安全データシート

ジフェニルアミン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: ジフェニルアミン
  • CB番号: CB7852949
  • CAS: 122-39-4
  • EINECS番号: 204-539-4
  • 同義語: ジフェニルアミン,N-フェニルベンゼンアミン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 医薬・染料・有機ゴム薬品中間体/有機ゴム薬品の老化防止剤であるN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等の合成原料,染料・医薬品の合成原料,重合禁止剤(フェノチアジン)の合成原料,安定剤 (火薬用・塩素系溶剤用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
H31.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性   区分1
発がん性   区分2
生殖毒性   区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(中枢神経系、血液系)、区分3(気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分2 (血液系、腎臓)
分類実施日(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性(急性)   区分1
水生環境有害性(長期間)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS06GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H301 + H311 + H331 飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合や吸入した場合は有毒。
H373 長期にわたる、又は反復ばく露により臓器 (腎臓, 肝臓, 脾臓) の障害のおそれ。
H410 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性。
注意書き
安全対策
P260 粉じんを吸入しないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋/保護衣を着用すること。
応急措置
P301 + P310 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P302 + P352 + P312 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P304 + P340 + P311 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
P314 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
P391 漏出物を回収すること。
保管
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C12H11N
  • 分子量: 169.22 g/mol
  • CAS番号: 122-39-4
  • EC番号: 204-539-4
  • 化審法官報公示番号: 3-133
  • 安衛法官報公示番号: 4-(12)-219

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ場合は水を飲ませる(多くても2杯)。ただちに医師の診察を受けること。1時間以内に治療が受けられないという例外的な状況のみ、嘔吐させ(相手に完全に意識のある場合のみ)、活性炭(10%懸濁液に20~40g)を投与してできるだけ早く医師の診察を受ける。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
窒素酸化物(NOx)
可燃性。
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: いかなる場合も、ほこりを生じさせたり吸い込んだりしないようにすること。触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 慎重に行うこと。適切に廃棄すること。関連エリアを清掃のこと。 ほこりが生じないようにすること。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1C: 可燃性、急性毒性カテゴリー3 / 毒性化合物または慢性効果を引き起こす化合物
保管条件
密閉のこと。 乾燥。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
TWA: 10 mg/m3 - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
ほこりが生じた際に必要。
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
結晶: ICSC(2004)
無色 : ICSC(2004)
臭い
特異臭: ICSC(2004)
臭いのしきい(閾)値
情報なし
pH
情報なし

融点・凝固点

53℃(融点): GESTIS(2014), 53-54℃: HSDB(2014)

沸点、初留点及び沸騰範囲

302℃(沸点) : GESTIS(2014) & HSDB(2014)

引火点

153℃(密閉式): GESTIS(2014), 153℃(Open cup): HSDB(2014)

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

可燃性

燃焼又は爆発範囲

情報なし

蒸気圧

6.70×10(-4)mmHg(25℃) [換算値 0.0893Pa(25℃)] HSDB(2006)

蒸気密度

5.83(空気=1) : 計算値

比重(相対密度)

1.2: ICSC(2004)

溶解度

水: 不溶 HSDB(2006) 有機溶媒: エタノール、アセトン、ベンゼン、四塩化炭素、ピリジン、酢酸エチルに易溶、エーテル、酢酸に可溶、クロロホルムに微溶 HSDB(2006)

n-オクタノール/水分配係数

logKow=3.50(測定値):SRC:KowWin(2006)

自然発火温度

634℃:HSDB(2014)、 630℃:GESTIS(2014)

分解温度

情報なし

粘度(粘性率)

情報なし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

可燃性有機物質及び製剤に概ね該当:微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性が
通常想定される。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

