急性毒性
経口
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。
【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 15 mg/kg (ACGIH (7th, 2009)、JECFA 20 (1986)、MOE初期評価第12巻 (2014)、産衛学会許容濃度提案理由書 (2018)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012))
(2) ラットのLD50: 17 mg/kg (JECFA 20 (1986))
経皮
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分1とした。
【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 4.2 mg (GESTIS (Access on May 2020))
(2) ウサギのLD50: 13 mg/kg (ACGIH (7th, 2009)、産衛学会許容濃度提案理由書 (2018)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014)、HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012))
(3) ラットのLD50: 12.5 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
(4) ラットのLD50: 13 mg/kg (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014))
吸入: ガス
【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (280,285 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 58 ppm (産衛学会許容濃度提案理由書 (2018)、US AEGL (2010))
(2) ラットのLC50 (8時間): 15 ppm (4時間換算値: 21 ppm) (ACGIH (7th, 2009)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014))
(3) 本物質の蒸気圧: 213 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 280,285 ppm)
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分1とした。
【根拠データ】
(1) 本物質は腐食性を示し、皮膚に付くと発赤や皮膚熱傷、水疱を生じ、眼に入ると発赤や痛み、重度の熱傷を生じる (MOE初期評価第12巻 (2014))。
(2) 本物質のウサギを用いた試験で、皮膚では適用 1.5時間以内に壊死を生じ、眼では角膜の腐食を生じる (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014)、REACH登録情報 (Access on August 2020))。
(3) 本物質による皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害又は腎障害は、労働基準法施行規則別表第一の二に掲げる業務上の疾病として定められている (労働省告示第三十三号 (1996))。
(4) 本物質は皮膚及び粘膜に対し強い刺激性~腐食性を示す (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))。
【参考データ等】
(5)EU-CLP分類でSkin Corr. 1B (H314) に分類されている (EU CLP分類 (Access on August 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】
(1)~(5) より、区分1とした。
【根拠データ】
(1) 本物質は腐食性を示し、皮膚に付くと発赤や皮膚熱傷、水疱を生じ、眼に入ると発赤や痛み、重度の熱傷を生じる (MOE初期評価第12巻 (2014))。
(2) 本物質のウサギを用いた試験で、皮膚では適用 1.5時間以内に壊死を生じ、眼では角膜の腐食を生じる (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014)、REACH登録情報 (Access on August 2020))。
(3) 本物質による皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害又は腎障害は、労働基準法施行規則別表第一の二に掲げる業務上の疾病として定められている (労働省告示第三十三号 (1996))。
(4) 本物質は皮膚及び粘膜に対し強い刺激性~腐食性を示す (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))。
(5) 本物質は皮膚腐食性 (区分1) に区分されている。
呼吸器感作性
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】
(1)、(2) の記載はあるが、(1) は急性ばく露による所見であり、感作性との判断は困難であり、(2) は区分に十分なデータではなiいことから、分類できないとした。
【参考データ等】
(1) 本物質への職業ばく露は、皮膚感作性及び難治性の皮膚炎を引き起こす (US AEGL (2010))。
(2) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (BASF法) で感作を示さなかったが、ヒトに対して接触過敏症を発症する可能性が指摘されている (GESTIS (Access on May 2020))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1Bとした。
【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスへ腹腔内投与した優性致死試験及びラットの骨髄細胞及び末梢血を用いた小核試験において陽性の報告がある (IARC 71 (1999)、MOE初期評価第12巻 (2014)、産衛学会許容濃度提案理由書 (2018)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、ヒトのWI-36細胞及び白血球を用いた染色体異常試験、哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陽性の結果が報告されている(同上)。
【参考データ等】
(3) 0.5 ppm未満の本物質に平均 8 年間ばく露された労働者では、白血球の染色体異常に有意な増加はみられなかったとの報告がある (US AEGL (2010))。
(4) EU CLP分類でMuta. 1Bに分類されている (EU CLP分類 (Access on April 2020))。
発がん性
【分類根拠】
利用可能な本物質へのばく露に関するヒトを対象とした報告はない。(1)~(3) より区分2とした。
【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 71 (1999))、産衛学会で第2群B (産衛学会許容濃度提案理由書 (2018))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2009))、MAK (DFG) で2 (DFG List of MAK and BAT Values (2019))、EU CLP分類でCarc.1B (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。
(2) 雌雄のマウスに本物質を78週間経口投与 (強制+混餌) した発がん性試験において、雌雄で肝細胞がん及び肺腫瘍の発生率の有意な増加が認められた (産衛学会許容濃度提案理由書 (2018)、MOE初期評価書第12巻 (2014))。
(3) 雌雄のラットに本物質を皮下注射した試験では、雌雄の注射部位に肉腫が、雄に移行上皮がんがみられた (産衛学会許容濃度提案理由書 (2018)、MOE初期評価書第12巻 (2014))。
生殖毒性
【分類根拠】
(1)、(2) より、母動物毒性、胎児毒性の程度等不明であり、ガイダンスに従えば区分2である。また、(3) を考慮し区分2とした。
【根拠データ】
(1) 妊娠ラットに10 mg/m3の濃度を20日間吸入ばく露 (ばく露時間不明) した試験により、母動物で体重増加の抑制、妊娠率の低下がみられ、胎児で血腫の増加がみられた (MOE初期評価第12巻 (2014)、産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。
(2) 雌ラットの妊娠5~15日に強制経口投与 (用量: 1.04又は2.6 mg/kg/day ) した発生毒性試験において、2.6 mg/kg/day 群で母動物に明瞭な体重減少と膣からの出血を認めた。また、同用量で生存胎児数減少、骨格系奇形の発生率増加、低体重がみられた (MOE初期評価第12巻 (2014))。
(3) 日本産衛学会では、生殖毒性物質第3群 (ヒトに対する生殖毒性の疑いがある物質) としている (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。
【参考データ等】
(4) マウスを用いた腹腔内投与による優性致死試験において、陽性との報告がある (IARC 71 (1999)、MOE初期評価第12巻 (2014)、産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。