGOT vol.21 (2005)、EU-RAR (2008)) (3) ラットのLD50: 2,900 mg/kg (環境省リスク評価第2巻 (2003)) (4) ラットのLD50: 1,600 ~3,480 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))
経皮
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: 8.0 mL/kg (7,440 mg/kg) (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)、DFGOT vol.21 (2005)、EU-RAR (2008)) (2) ウサギのLD50: 2,335 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on September 2019)) (3) ウサギのLD50: 2.5 mL/kg (2,325 mg/kg) (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)) (4) ウサギのLD50: 2,335~7,470 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分4とした。 なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (118,693 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): 3,680 ppm (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)、PATTY (6th,2012)、HSDB (Access on September 2019)) (2) ラットのLC50 (4時間): 4,490 ppm (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)) (3) ラットのLC50 (4時間): 15.8 mg/L (4,487.3 ppm)、14.1 mg/L (4,004.5 ppm) (EU-RAR (2008)) (4) ラットのLC50 (4時間): 3,200~4,490 ppm (NITE初期リスク評価書 (2005)) (5) ラットのLC50 (4時間): 11,400 mg/m3 (3,237.7 ppm) (環境省リスク評価第2巻 (2003))
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)~(4) より、ヒトの事例を優先し、区分2とした。
【根拠データ】 (1) 作業者の事例では本物質へのばく露による刺激性がみられてお入り、長期のばく露では水疱を生じる (ATSDR (1992)、HSDB (Access on September 2019))。 (2) 本物質 (0.5 mL) をウサギの適用により軽度の浮腫が観察された (ATSDR (1992))。 (3) ウサギを用いた皮膚刺激性試験で軽度の刺激性が認められた (EU-RAR (2008)、NITE初期リスク評価書 (2005)、PATTY (6th, 2012))。 (4) 本物質は粘膜・皮膚を刺激し、高濃度では皮膚脱脂作用がある (環境省リスク評価第2巻 (2003))。
【参考データ等】 (5) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で24/48/72hの平均スコアは全て<0.67 であり、72時間後には全ての反応は消失した (REACH登録情報 (Access on October 2019))。 (6) ウサギに本物質 (適用量不明) を5~15分適用した皮膚刺激性試験で軽度の紅斑、20時間適用では1日後に軽度の紅斑と浮腫がみられている (DFGOT vol.21 (2005))。 (7) Draize法に従い、ウサギに本物質0.5 mLを24時間適用した皮膚刺激性試験で浮腫 (スコア4)、皮下出血が適用除去 4/24/72 hにみられている (DFGOT vol.21 (2005))。 (8) ウサギに本物質を 8 mL/kgを24時間 適用した実験では動物は 2日以内に死亡し、適用部位は壊死していた (DFGOT vol.21 (2005))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)~(5) より、ヒトの事例を優先し、区分2とした。
【根拠データ】 (1) 本物質はヒトにおいて21.6 ppmで眼と喉への刺激が報告されている (ACGIH (7th, 2018)、HSDB (Access on September 2019))。 (2) ウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の刺激性が認められた (EU-RAR (2008)、PATTY (6th, 2012))。 (3) 本物質は高濃度で結膜に刺激性を有する (DFGOT vol.5 (1993))。 (4) 気化した本物質及び直接のばく露は眼に刺激性を示す (ATSDR (1992))。 (5) 本物質 (1~2滴) をウサギの眼に適用した眼刺激性試験で角膜混濁、結膜発赤、重度の結膜浮腫が24時間後にみられたが、8日以内に回復した (DFGOT vol.21 (2005))。
【参考データ等】 (6) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で24/48/72hの角膜、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の平均スコアは結膜発赤のみ0.33であったが、他は全て0であった (REACH登録情報 (Access on October 2019))。 (7) 本物質 (0.5 mL) のウサギの眼への適用は重度の刺激性を示す (ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2005))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA) において、SI値は3未満であり、陰性と判定された (REACH登録情報 (Access on November 2019) 、ACGIH (7th, 2018)、EU-RAR (2008))。
【参考データ等】 (2) 本物質はモルモットの感作性試験 (ビューラー法) において中等度の感作性を示す (ACGIH (7th, 2018)、DFGOT vol.21 (2005)、(EU-RAR (2008))、NITE初期リスク評価書 (2005))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)、(2) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、腹腔内投与又は吸入ばく露による多くのマウス、ラットの骨髄及びマウス精原細胞の小核試験で陰性の報告があるが、腹腔内投与のラット骨髄小核試験は証拠の重み付けにより、総合的に陽性と評価される。また、ラット骨髄の染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験では陽性の報告がある (ATSDR (1992)、DFGOT vol.5 (1993)、IARC 63 (1995)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.21 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2008))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験及びマウスリンフォーマ試験で陽性の報告がある (ATSDR (1992)、DFGOT vol.5 (1993)、IARC 63 (1995)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.21 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2008)、PATTY (6th, 2012))。
【参考データ等】 (3) EU-RAR (2008) では、in vivo試験の結果について、大部分が信頼性が低い試験であり、最も重要なマウス骨髄小核試験の陽性結果は高毒性の腹腔内投与の場合に限定されていることから、本物質の遺伝毒性がヒト生殖細胞で発現することは考えにくいと結論づけられている (EU-RAR (2008))。 (4) NITE初期リスク評価書 (2005) では、in vivo、in vitroの試験結果より、本物質は遺伝毒性を有すると判断されている (NITE有害性評価書 (2005))。

