急性毒性
経口
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、> 3,800 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) の報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
GHS分類: 区分外 ウサギのLD50値として、> 7,940 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、BUA 237 (2000)) の2件の報告に基づき区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお。ラットのLC50値 (4時間) として、> 1,270 mg/m3 (雌雄不明) (BUA 237 (2000)) の報告があるが、この値のみでは区分を特定できないため、分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分外 ウサギを用いた試験 (PATTY (6th, 2012))、ヒトのパッチテスト (PATTY (6th, 2012)) において刺激性は認められなかったことから、区分外とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分外 ウサギを用いた試験において刺激性は認められなかったことから (PATTY (6th, 2012))、区分外とした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 区分1 モルモットを用いたマキシマイゼーション法、ビューラー法で陽性 (ECETOC (1999)、PATTY (6th, 2012))、マウスのLLNA法で陽性 (ECETOC (1999)) であった。また、ヒトでも接触皮膚炎や皮膚感作性の発生が報告されている (ECETOC (1999)、PATTY (6th, 2012)) ことから、区分1とした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの優性致死試験、小核試験、ラット肝臓の不定期DNA合成試験で陰性 (EPA RED (1994)、PATTY (6th, 2012))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性、陰性の結果、染色体異常試験で陽性、姉妹染色分体交換試験で陰性である (EPA RED (1994)、NTP TR332 (1988)、PATTY (6th, 2012))。
発がん性
GHS分類: 区分1B IARCは最近本物質をグループ2Aに分類したと予告公表したが、モノグラフ自体は2016年6月現在未公表のため、ヒトの情報など詳細は不明である (IARC 115 (in prep., Access on June 2016))。ただし、実験動物では本物質をラット、又はマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験において、ラットで用量相関性を示した腫瘍性変化として、下垂体腺腫 (雌)、包皮腺の腺腫とがんの合計頻度 (雄)、副腎の良性及び悪性の褐色細胞腫の合計 (雄) 頻度の増加などが、マウスでは肝細胞の腺腫とがんの合計頻度の増加が雄低用量群に認められた (NTP TR332 (1988)、EPA RED (1994))。既存分類結果としては、EPAがグループC (possible human carcinogen: 区分2相当) に分類した経緯がある (EPA RED (1994))。以上、実験動物では2種で陽性の結果が得られており、IARCの予告リスト結果も踏まえ、本項は区分1Bとした。
生殖毒性
GHS分類: 区分外 ラットに経口 (混餌) 投与した2世代生殖毒性試験で親動物に一般毒性影響 (体重増加抑制、腎臓重量増加、腎臓の褐色色素沈着、好塩基性尿細管の増加など) がみられる用量 (695~783 mg/kg/day 以上) でも生殖能への影響はみられなかった (EPA RED (1994)、PATTY (6th, 2012))。また、ラットを用いた反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験では、1,000 mg/kg/dayまで強制経口投与したが、親動物、児動物ともに生殖発生影響はみられなかった (経済産業省による安全性試験結果 (2007))。一方、妊娠ラット、又は妊娠ウサギの器官形成期 (ラット: 妊娠6~15日、ウサギ: 妊娠6~18日) に強制経口投与した発生毒性試験において、ウサギの試験では300 mg/kg/dayまで母動物、胎児ともに投与による影響はみられず、ラットの試験では母動物に体重増加抑制、摂餌量減少がみられる 1,800 mg/kg/day で着床後胚損失の増加がみられたとの記述がある (EPA RED (1994)) が、不確かな所見で毒性学的意義はないと報告されている (PATTY (6th, 2012))。 以上、限度量まで投与しても受胎能、及び児動物への影響はなく、妊娠動物へのばく露によっても明確な発生毒性影響は報告されていない。よって、本項は区分外とした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 分類できない ヒトについて関連する情報はない。 なお、実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による13週間反復投与毒性試験において、区分2を超える用量である 3,000 mg/kg/dayで腎臓の遠位曲尿細管上皮の壊死の報告 (PATTY (6th, 2012))、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験において、区分2を超える用量の1,000 mg/kg/day (90日間換算値: 466.7 mg/kg/day) で肝臓への影響 (相対重量増加、肝臓の小葉中心性肝細胞肥大、γ-GTPの高値) の報告 (経済産業省による安全性試験結果 (2007))、ラットを用いた強制経口投与による2年間反復投与毒性試験において区分2を超える用量である 375 mg/kg/day以上で腎臓への影響 (腎盂上皮の過形成、尿細管上皮の限局性過形成)の報告、マウスを用いた強制経口投与による13週間反復投与毒性試験において、区分2を超える用量である 375 mg/kg/day (90日間換算値:271 mg/kg/day) で嗜眠や 750 mg/kg/day (90日間換算値:542 mg/kg/day) で神経系への影響 (間代性てんかん発作、流涙、流涎) の報告 (NTP TR332 (1988)) がある。 以上のように、肝臓、腎臓、神経系に影響がみられたものの区分2のガイダンス値を超える用量でみられているため分類できないとした。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。