急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 雌: 8 mg/kg、雄: 11 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2007)) (2) ラットのLD50: 13 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020)) (3) ラットのLD50: 雌: 16 mg/kg、雄: 21 mg/kg (ACGIH (7th, 2002)、食安委 農薬評価書 (2007)、HSDB (Access on May 2020)) (4) ラットのLD50: 22 mg/kg (IPCS PIM G001 (2009))
経皮
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 雌: 42 mg/kg、雄: 43 mg/kg (ACGIH (7th, 2002)、食安委 農薬評価書 (2007)、HSDB (Access on May 2020)) (2) ラットのLD50: 42~43 mg/kg (Patty (6th, 2012)) (3) ウサギのLD50: 168 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2007)、GESTIS (Access on May 2020)) (4) ウサギのLD50: 225 mg/kg (ACGIH (7th, 2002)、HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分2とした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (0.002 mg/L) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): 0.09 mg/L (ACGIH (7th, 2002)、US AEGL (2009)、食安委 農薬評価書 (2007)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012)) (2) 本物質の蒸気圧: 0.00016 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 0.002 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質はEPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験において、皮膚刺激性は示さない (EPA Pesticides (2006)、食安委 農薬評価書 (2007)、HSDB (Access on May 2020、Patty (6th, 2012))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1) より、区分2Aとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) EPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験において、刺激性は14日以内に回復する (EPA Pesticides (2006)、食安委 農薬評価書 (2007)、HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1) より、区分1とした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質はEPA OPPTS 870.2600に準拠した モルモットを用いた皮膚感作性試験において、強い感作性物質と報告されている (EPA Pesticides (2006)、食安委 農薬評価書 (2007)、HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性及び陰性、ほ乳類用培養細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2007)、ACGIH (7th 2002))。
発がん性
【分類根拠】 利用可能なヒトを対象とした報告はない。(1)、(2) より、ACGIHではA4に分類されているが、EPAではSに分類されており、マウスでの発がん性試験結果も得られておらず、分類できないとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2002))、EPAでS (Suggestive Evidence of Carcinogenicity, but not Sufficient to Assess Human Carcinogenic Potential) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on July 2020):1999年分類) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験では、腫瘍性病変の発生率に本物質の投与量との相関性はみられなかった (食安委 農薬評価書 (2007))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) より、親動物毒性がみられない用量において児動物の死亡率増加がみられていることから区分1Bとした。なお、新たな情報源を用いたことにより、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた3世代繁殖試験において、親動物にコリン作動性の毒性所見(虚弱、体重増加抑制、中枢神経への影響)がみられ、妊娠率、及び同腹児数の低下がみられ、同用量の児動物にもコリン作動性の毒性所見(虚弱、体重増加抑制、中枢神経への影響)、死亡率の高値がみられた。また、親動物毒性がみられない用量においても児動物の死亡率増加がみられている (食安委 農薬評価書 (2007))。
【参考データ等】 (2) 雌ウサギの妊娠6~18日に投与 (投与経路不明) した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡 (4/18例)、コリン作動性の毒性所見 (流涎及び振戦)) がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2007))。 (3) 雌マウスの妊娠期間中に腹腔内投与した発生毒性試験において、母動物の死亡率が上昇し、胎児体重の減少がみられている (食安委 農薬評価書 (2007))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分1 (神経系、呼吸器) とした。新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ヒトへの急性中毒の徴候と症状には、ムスカリン作動性、ニコチン作動性及び中枢神経系の症状がある (EHC 63 (1986)、IPCS PIM G001 (2009))。 (2) ヒトの単回摂取において、呼吸器系及び眼の症状は、ばく露後に最初に現れると予想される。呼吸器への影響としては、気管支収縮、分泌腺の活動性亢進、肺水腫などがある (IPCS PIM G001 (2009))。 (3) 本物質を含むスプレーを吸入した人は、有機リン中毒を発症した。入院時には、腹部の痙攣、吐き気、嘔吐、下痢があり、翌日には倦怠感、唾液分泌、呼吸困難、両脚の激しい振戦及び脱力感を示した (Patty (6th, 2012))。 (4) 最も頻繁に現れる症状は、頭痛、疲労、めまい、吐き気、発汗、かすみ目、胸の圧迫感、腹部の痙攣、嘔吐、下痢である。症状が進行した場合、呼吸困難、振戦、痙攣、虚脱、昏睡、肺水腫及び呼吸不全が続く。中毒が進行するほど、コリンエステラーゼ阻害の典型的な兆候がはっきりする (HSDB (Access on May 2020))。 (5) 本物質を経口摂取した女性が3日後に球麻痺 (bulbar palsy)、近位筋 (proximal muscle) の脱力と呼吸抑制を生じた (HSDB (Access on May 2020))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1) より、ヒトにおいて神経系への影響がみられるとの情報があり、(2) より、実験動物において区分1の用量で神経系への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (神経系) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質を含むスプレーを蚊の駆除を目的に自宅で2~3週間使用した結果、吸入ばく露による有機リン酸塩中毒を発症した例が報告されている。入院時の主訴は腹部の痙攣、吐き気、嘔吐、下痢で、翌日には発汗、流涎、呼吸困難、両足の粗大振戦、全身の脱力がみられた。血漿中及び赤血球コリンエステラーゼ (ChE) 活性は不検出であった。6日目に典型的な中間期症候群である呼吸麻痺が出現し、5日間の人工呼吸器による補助が必要となったが、22日目に退院した (ACGIH (7th, 2002))。 (2) ラットの90日間経口投与試験では、0.04 mg/kg (区分1の範囲) 以上で血漿ChE活性、血球及び脳アセチルコリンエステラーゼ阻害がみられたとの報告がある。また、複数のラットの2年間混餌投与試験で、1.25~5 mg/kg (区分1の範囲) 以上でコリン性の毒性所見や振戦がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2007))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害クラスの内容に変更はない。