急性毒性
経口
ウサギのLD50値325mg/kg(SIDS, 2002)のデータのみで、げっ歯類のデータがないため、分類できないとした。
経皮
データなし。
吸入
吸入(ガス): GHSの定義における固体である。
吸入(蒸気): データなし。
吸入(粉じん・ミスト): データなし。
皮膚腐食性・刺激性
ブタの腹部に2N(8%)、4N(16%)、6N(24%)溶液を適用した試験で、大きな水疱が15分以内に現れ、8%および16%溶液は全表皮層に重度の壊死を生じ、24%溶液においては皮下組織の深部に至る壊死を伴う無数かつ重度の水疱が生じたとの報告〔SIDS (2009))、およびウサギ皮膚に5%水溶液を4時間適用した場合に重度の壊死を起こしたとの報告(ACGIH (7th, 2001))に基づき区分1とした。なお、pH は12 (0.05% w/w)〔Merck (14th, 2006)〕である。また、ヒトへの影響では、皮膚に対して0.5%-4%溶液で皮膚刺激があり、0.5%溶液を用いた試験でボランティアの55および61%に皮膚刺激あったとの報告(SIDS (2009))がある。EU分類ではC、R35に分類されている。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギ眼に対し1.2%溶液ないし2%以上の濃度が腐食性濃度との記述〔SIDS (2009)〕、pH は12 (0.05% w/w)〔Merck (14th, 2006)〕であることから区分1とした。ヒトの事故例で高濃度の粉じんまたは溶液により重度の眼の障害の報告〔ACGIH (7th, 2001)〕や誤って眼に入り失明に至るような報告〔DFGOTvol.12 (1999)〕が多数ある。なお、皮膚に対しても腐食性を示し、EU分類ではC、R35に分類されている。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
呼吸器感作性:データなし。
皮膚感作性:男性ボランティアによる皮膚感作性試験で、背中に0.063% - 1.0%溶液を塗布して誘導をかけ、7日後に0.125%溶液を再塗布したが、用量依存性の刺激増強はあったが、再塗布したパッチ面の反応の増強は認められなかった。したがって、水酸化ナトリウムには皮膚感作性がなかった。さらに、水酸化ナトリウムは長年広く使用され来ており、ヒトの皮膚感作症例の報告も無いことから水酸化ナトリウムは皮膚感作性物質とは考えられないという結論〔SIDS (2009)〕に基づき、区分外とした。
生殖細胞変異原性
n vivo試験のデータとして、マウスに腹腔内投与による骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)で小核の有意な増加は観察されず(SIDS (2009))、またマウスに腹腔内投与による卵母細胞を用いた染色体異数性誘発試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)では染色体不分離の証拠は見出されていない(SIDS (2009))。これらの結果は体細胞及び生殖細胞を用いたin vivo変異原性試験の結果が陰性であることを示しているので区分外とした。なお、in vitro変異原性試験として、Ames試験で陰性〔SIDS (2009)〕、CHO K1細胞を用いた染色体異常試験で偽陽性〔SIDS (2009)〕の報告がある。
発がん性
ラットの経口投与12週間の発がん性試験で陰性〔DFGOTvol.12 (1999)〕などの報告があるがデータ不足で分類できない。
生殖毒性
データなし。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
粉じんやミストの急性吸入ばく露により粘膜刺激に続き、咳・呼吸困難などが引き起こされ、さらにばく露が強いと肺水腫やショックに陥る可能性がある(PATTY (5th, 2001))という記述により区分1(呼吸器)とした。なお、潮解性や極小の蒸気圧などの物理化学的特性から粉じん形成はあり得ない〔SIDS (2009)〕との記述もある。そのほか、誤飲28症例で、推定25-37 %溶液50~200 mLにより上部消化管と食道の傷害が認められたとの報告(SIDS (2009))や、深刻な(誤飲)事故や自殺症例報告は多数あり口腔から食道までの重度の腐食を引き起こしたする記述(DFGOTvol.12 (1999))もある。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
経口、経皮、吸入またはその他の経路による反復ばく露の動物試験データはない(SIDS (2009))と記述され、また、ヒトに対する影響のデータもほとんどないので、データ不足で分類できない。また、ラットでのエアゾル吸入反復ばく露で肺に障害を与えたとの記述(ACGIH (7th, 2001))があるが、ばく露濃度が不明のため分類できない。なお、潮解性や極小の蒸気圧などの物理化学的特性から粉じん形成はあり得ない〔SIDS (2009)〕との記述がある。
吸引性呼吸器有害性
データなし。