急性毒性
経口
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 9,590 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))
(2) ラットのLD50: > 9,590 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
(3) ラットのLD50: > 10,000 mg/kg (EHC 148 (1993)、JMPR (1995)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012))
経皮
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 10,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))
(2) ウサギのLD50: > 10,000 mg/kg (JMPR (1995)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))
【参考データ等】
(3) ラットのLD50: > 1 g/kg (> 1,000 mg/kg) (HSDB (Access on May 2020))
吸入: ガス
【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】
(1)、(2) からは区分を特定できず、分類できないとした
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (5.8E-008 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): > 2 mg/L (ACGIH (7th, 2001)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012))
(2) ラットのLC50 (4時間): > 4 mg/L (EHC 148 (1993))
(3) 本物質の蒸気圧: 3.7E-009 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 5.8E-008 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】
(1)~(4) の記載はあるが、データ不足のため分類できないとした。旧分類はラットのデータを基に決定されており、新たに得られたデータも区分の特定に十分なデータではないため、分類結果を変更した。
【参考データ等】
(1) モルモットの皮膚に40%ペーストを適用した皮膚刺激性試験で刺激はほとんどみられなかった (ACGIH (7th, 2014))。
(2) ウサギの皮膚に本物質 (5 mg/cm2、通常の適用面積約 6cm2では30 mgに相当) を適用した皮膚刺激性試験において軽度刺激物と報告されている (EHC 148 (1993)、JMPR (1995))。
(3) EU-CLP分類でSkin Irrit. 2 (H315) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。
(4) 本物質の水懸濁液のウサギ及びモルモットの皮膚への適用は明白な刺激性を示さない (Patty (6th, 2012))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】
(1)~(4) の記載はあるが、データ不足により分類できないとした。
【参考データ等】
(1) 本物質はヒトに眼刺激性を示す (ACGIH (7th, 2014))。
(2) ウサギの眼に本物質 (5 mg) を適用した眼刺激性試験において軽度刺激物と報告されている (EHC 148 (1993)、JMPR (1995))。
(3) 本物質のウサギの眼への適用は一過性軽度の結膜刺激性を示す (Patty (6th, 2012))。
(4) 本物質にばく露された作業者に眼の刺激と接触皮膚炎が生じたとの報告がある(ACGIH (7th, 2014))。
呼吸器感作性
【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】
(1)~(5) より、区分1Aとした。新しいデータが得られたことから細区分を実施した。
【根拠データ】
(1) 本物質は産衛学会 感作性分類 皮膚第2群に指定されている (産衛学会感作分類基準 (暫定) 提案理由書 (2018))。
(2) 本物質はモルモット及びヒトに皮膚感作性を示す (ACGIH (7th, 2014))。
(3) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) で陽性となり、陽性率は100%と報告されている (EHC 148 (1993)、JMPR (1995)、MAK (DFG) (2015))。
(4) 本物質にばく露された作業者において感作性の報告がある (MAK (DFG) (2015))。
(5) 本物質にばく露された作業者に眼の刺激と接触皮膚炎が生じたとの報告がある(ACGIH (7th, 2014))。
【参考データ等】
(6) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317)に分類されている(EU CLP分類 (Access on July 2020))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1Bとした。
【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラットの生殖細胞を用いた優性致死試験で陰性の報告が複数あるが、本物質を経口投与した雌ラットの卵母細胞において用量依存的な異数性頻度の増加がみられたとの報告がある。また、ラット又はマウスを用いた染色体異常試験においては、胚細胞で陽性、生殖細胞で陰性、骨髄細胞で陽性及び陰性の報告がある。ラット又はマウスの骨髄細胞を用いる小核試験で陽性の結果がある (EHC 148 (1993)、MAK (DFG) (2015)、JMPR (1995))。
(2) in vitroでは、ヒトのリンパ球を用いた染色体異常試験において弱陽性及び陰性の結果や、異数性及び倍数性の増加が報告されている。ヒトのリンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験において弱い陽性の結果がある。また、細菌の復帰突然変異試験で陽性及び陰性、ほ乳類の培養細胞を用いた染色体異常試験で陽性、遺伝子突然変異で陰性の結果が報告されている (同上)。
【参考データ等】
(3) EU CLP分類でMuta. 2に分類されている (EU CLP分類 (Access on April 2020))。
(4) ドイツMAKにおいてGerm cell mutagenicity (2005) Category 3Aに分類されている (MAK (DFG) (2015))。
(5) 本物質は様々な哺乳類の雄性生殖器に有害な影響を及ぼすことが知られておりセルトリ細胞だけでなく、生殖細胞自体も影響を受ける。これは代謝物カルベンダジムの影響と考えられる (MAK (DFG) (2015))。
発がん性
【分類根拠】
利用可能なヒトを対象とした報告はない。(1)、(2) より区分2とした。最新の既存分類に従い分類結果を変更した。
【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2014))、EPAでGroup C (Possible Human Carcinogen) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on September 2020):2000年分類) に分類されている。
(2) 雌雄のラット及びマウスに本物質を2年間混餌投与した発がん性試験において、ラットでは投与に関連した腫瘍の発生は認められなかった。マウスの雌では、肝細胞腺腫及びがんの発生率の用量依存的な増加が、マウスの雄では最高投与量群以外の投与群で肝細胞腺腫及びがんの発生率の有意な増加がみられた (ACGIH (7th, 2014))。
【参考データ等】
(3) 本物質の主要代謝物であるカルベンダジムをマウスに2年間混餌投与した試験では、肝細胞がんと肝細胞腺腫及びがんの合計の発生率の有意な増加がみられた (ACGIH (7th, 2014))。
生殖毒性
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分1Bとした。
【根拠データ】
(1) 産衛学会許容濃度提案理由書 (2018) において、疫学研究による十分な証拠が示されているとは言えないが、動物実験により、生殖毒性を示す証拠が複数示されていることから、生殖毒性分類第2群に分類されている。
(2) 雌ラットの妊娠7~21日に強制経口投与した発生毒性試験において、大脳及び全身の奇形が発生し、タンパク質欠乏症食で飼育した場合、水頭症 (69.4%)、髄膜瘤 (8.2%)、脳ヘルニア (14.3%)、脳脱出 (44.9%)、無脳症 (14.3%)、脳梁発育不全 (26.5%)、脳室周囲の壊死 (26.5%)、脳室周囲の細胞異常増殖 (55.1%)がみられている (産衛学会許容濃度提案理由書 (2018) )。
(3) 雌ラットの妊娠7~21日に強制経口投与した発生毒性試験において、眼及び大脳の奇形がタンパク質の不十分な飼料で増加した。眼の奇形として網膜形成異常 (網膜細胞や網膜の陥入のロゼッタ形成を伴う)、白内障、小眼球症及び無眼球症がみられた (産衛学会許容濃度提案理由書 (2018) )。
【参考データ等】
(4) EU-CLP分類でRepr.1Bに分類されている(EU CLP分類 (Access on July 2020))。
(5) ラットの単回経口投与試験 及びイヌの単回吸入ばく露試験 において、生殖上皮の壊死及び精子形成不全を伴う精巣の変性が観察された (JMPR (1995))。
(6) イヌを用いた2年間混餌投与毒性試験において、精巣変性(精巣重量の減少、精子の不在及び精子巨細胞)がみられた (JMPR (1995)、EHC 148 (1993))。