次と激しく反応
酸化剤
強酸

10.4 避けるべき条件

情報なし

10.5 混触危険物質

データなし

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
ラットのLD50値として、> 800 mg/kg-> 15,000 mg/kg の範囲内において、11件の報告 (PATTY (6th, 2012)、NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、EU-RAR (2007)、環境省リスク評価第5巻 (2004)、JMPR 949 (1998)、JMPR 701 (1984)、JMPR 157 (1969)) がある。最も多くのデータ (4件) (2,960 mg/kg (雄)、2,480 mg/kg (雌) (EU-RAR (2007)、JMPR 701 (1984))、3,000 mg/kg (雄)、2,700 mg/kg (雌) (JMPR 949 (1998))、3,000 mg/kg (EU-RAR (2007))、3,200 mg/kg (JMPR 157 (1969))) が該当する区分外 (国連分類基準の区分5) とした。新たな情報源 (PATTY (6th, 2012)、NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、環境省リスク評価第5巻 (2004)、JMPR 949 (1998)、JMPR 701 (1984)、JMPR 157 (1969)) を追加し、区分を見直した。
経皮
ウサギのLD50値として、> 2,000 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、JMPR 949 (1998))、及び> 5,000 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008))、ラットのLD50値として、> 5,000 mg/kg (EU-RAR (2007)、JMPR 701 (1984)) との報告に基づき、区分外とした。新たな情報源 (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、JMPR 949 (1998)) を追加し、区分を見直した。
吸入:ガス
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

ウサギを用いた皮膚刺激性試験の報告が多数あり、いずれも刺激性なし、又は軽度の刺激性がみられたとの結果であった (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、JMPR 701_ Diphenylamine (Pesticide residues in food 1984 evaluations))。以上の結果から区分外 (国連分類基準の区分3) とした。List1の情報を追加し区分を変更した。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

ウサギ3匹に本物質0.1 gを適用した眼刺激性試験 (EU TG 及び OECD TGに準拠) において、角膜を含め刺激症状や眼の損傷が投与後 21 日より長く持続したことから「腐食性」を示す物質と判断されている (EU-RAR (2007))。また、1匹のウサギに本物質0.1gを7日間適用した試験において、腐食性と角膜混濁が観察された (JMPR 949_ Diphenylamine (addendum) (JMPR Evaluations 1998 Part II Toxicological))。一方、ウサギを用いた他の眼刺激性試験において、軽度の虹彩炎、中等度の結膜炎がみられたが10日以内に回復した (NITE初期リスク評価書 (2008)、JMPR701_ Diphenylamine (Pesticide residues in food 1984 evaluations)) との報告や、軽度の発赤及び浮腫 (1/2匹) がみられたが3日以内に消失したとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。さらに、本物質のウサギに対する眼刺激性試験で刺激性は軽度であるとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。以上の結果から、腐食性と軽度の刺激性との相反するデータがあるが、ガイドラインに従った試験において腐食性がみられていることから、眼に対して重篤な影響をもたらす可能性を考慮し、区分1と判断した。

呼吸器感作性

データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いた感作性試験において陰性との報告があるが (NITE初期リスク評価書 (2008)、JMPR 949_ Diphenylamine (addendum) (JMPR Evaluations 1998 Part II Toxicological))、試験法等詳細不明であるため分類に用いるには十分なデータでないと判断した。また、ヒトのパッチテストにおいて1000人中3名に陽性を示したとの報告がある (環境省リスク評価第3巻 (2004)) が、環境省リスク評価第3巻 (2004) では「本物質には感作性はないと考えられる」と考察していることや、試験条件等が詳細不明であることから、分類に用いるには十分なデータでないと判断した。

生殖細胞変異原性

ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、ラット及びマウスの骨髄細胞の小核試験、ラット骨髄細胞の染色体異常試験 (この試験は慢性毒性試験において骨髄細胞の染色体異常を調べたもの)、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性 (EU-RAR (2007)、NITE初期リスク評価書 (2008)、IRIS (1987)、環境省リスク評価第5巻 (2006)、IUCLID (2000)、BUA 15 (1991)) である。In vitroでは、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で唯一陽性結果が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008)) が、その他の情報は、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、ヒトリンパ球培養細胞の姉妹染色分体交換試験、ラット初代肝細胞の不定期DNA合成試験でいずれも陰性である (EU-RAR (2007)、NITE初期リスク評価書 (2008)、IRIS (1987)、環境省リスク評価第5巻 (2006)、BUA 15 (1991)、NTP DB (Access on July 2014)、IUCLID (2000))。

