急性毒性
経口
【分類根拠】 (2)、(3)、(4) は非ガイドライン試験結果のため、(1) の情報に基づいて、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (AICIS IMAP (Access on April 2020)、MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、SIAR (2005)、既存点検結果 (Access on April 2020)) (2) ラットのLD50: 2.14 g/kg (2,140 mg/kg) (ACGIH (7th, 2019)) (3) ラットのLD50: 1,900 mg/kg (AICIS IMAP (Access on April 2020)、MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、SIAR (2005)) (4) ラットのLD50: 1,900~2,590 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008))
経皮
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: 1.14 mL/kg (換算値:1,368 mg/kg) (ACGIH (7th, 2019)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2002)) (2) ウサギのLD50: > 1,706 mg/kg (AICIS IMAP (Access on April 2020)) (3) ウサギのLD50: 1,710 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) (4) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (AICIS IMAP (Access on April 2020))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) ウサギに本物質の原液を用量不明あるいは0.01 mL適用した皮膚刺激性試験において、中等度の刺激性あるいは刺激性なしと報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。 (2) Federal Regulations, Title 16, Section 1500.41に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で中等度の刺激性を示すと報告されている (SIAR (2005)、REACH登録情報 (Access on May 2020))。 (3) ウサギの皮膚に対し中等度の刺激性を示し、PIIは3.5と報告されている (ACGIH (7th, 2019)、SIAR (2005))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分2Aとした。
【根拠データ】 (1) ウサギに本物質の原液 0.1mLあるいは0.005 mLを適用した眼刺激性試験において、24時間後に虹彩のうっ血や強度の角膜損傷が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。 (2) Federal Regulations, Title 16, Section 1500.41に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で刺激性を示すと報告されている (SIAR (2005))。 (3) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験において1時間後には角膜混濁がみられ、24時間後には虹彩に点状出血がみられたが、結膜には変化はみられなかった。閉眼や出血はみられず、10日間には完全には回復しなかったが、14日目までには回復した (REACH登録情報 (Access on May 2020)) 。
【参考データ等】 (4) EU CLP分類でEye Dam. 1 (H318)に分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2020))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 本物質は産衛学会 感作性分類 気道第1群に指定されている (産衛学会許容濃度等の勧告 (2019))。 (2) 本物質を扱う作業者において鼻汁、喘鳴、皮膚炎、息切れ等を示した症例が複数報告されており、プリックテスト及び RAST による検査により、本物質に対するIgE抗体が確認されている (NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2019)、MAK (DFG) vol.10 (1998))。 (3) 本物質は強い感作性物質であり、IgE及びIgG抗体を誘導する (ACGIH (7th, 2019))。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1) より、区分1とした。なお、使用されたマウスが推奨系統とは異なるため、細区分は行わなかった。
【根拠データ】 (1) BALB/cマウスを用いたマウス局所リンパ節試験 (LLNA) において、陽性となり、EC3値は1.37であった (ACGIH (7th, 2019))。
【参考データ等】 (2) EU CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2020))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性 (数的異常誘発に関して疑陽性) の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、 SIAR (2005)、既存点検結果 (Access on April 2020)、 産衛学会許容濃度の提案理由書 (2002))。
発がん性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) において、親動物毒性 (主に前胃の病変) がみられる用量においても生殖発生影響はみられていない。しかし、この試験はスクリーニング試験であること、また、発生に関する十分なデータがないことから、データ不足のため分類できないとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物毒性 (前胃の扁平上皮の過形成・粘膜下組織の肉芽腫性炎症等) がみられる用量においても生殖毒性はみられていない (既存点検結果 (Access on April 2020)、NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2005)、ACGIH (7th, 2019))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1) より、区分3 (気道刺激性) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質は、眼の痛み、咽頭の痛み、くしゃみ、鼻汁、鼻詰まり、咳、喘息などの眼と鼻の症状を引き起こす (SIAR (2005))。
【参考データ等】 (2) 本物質を含む環状酸無水物は、ヒトにおいて皮膚や粘膜への直接接触または吸入ばく露により刺激や感作を引き起こすことがある。環状酸無水物が水と反応して生成したジカルボン酸により、刺激が引き起こされる (CICAD 75 (2009))。 (3) ACGIHでは感作性及び眼、鼻腔の症状及び喘息をの発生を最小化することを目的としたTLV-TWAを設定している (ACGIH (7th, 2019))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1) より、経口経路については区分に該当しない。その他の経路についてはデータ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験が実施されており、刺激性に起因したと考えられる前胃の病変が認められているが、分類の根拠となる影響は認められていない (既存点検結果 (Access on April 2020)、SIAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008)、MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、ACGIH (7th, 2019))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。