発がん性

【分類根拠】 ヒトでの発がん性の情報は、(6) に限られている。 適切な試験ガイドラインとGLP基準に準拠して実施された (1) 及び (2) において、動物種2種に悪性腫瘍を含む明らかな発がん性の証拠が認められたことから、区分1Bとした。 既存分類は、(4) のとおり分類されているものの、適切な試験ガイドラインとGLP基準に準拠して実施された厚労省のがん原性試験 (1) 及び (2) において、動物種2種に悪性腫瘍を含む明らかな発がん性の証拠が認められ、有害性評価小検討会の審議を経てヒトにおける懸念から同省が指針を出したことを重視した。
【根拠データ】 (1) ラットを用いたがん原性試験 (2年間飲水投与) で、雄投与群に口腔の扁平上皮がんと扁平上皮乳頭腫、雌投与群に口腔と食道の扁平上皮がんの発生増加がみられた (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on September 2019))。 (2) マウスを用いたがん原性試験 (2年間飲水投与) で、雌雄の投与群に口腔と胃の扁平上皮がん、扁平上皮乳頭腫、食道と喉頭の扁平上皮がんの発生増加が認められた (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on September 2019))。 (3) ラットに2年間吸入ばく露した試験で、鼻腔の扁平上皮がん、扁平上皮乳頭腫、上皮内がんの発生が認められた (IARC 63 (1995)、EU-RAR (2008)、ACGIH (7th, 2018)、厚労省初期リスク評価書 (2010)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、NITE初期リスク評価書 (2005))。 (4) 国内外の分類機関による既存分類としては、IARCがグループ2B (IARC 65 (1995))、EU CLPでCarc. 2、日本産業衛生学会が2B (1998年提案)、ACGIHがA3 (ACGIH (7th, 2018)) にそれぞれ分類している。なお、IARCの評価には (1) 及び (2) の結果は含まれていない。
(5) 本物質は労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための改正指針の対象物質である (平成24年10月10日付け健康障害を防止するための指針公示第23号)。
【参考データ等】 (6) ヒトの発がん性に関して、本物質を含む19種類の物質に1942~1973年にばく露された男性作業者のコホート調査で未分化大細胞肺がんが本物質への累積ばく露がわずかに高いことに関連するという報告 (IARC 63 (1995)、EU-RAR (2008)、ACGIH (7th, 2018))、2化学品製造施設の従業員の非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、リンパ性・非リンパ性白血病による1940~1978年の死亡と本物質ばく露との関連性を示唆した米国のコホート内症例対照研究の報告がある (IARC 63 (1995)、EU-RAR (2008)、ACGIH (7th, 2018)、環境省リスク評価第2巻 (2003))。 (7) マウスの雌雄とそのF1に78週間飲水経口投与した継代試験で、食道、前胃に上皮性悪性腫瘍の増加がみられた (ACGIH (7th, 2018))。 (8) 3系統の雌雄ラットとそのF1に104週間飲水経口投与した継代試験で、F1に口腔、食道、前胃などのがんが増加した。F344ラットは死亡が多くばく露期間は100週までだが、新生物の増加がみられた (ACGIH (7th, 2018))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1)~(3) より、生殖毒性について評価書での評価に差がみられるが総合的に判断して分類できないとした。データを見直したことから旧分類から分類結果が変更となった。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた飲水投与による2世代生殖毒性試験において、親動物に嗜好性による飲水量の低下とそれに起因した体重増加抑制がみられる用量で、わずかな妊娠率低下と児動物の体重増加抑制がみられている。なお、妊娠率の低下は交叉交配の結果、雄動物の生殖能に関係し、受胎の障害ではなく雄動物の交尾能が劣っていることが原因と考えられるが、精巣の病理組織学的検査では正常であることが報告されている (EU-RAR (2008))。なお、ATSDR (1992) では、同じ試験と思われる試験結果について、妊娠率低下は有意差がなく背景データの範囲内であるとしている。また、児動物の体重増加抑制は母動物の成長遅延に起因した可能性があり、胎児に対する直接的な毒性影響ではない可能性が高いとしている。 (2) 雌ラットの妊娠6~15日に飲水投与した発生毒性試験において、影響はみられていない (EU-RAR (2008))。 (3) 雌ラットの妊娠6~15日に吸入ばく露した発生毒性試験において、1,000 ppmで母動物に体重増加抑制がみられ、胎児に体重減少、頭臀長短縮、骨化遅延がみられている (EU-RAR (2008))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 (1)、(2) より、区分3 (麻酔作用、気道刺激性) とした。
【根拠データ】 (1) ボランティアによる試験で、本物質72 ppm、30分の吸入ばく露で4人の被験者全員が喉粘膜の刺激を訴えたとの報告がある (ATSDR (1992)、ACGIH (7th, 2018))。 (2) 本物質は粘膜・皮膚を刺激し、高濃度では皮膚脱脂、麻酔作用があるとの記載がある (環境省リスク評価第2巻 (2003))。
【参考データ等】 (3) ラットの単回経口投与試験において、LD50値は約3,500 mg/kg (区分2超) であり、局所刺激と中枢神経系障害の症状 (下痢、息切れ、振戦、無反応 (apathy)) がみられたとの報告がある (EU-RAR (2008)、GESTIS (Access on September 2019))。 (4) ウサギに本物質7~142 ppm を40分間、単回吸入ばく露した試験で、71 ppm 群に中枢神経系の抑制、142 ppm 群に中枢神経系の亢進がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、ACGIH (7th, 2018))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)、(2) より、実験動物への吸入ばく露において区分2の用量で呼吸器への影響がみられていることから、区分2 (呼吸器) とした。 (1) マウスを用いた2年間の吸入毒性試験の結果、200 ppm以上 (ガイダンス値換算: 0.7 mg/L、区分2の範囲) で鼻腔の嗅上皮の萎縮、粘液分泌腺の萎縮、600 ppm (ガイダンス値換算: 2.1 mg/L、区分2超) で気管支上皮の剥離又は扁平化、肺に色素貪食マクロファージの集簇等がみられた (ACGIH (7th, 2018)、EU-RAR (2008)、NITE初期リスク評価書 (2005))。 (2) ラットを用いた2年間の吸入毒性試験の結果、200 ppm以上 (ガイダンス値換算: 0.7 mg/L、区分2の範囲) で鼻腔嗅上皮の扁平上皮化生と萎縮、基底細胞の過形成、600 ppm (ガイダンス値換算: 2.1 mg/L、区分2超) で気管支上皮の剥離又は扁平化、肺に色素貪食マクロファージの集簇等がみられた (同上)。
【参考データ等】 (3) 本物質にばく露された工場作業者で、進行性心筋症、不整脈、心電図の振幅の減少、心筋ジストロフィー、失神、胸痛、死にそうな感覚 (sensation of dying) がみられた (PATTY (6th, 2012)) との報告があるが、この報告については、複数の物質への職業ばく露であり、酢酸ビニルの濃度の記載がない情報とされている (Acute exposure guideline levels for selected airborne chemicals, vol 14 (National Research Council, 2013)。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