発がん性

【分類根拠】 発がんに関して利用可能なヒトを対象とした報告はない。 (3)の既存分類判定以降に適切な試験ガイドラインとGLP基準に準拠して実施された(1)及び(2)において、動物種2種に腫瘍の発生増加が報告されたが、悪性腫瘍の発生増加は明確でなかった。また、平成23年度化学物質のリスク評価検討会(第4回有害性評価小検討会)で議論した結果、指針は不要とされたことから、がん原性を示す証拠とするには不十分であると判断し区分2とした。
【根拠データ】 (1)ラットに2年間混餌投与したがん原性試験において、雄に脾臓の血管系腫瘍の発生の増加傾向、並びに脾臓と皮下組織を含む全臓器の血管系腫瘍の発生増加、雌では子宮に腺がんの発生の増加傾向が認められた(厚労省委託がん原性試験結果(2011))。 (2)マウスに2年間混餌投与したがん原性試験において、雄に脾臓、並びに脾臓及び肝臓等を含む全臓器に血管系腫瘍の発生増加が認められた(厚労省委託がん原性試験結果(2011))。 (3)国内外の分類機関による既存分類では、EPAがNL(EPA OPP Annual Cancer Report(2017):1997年分類)、ACGIHがA4(ACGIH(7th, 2001))に分類しているが、(1)及び(2)の結果は評価に含まれていない。
【参考データ等】 (4)マウスに18ヵ月間経口投与(混餌、強制経口)投与した2試験で、投与に関連した腫瘍発生は認められなかった(NITE初期リスク評価書(2008)、EU-RAR(2008)、環境省リスク評価第5巻(2006)、JMPR(1998)、EPA Pesticide RED(1998))。 (5)ラットに2年間混餌投与した2試験で、投与に関連した腫瘍発生は認められなかった(NITE初期リスク評価書(2008)、EU-RAR(2008)、ACGIH(7th, 2001)、環境省リスク評価第5巻(2006)、JMPR(1998))。 (6)ビーグル犬に2年間混餌投与した試験で、投与に関連した腫瘍発生は認められなかった(EU-RAR(2008)、ACGIH(7th, 2001))。 (7)N-エチル-N-ヒドロキシエチルニトロサミンの腫瘍発生に対して、プロモーター作用を示したとの報告がある(NITE初期リスク評価書(2008)、JMPR(1998))。 (8)EUリスク評価書では、ガイドライン準拠の長期試験は利用できないが、ラット、マウスのいくつかの系統とイヌを用いた数多くの古い研究報告からは本物質に関連した腫瘍性変化の報告はないとしている(EU-RAR(2008))。

生殖毒性

ラットを用いた経口経路での2世代生殖毒性試験において、親動物毒性 (体重減少、脾臓の黒紫色化、脾臓うっ血・ヘモジデリン沈着、脾臓肥大、肝臓相対重量増加、肝細胞肥大、腎臓近位尿細管褐色色素沈着、肝臓クッパー細胞への褐色色素沈着、乳腺腫脹、側腹部触診による腫瘤 (病理組織学的検査なし)) がみられる用量 (450 mg/kg bw/day相当) で着床痕数の減少、同腹児数の減少がみられている (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、環境省リスク評価第5巻 (2006)、JMPR (1998))。 ラット、ウサギを用いた経口経路での催奇形性試験において、母動物毒性がみられる用量においても発生毒性はみられていない (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、環境省リスク評価第5巻 (2006)、JMPR (1998))。 以上より、2世代生殖毒性試験において親動物毒性のみられる用量で同腹児数の減少がみられたことから、ガイダンス文書に従い区分2とした。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

