急性毒性
経口
ラットのLD50として得られたデータ(>10000 mg/kg (雄)、 >8532 mg/kg (雌) および>13700mg/kg b.w.(雄)) (SIDS(access on June 2008))に基づいて区分外とした。
経皮
ウサギのLD50(> 5000 mg/kg )(SIDS, access on June 2008) に基づき区分外とした。
吸入
吸入(ガス): GHSの定義における液体である。
吸入(蒸気): ラットの急性毒性値(ばく露4時間換算値)は LC0 > 31.01 mg/L (5737 ppm) (SIDS(access on June 2008)), LC0 > 9.342 mg/L (1728 ppm)(DFGOT 5(1993)), LD50 > 19.82 mg/L (3667 ppm) (SIDS(access on June 2008))であり、いずれも飽和蒸気圧濃度の90%より低い。したがって、気体の基準値を適用したが、区分を特定できないので分類できない。
吸入(ミスト): データなし
皮膚腐食性・刺激性
ウサギを用いた試験において皮膚一次刺激指数0.0で刺激性なし(not irritating)の結果(SIDS (access on June 2008))が得られ、また、軽度(slight)、あるいは刺激性あり(cutaneous irritation)との報告(DFGOT(1993)、PATTY (5th, 2001))もあるが、それ以上の具体的な記述がない。JISの分類基準により区分外とした(国連GHS分類では区分3に相当)。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギ9匹を用いた試験で眼に適用後に認められた結膜発赤、結膜浮腫、虹彩炎および角膜混濁の平均スコアはそれぞれ0.8, 0.5, 0.1, 0.2であったが、4日後には全て消失し、軽度の刺激性(slightly irritating)と評価され(SIDS(2000))、最終的に本物質は軽度~中等度の刺激性と評価された(slightly to moderately irritating)(SIDS(2003))結果に基づく。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
呼吸器感作性:データなし
皮膚感作性:モルモットを用いた複数の試験(Magnusson-Kligman maximization testまたはmethod of Maguire)において、いずれも刺激性なし"not sensitizing"の結果 (SIDS(access on June 2008))、DFGOT vol. 5 (1993) に基づき区分外とした。
生殖細胞変異原性
in vitro変異原性試験(Ames試験および染色体異常試験)で陰性結果(厚生省報告 (access on June 2008))が得られているが、in vivoの試験データがなく分類できない。
発がん性
データなし
生殖毒性
ラットを用いた反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験において、親動物で雌雄とも高用量群で有意な体重増加抑制を認めたが、親動物の性機能、生殖能および児動物の発生に関する各指標に対照群と比べ有意な変化は認められなかった(厚生省報告 (access on June 2008))。また、妊娠ラットの器官形成期に経口投与した試験では催奇形性を含め児の発生に及ぼす影響は観察されなかった(SIDS(access on June 2008))。以上の結果から、性機能および生殖能に対する悪影響、および催奇形性を含む児の発生に及ぼす悪影響のいずれも認められていないので区分外とした。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ラットに経口投与により500~10000 mg/kgの全用量でし眠が観察され(SIDS(access on June 2008))、ウサギに経皮投与した場合にも、主な症状として麻酔作用が記述されている(DFGOT vol. 5 (1993))。また、2週間の吸入ばく露試験ではあるが、急性的な変化としてマウスの鼻腔の嗅上皮の変性が1.62 mg/L以上の濃度で発生し、ばく露濃度の上昇とともに病変が重度かつ広範になり、一部の動物の内腔には炎症性分泌物が現れたとある(SIDS(accesss on June 2008))ことに基づき区分3(麻酔作用、気道刺激性)とした。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットを用いた反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験において、1000 mg/kg/dayで体重増加抑制と摂餌量の減少傾向を示したが、300 mg/kg/day以下ではばく露の影響を認めずNOAELは雌雄とも300 mg/kg/day(90日補正用量:約150 mg/kg/day)であり重大な毒性影響は示されていない(厚生省報告 (access on June 2008))。一方、2週間の吸入ばく露試験では、5.39 mg/L(90日補正用量:0.83 mg/L)以上で主にラット雄の腎臓の近位曲尿細管に好酸性顆粒の軽度増加が見られた。また、鼻腔の嗅上皮の変性がラットでは16.18 mg/Lで認められたのみであったが、マウスでは1.62 mg/L(90日補正用量:0.25 mg/L)以上の濃度で発生し、ばく露濃度の上昇とともに病変が重度かつ広範になり、一部の動物の内腔には炎症性分泌物が現れた(SIDS(accesss on June 2008))とあるが、回復性とも受け取られるため。毒性学的意義も不明なため分類対象としないが、ラットおよびマウスで見られた鼻腔の組織学的変化は、特にマウスではガイダンス値範囲区分2に相当する濃度で発現しているものの詳細が不明であることから分類できないとした。
吸引性呼吸器有害性
データなし