急性毒性
経口
GHS分類: 区分4 ラットのLD50値として、1,600 mg/kg、2.14 mL/kg (比重0.9734を用いて換算したLD50値2,083 mg/kg)、2,700 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) の3件の報告がある。有害性の高い区分を採用し、区分4とした。
経皮
GHS分類: 区分外 モルモットのLD50値6.6 mL/kg (PATTY (6th, 2012)) に基づき、比重0.9734を用いて換算したLD50値6,424 mg/kg から、区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 分類できない モルモットの背部に反復して開放適用した結果、刺激性は認められなかったとの記述はあるが (PATTY (6th, 2012))、適用量やばく露時間などの条件が不詳のため、本試験の結果のみでは区分外と判断するには不十分であり、分類できないとした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分2A ウサギの眼に対して中等度から重度の刺激性が認められたことから (PATTY (6th, 2012))、区分2Aとした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性である (PATTY (6th, 2012))。
発がん性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、雄ラットに6週間、10,000 ppm で飲水投与した結果、精巣に無精子症を生じたとの記述がある (PATTY (6th, 2012))。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分3 (気道刺激性) 本物質のヒトでの単回ばく露のデータはない。実験動物では、モルモットを用いた単回吸入ばく露試験で、本物質が鼻に軽微な刺激作用を示すとの記載がある (PATTY (6th, 2012))。したがって区分3 (気道刺激性)とした。なお、投与経路の記載がないが、本物質の単回投与で、ラットでは胸腺の重量が減少し、脾臓の重量が増加、マウスでは胸腺の重量が増加し、脾臓の重量が減少するという、動物種によって異なる結果が報告されている (PATTY (6th, 2012))。またマウスでは同じ単回投与試験において、遅延型過敏反応と貪食細胞活性が抑制されることが報告されている (PATTY (6th, 2012))。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 区分1 (神経系)、区分2 (視覚器) ヒトについての情報はない。 実験動物については、ラット、ネコ、サル、イヌ等で神経軸索の腫脹を特徴とする神経毒性あるいは視覚器毒性の報告がある (PATTY (6th, 2012))。影響はその試験の最低用量あるいは単一用量でみられているものの、試験の多くは区分2を超える用量で試験が実施されていることから分類根拠とできなかった。唯一、サルを用いた経口経路での15~17週間反復投与毒性試験において区分2相当の73 mg/kg/day (単一用量) で視力の消失はないものの視覚のコントラスト感度の消失がみられ、病理組織学的検査では本物質の特徴的な腫脹した視神経軸索がみられ、この状態には回復性があり5ヵ月で回復したとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。
本物質は、典型的な神経毒性物質として広く研究されており、n-ヘキサン (CAS番号 110-54-3) やメチルn-ブチルケトン (CAS番号 591-78-6) の最も活性のある神経毒性代謝物である。さらに、本物質とn-ヘキサンやメチルn-ブチルケトンの他の代謝物の神経毒性能を比較した実験では、本物質はn-ヘキサンの38倍、メチルn-ブチルケトンの3.3倍の神経毒性能があることが報告されている (PATTY (6th, 2012)。また、n-ヘキサン及びメチルn-ブチルケトン はいずれも、ヒトにおいて神経障害が認められGHS分類で区分1 (神経系) として分類されている (各々、H21年度、H27年度)。 したがって、本物質については区分2 (視覚器) のほかに、n-ヘキサンやメチルn-ブチルケトン同様に区分1 (神経系) を適応するのが妥当と考えられることから、区分1 (神経系)、区分2 (視覚器) とした。 なお、雄ラットに10,000 ppm (ガイダンス値換算:933 mg/kg/day) を6週間飲水投与した結果、無精子症を生じたとの報告があるが、区分2を超える用量のため、精巣は標的臓器としなかった。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。