急性毒性
経口
【分類根拠】 List 1又はList 1に相当する評価書に掲載されている、(1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:2,800 mg/kg (NTP TR424 (1994)) (2) ラットのLD50:3,852 mg/kg (ECHA RAC Background Document (2015))
【参考データ等】 (3) ラットのLD50:1,700 mg/kg (HSDB (Access on May 2019))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: >2,000 mg/kg (ECHA RAC Background Document (2015))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間、エアロゾル) 2.43 mg/L (ECHA RAC Background Document (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2019))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験において3例の24~72hの平均スコアは紅斑が2.7~3.0、浮腫が4であり、14日目にはスコアは全例で0となったが、21日後に瘢痕様組織は認められたものの明らかな可逆性が報告されている (REACH登録情報 (Access on June 2019))。
【参考データ等】 (2) EU CLP分類でSkin Irrit. 2 (H315) に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 405に準拠したウサギの眼刺激性試験における3例の24~72hの平均スコアは角膜混濁が2.67~3.0、虹彩が0.67~1.0、結膜発赤が2.67、結膜浮腫が1.3~2.0と報告され、全例の反応が非可逆性 (not reversible) と報告されている (REACH登録情報 (Access on June 2019))。
【参考データ等】 (2) EU CLP分類でEye Dam. 1 (H318) に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2019))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) モルモットのビューラー法の惹起24h、48h、72h後の判定において感作性の所見ありと判定。陽性率には言及なし (REACH登録情報 (Access on June 2019))。
【参考データ等】 (2) EU CLP分類で、Skin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2019))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、証拠の重み付けに基づき、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoではマウス骨髄の小核試験、腹腔内投与によるマウスの優勢致死試験及びマウスコメット試験 (肝、腺胃、骨髄) で陰性である (EPA Pesticide (1995)、CLH Report (2014))。 (2) in vitroではマウスリンフォーマTK試験及びヒトリンパ芽球株化細胞TK6を用いた突然変異試験で陽性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験及び細菌の復帰突然変異試験で陰性である (NTP TR424 (1994)、NTP TR444 (1995)、EPA Pesticide (1995)、NTP DB (Access on May 2019)、CLH Report (2014))。
発がん性
【分類根拠】 (1) の既存分類結果から、ガイダンスに従い区分2とした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPA (1995) でグループC、EU CLPで Carc.2 (EU CLP分類 (Access on May 2019)) に分類されている。
【参考データ等】 (2) ラットに2年間強制経口投与した発がん性試験において、雌で腎臓の移行上皮がんが認められた [曖昧な証拠 (equivocal evidence)] (NTP TR424 (1994)、CLH report (2014)、ECHA RAC Background Document (2015))。 (3) マウスに2年間強制経口投与した発がん性試験において、雄で尿細管腫瘍が認められた [ある程度の証拠 (some evidence)] (NTP TR424 (1994), CLH report (2014)、ECHA RAC Background Document (2015))。 (4) 遺伝子改変マウス (Tg.AC雌マウス) に20週間経皮適用した発がん性試験において、皮膚腫瘍が認められた (CLH report (2014)、ECHA RAC Background Document (2015))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) より、親動物毒性のみられる用量で生殖指標への影響、及び児の発達指標への影響がみられたことから、区分2とした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた強制経口投与による2世代生殖毒性試験 (OECD TG 416) において、親動物に体重ヘの影響、腎臓への影響 (腎炎、尿細管拡張、好塩基性化尿細管等) がみられる用量で、雌の受胎指標の低値がP世代、F1世代でみられた。また、性周期の延長及び生殖能の低下がF1母動物でみられた。児動物毒性についは、最終体重の減少がF1同腹児及びF2同腹児でみられた。さらにF1及びF2世代で耳介展開達成率及び眼瞼開裂達成率の低下、切歯萌出達成率の低下がみられた。 (ECHA RAC Background document (2015)、CLH Report (2014))。
【参考データ等】 (2) 雌ウサギの妊娠6~19日に強制経口投与した発生毒性試験において問題となる影響は認められなかった (EPA Pesticide (1995)、ECHA RAC Background document (2015)、CLH Report (2014)). (3) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡 (3/25例) 等) がみられる用量で胎児への軽微な影響 (重量減少、未骨化増加) がみられている (EPA Pesticide (1995)、ECHA RAC Background document (2015)、CLH Report (2014))。 (4) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に体重減少及び摂餌量減少がみられたが胎児に影響はみられていない (ECHA RAC Background document (2015)、CLH Report (2014))。 (5) EU CLPではRepr. 2 に分類されている。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1) より、実験動物で肺への影響が区分2範囲の用量でみられていることから、区分2 (呼吸器) とした。(2) のヒトの情報はばく露回数及び経路が不明であり、(3) の実験動物の経口投与試験結果からは標的臓器を特定できないため根拠としなかった。
【根拠データ】 (1) 本物質のエアロゾルを用いたラットの4時間急性吸入毒性試験 (OECD TG 403準拠) において、2.07 mg/L (区分2相当) 以上で、活動性低下、運動失調、徐呼吸、あえぎ、過呼吸、異常呼吸音が認められた。死亡例の剖検では肺の部分的な虚脱とうっ血が認められた。また、死亡例では肺重量増加が認められ、肺の刺激及び水腫の所見と合わせて肺水腫による急性呼吸不全を示すものと考えられた (ECHA RAC Background Document (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2019))。
【参考データ等】 (2) ばく露回数及び経路は不明であるが、本物質に過剰ばく露された患者 (複数) に発汗、喉の渇き、吐き気、下痢、腹痛、多動性、痙攣又は麻痺、低血圧、呼吸困難が認められた (NTP TR424 (1994))。 (3) ラット及びマウスに本物質250、500、1,000、4,000 mg/kgを単回経口投与した試験で、影響がみられた最小用量の記載はないが、投与物質関連影響として、下痢、立毛、活動性低下及び亢進が認められた。剖検の肉眼所見では病変はみられなかった。死亡例はラットでは1,000 mg/kg以上、マウスでは4,000 mg/kgで認められた (HSDB (Access on May 2019))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2) より、ウサギへの経皮投与において区分1の範囲で、ラットへの経口投与において区分2の範囲で腎臓への影響がみられていることから、区分1 (腎臓) とした。
【根拠データ】 (1) ウサギに10~160 mg/kg/dayを3週間経皮適用した試験で、40 mg/kg/day (90日換算: 9.3 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雌で腎臓への影響 (尿細管の石灰化、尿細管の増生及び細胞浸潤) がみられた (ECHA RAC Background Document (2015))。 (2) ラットを用いた2年間の慢性毒性/発がん性併合試験 (経口) において、30あるいは60 mg/kg/day (区分2の範囲) の雄で腎症の重症化、尿中の蛋白及びALPの増加、腎臓重量増加がみられ、120 mg/kg/day (区分2超) 以上では腎尿細管の過形成、腎臓の移行上皮細胞の過形成等がみられた (NTP TR424 (1994)、EPA Pesticide (1995))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。