ヒトにおいて、吸入ばく露により、気道 (粘膜) 刺激性を有する (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第5巻 (2006)、ACGIH (7th, 2001)、HSDB (Access on June 2014)、PATTY (6th, 2012))。また、血液に影響を及ぼしてメトヘモグロビン血症、その他、泌尿器への影響 (詳細不明)、吸入ばく露や経口摂取によって、咳、咽頭痛、チアノ-ゼ、頭痛、眩暈、吐き気、錯乱、痙攣、意識喪失をおこすとの報告がある。また、経皮経路で吸収されてチアノ-ゼ等を引き起こすことがある (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第5巻 (2006)、ACGIH (7th, 2001)、HSDB (Access on June 2014)、PATTY (6th, 2012))。 以上より、区分1 (中枢神経系、血液系)、区分3 (気道刺激性) とした。なお、泌尿器への影響は血液系への影響の二次的影響と考え区分の対象としなかった。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

ヒトでは本物質の職業ばく露による中毒症状として、膀胱刺激症状、頻脈、高血圧、湿疹が生じるとの記述がある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第5巻 (2006)、NITE初期リスク評価書 (2008)) が、ばく露の詳細が不明であり、原著での確認が困難 (1957年発刊の書籍の記述をACGIHが引用。他評価書はACGIHよりの再引用) であるため、信頼性の観点からも分類に使用するには不適切な知見と判断した。この他、利用可能な情報はなく、ヒトで分類に利用可能な知見はない。 実験動物では、ラットに90日間又は2年間混餌投与、及びイヌ (ビーグル) に1年間強制 (カプセル) 経口投与した試験において、区分2に該当する用量 (15-93 mg/kg/day) で、貧血様所見 (赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値の減少など) が認められ、血液毒性による二次的影響と考えられる所見 (ヘモジデリン沈着、髄外造血、色素沈着、うっ血) が脾臓、肝臓、腎臓の各臓器にみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007))。同様の所見はマウスに90日間又は78週間混餌投与試験でも区分2の範囲内から区分外の高用量 (73- >110 mg/kg/day) で認められ (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007))、さらに厚生労働省委託によるラット及びマウスを用いた13週間又は2年間混餌投与試験でも、区分2の用量範囲 (12-93 mg/kg/day) における貧血所見及び脾臓、肝臓、腎臓への二次的影響が確認されている (厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on May 2014))。一方、ラットに28日間強制経口投与した試験において、区分2のほぼ上限値 (333 mg/kg/day: 90日換算 (103 mg/kg/day)) の用量で、腎臓に重量増加とともに尿細管の変性がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2007)) との記述より、「腎臓」を標的臓器に加えることとした。 以上より、区分2 (血液系、腎臓) に分類した。なお、旧分類は冒頭のヒトでの職業ばく露による影響を中心に分類した結果であった。

吸引性呼吸器有害性

データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
LC50 - Pimephales promelas (ファットヘッドミノウ) - 3.79 mg/l - 96.0 h
LC50 - Oryzias latipes (オレンジレッドカダヤシ) - 2.2 mg/l - 48 h
備考: (IUCLID)
ミジンコ等の水生無脊
EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 2 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(OECD 試験ガイドライン 202)
藻類に対する毒性
EC50 - Pseudokirchneriella subcapitata (緑藻) - 2.17 mg/l - 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性
(OECD 試験ガイドライン 301D)

12.3 生体蓄積性

生体蓄積性 Cyprinus carpio (コイ)(ジフェニルアミン)
生物濃縮因子(BCF): 253

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 2811    IMDG (海上規制): 2811    IATA-DGR (航空規制): 2811

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): TOXIC SOLID, ORGANIC, N.O.S. (ジフェニルアミン)
IMDG (海上規制): TOXIC SOLID, ORGANIC, N.O.S. (diphenylamine)
IATA-DGR (航空規制): Toxic solid, organic, n.o.s. (diphenylamine)

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物(法第57条、施行令第17条別表第3第1号並びに施行令第18条及び第18条の2別表第9)

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

消防法

指定可燃物、可燃性固体類 (法第9条の3、危険物規制令別表第4)

海洋汚染防止法

有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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