急性毒性
経口
【分類根拠】
(1)~(4) より区分3とした。
なお、本物質は水を除いた量で区分判定している。
【根拠データ】
(1) ラットのLD50:100 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008)、HSDB (Access on July 2019))
(2) ラットのLD50:119 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))
(3) ラットのLD50:71~300 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))
(4) ラットのLD50:71~118 mg/kg (ATSDR (2012))
経皮
【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。新たな情報源の使用により、旧分類から区分を変更した。
なお、本物質は水を除いた量で区分判定している。
【根拠データ】
(1) ウサギの経皮ばく露において、本物質2,000 mg/kgで毒性がみられなかった (ACGIH (7th, 2001))。
吸入: ガス
【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。なお、新しいデータが得られたことから区分を変更した。
【根拠データ】
(1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験において72時間後まで持続して1以上のスコアを示した動物は6例中1例のみであり、72時間後には他の動物のスコアは全て0であった (REACH登録情報 (Access on August 2019))。
【参考データ等】
(2) ヒトのパッチテスト(用量不明)で刺激なしとする報告及び皮膚炎を生じたとの報告がある (ATSDR (2012))。
(3) 本物質のモルモットへのばく露 (1,000 mg/kg) で軽度の紅斑を生じた (ATSDR (2012))。
(4) 本物質のアセトン溶液 (27 mg/kg)、シクロヘキサン溶液 (37.5 mg/kg)、DMSO溶液 (165 mg/kg) のウサギへのばく露で皮膚炎を生じた (ATSDR (2012))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】
(1)の記載はあるが、データ不足のため分類できないとした。
【参考データ等】
(1) 本物質のヒュームで結膜炎を生じたと報告されている(ATSDR (2012))。
呼吸器感作性
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内感作:60%、貼付感作:60%、惹起:60及び30%) において皮膚反応は観察されず、陰性と報告されている (REACH登録情報 (Access on August 2019))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】
(1)、(2) より、in vivo、in vitro試験を含む標準的組合せ試験でいずれも陰性であったことから、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1) in vivoでは、優性致死試験及びマウス骨髄の小核試験で陰性の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2012))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のDNA損傷試験、マウスリンフォーマ試験で陰性の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2012))。
発がん性
【分類根拠】
ACGIHではA4に分類されているが、 (2)、(3) の実験動物の結果及びEPAでS (Suggestive Evidence of Carcinogenic Potential) (IRIS (2018)) に分類されていることから、ガイダンスに従い区分2とした。したがって、旧分類から区分を変更した。
【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001))、EPAでS (Suggestive Evidence of Carcinogenic Potential) (IRIS (2018)) に分類されている。
(2) マウスに本物質を2年間混餌投与した試験で、肝細胞がん又は腺腫の発生率増加、肺胞/細気管支腺腫又はがんの発生率の増加が雌雄で認められた (IRIS (2018))。
(3) ラットに本物質を2年間混餌投与した試験で、肝細胞がんの発生率増加が雄で認められたが、雌では腫瘍の発生率増加は認められなかった (IRIS (2018))。
生殖毒性
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による2世代生殖毒性試験において、母動物毒性 (死亡率の著明な増加等) がみられる用量で妊娠数の減少、出生児の生存率の低下がみられ、母動物毒性のみられない用量で児動物の体重増加抑制がみられている (環境省リスク評価第6巻 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2012))。
(2) ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡率増加 (25%)、痙攣、活動過多) がみられる用量で胎児毒性 (早期胚吸収) がみられているが奇形はみられていない (環境省リスク評価第6巻 (2008)、ACGIH (7th, 2001))。
(3) ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡率増加 (31%)、痙攣、衰弱、活動過多) がみられる用量で胎児の体重と体長の減少がみられているが奇形はみられていない (環境省リスク評価第6巻 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2012))。
(4) ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験において、影響はみられていない (ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2012))。
【参考データ等】
(5) 本物質はラットにおいて妊娠中の母体から胎児へ、及び母乳を介した児への移行が報告されている。生殖、発生毒性の試験では母動物毒性がみられない用量での児への影響は特定されていないが、本物質によって誘発される神経系の影響 (GABA受容体拮抗作用) の主な作用機序と、GABA作動性シグナル伝達が神経系の発達に顕著な役割を果たしているという事実に基づいて、発達神経毒性の可能性に関して大きな懸念が提起されている (IRIS Executive Summary (2018))。