ミジンコ等の水生無脊
止水式試験 EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 12.6 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(OECD 試験ガイドライン 202)
藻類に対する毒性
ErC50 - Pseudokirchneriella subcapitata - 12.7 mg/l - 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)
魚毒性(慢性毒性)
流水式試験 最大無影響濃度 - Pimephales promelas (ファットヘッドミノウ) -
0.55 mg/l - 34 d
(OECD 試験ガイドライン 210)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 14 d
結果: 82 - 98 % - 易分解性。
(OECD テスト ガイドライン 301C)

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

環境への放出は必ず避けなければならない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1301    IMDG (海上規制): 1301    IATA-DGR (航空規制): 1301

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Vinyl acetate, stabilized
IMDG (海上規制): VINYL ACETATE, STABILIZED
ADR/RID (陸上規制): VINYL ACETATE, STABILIZED

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 3    IMDG (海上規制): 3    IATA-DGR (航空規制): 3

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

非該当
ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

15. 適用法令

労働安全衛生法

危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)【4の2 その他の引火点-30℃以上0℃未満のもの】 健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項・厚労省指針公示)【酢酸ビニル】 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【180 酢酸ビニル】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【180 酢酸ビニル】 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【134 酢酸ビニル】

毒物及び劇物取締法

該当しない

化学物質審査規制法

旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号1040 酢酸ビニル(平成23年4月1日をもって廃止)】 優先評価化学物質(法第2条第5項)【28 酢酸ビニル】

消防法

第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)【2 第一石油類非水溶性液体】

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【5 第一石油類非水溶性液体】

航空法

引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】1301 酢酸ビニル(安定化されたもの)】

船舶安全法

引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】1301 酢酸ビニル(安定剤入りのもの)】

港則法

その他の危険物・引火性液体類(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2ロ 酢酸ビニル(安定剤入りのもの)】

海洋汚染防止法

危険物(施行令別表第1の4)【11 酢酸ビニル】 有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)【155 酢酸ビニル】

大気汚染防止法

揮発性有機化合物(法第2条第4項)(環境省から都道府県への通達)【揮発性有機化合物】 有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【61 酢酸ビニル】

化審法

優先評価化学物質

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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