安全データシート

テトラクロロイソフタロニトリル

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: テトラクロロイソフタロニトリル
  • CB番号: CB4132626
  • CAS: 1897-45-6
  • EINECS番号: 217-588-1
  • 同義語: クロロタロニル,テトラクロロイソフタロニトリル

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 農薬 (殺菌剤) (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分2 (腎臓)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分3 (気道刺激性)
生殖毒性   追加区分: 授乳に対する又は授乳を介した影響
発がん性   区分2
皮膚感作性   区分1A
呼吸器感作性   区分1A
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2A
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)   区分2
分類実施日(環境有害性)
令和元年度(2019年度)、政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性
水生環境有害性 (長期間)   区分1
水生環境有害性 (急性)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS05GHS06GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H410 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性。
H351 発がんのおそれの疑い。
H335 呼吸器への刺激のおそれ。
H330 吸入すると生命に危険。
H318 重篤な眼の損傷。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
注意書き
安全対策
P284 (換気が不十分な場合)呼吸用保護具を着用すること。
P280 保護手袋/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
応急措置
P391 漏出物を回収すること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念が ある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P305 + P351 + P338 + P310 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。直ちに医師に連絡すること。
P304 + P340 + P310 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 直ちに医師に連絡すること。
P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水で洗うこと。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
P501 残余内容物・容器等は産業廃棄物として適正に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Tetrachloroisophthalodinitrile
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C8Cl4N2
  • 分子量: 265.91 g/mol
  • CAS番号: 1897-45-6
  • EC番号: 217-588-1
  • 化審法官報公示番号: 3-1805
  • 安衛法官報公示番号: 4-(7)-539

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
医師に相談する。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸い込んだ場合、新鮮な空気の場所に移す。 呼吸していない場合には、人工呼吸を施す。 医師に相談する。
皮膚に付着した場合
石けんと多量の水で洗い流す。 直ちに被災者を病院に連れて行く。 医師に相談する。
眼に入った場合
多量の水で15分以上よく洗浄し、医師の診察を受けること。
飲み込んだ場合
意識がない場合、口から絶対に何も与えないこと。 口を水ですすぐ。 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

消火剤
水噴霧、耐アルコール泡消火剤、粉末消火剤、二酸化炭素を使用すること。

5.2 特有の危険有害性

可燃性。
炭素酸化物, 窒素酸化物(NOx), 塩化水素ガス

5.3 消防士へのアドバイス

消火活動時には必要に応じて 自給式呼吸装置を装着する。

5.4 詳細情報

データなし

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

呼吸保護(服)を着用。 粉塵の発生を避ける。 蒸気、ミスト、またはガスの呼吸を避ける。 十分な換気を確保する。 安全な場所に避難する。 粉塵を吸い込まないよう留意。個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環境への放出は必ず避けなければならない。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

粉塵を発生させないように留意して回収し、廃棄する。 掃いてシャベルですくいとる。 廃棄に備え適切な容器に入れて蓋をしておく。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

皮膚や眼への接触を避けること。 粉塵やエアゾルを発生させない。粉塵が発生する場所では、換気を適切に行う。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
許容濃度が設定されている物質を含有していない。

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
皮膚、眼、そして衣服との接触を避ける。 休憩前や製品取扱い直後には手を洗う。
保護具
眼/顔面の保護
顔面シールドおよび保護メガネ NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規
格で試験され、認められた眼の保護具を使用する。
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
化学防護服, 特定の作業場に存在する危険物質の濃度および量に応じて、保護装置のタイプを選
択しなければならない。
呼吸用保護具
リスクアセスメントによりろ過式呼吸用保護具が適切であると示されている場所では、工学的
制御のバックアップとして、N100型(US)またはP3型(EN 143)呼吸用保護具カートリッジ
付き全面形呼吸用保護具を使用する。呼吸用保護具が唯一の保護手段である場合、全面形送気
マスクを使用する。 NIOSH(US)またはCEN(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、
認められた呼吸用保護具および部品を使用する。
環境暴露の制御
安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環
境への放出は必ず避けなければならない。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い
無臭

融点/凝固点

250~251℃ (ICSC (2009))

沸点、初留点及び沸騰範囲

350℃ (ICSC (2009))

可燃性

不燃性 (GESTIS (Access on June 2020)

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

該当しない

引火点

該当しない

自然発火点

該当しない

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

該当しない

溶解度

水: 0.81 mg/L (25℃) (HSDB (Access on June 2020)) ベンゼンに可溶 (HSDB (Access on June 2020))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 3.05 (ICSC (2009))

蒸気圧

5.7E-007 mmHg (25℃) (HSDB (Access on June 2020))

密度及び/又は相対密度

1.8 (水=1) (ICSC (2009))

相対ガス密度

該当しない

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

推奨保管条件下では安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

データなし

10.5 混触危険物質

シアン化物

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照
その他の分解生成物 - データなし
有害な分解生成物が火があるとき生成される。 - 炭素酸化物, 窒素酸化物(NOx), 塩化水素ガス

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(7) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 5,000 mg/kg (MAK (DFG) vol.6 (1994)) (2) ラットのLD50: 10,000 mg/kg (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、GESTIS (Access on June 2020)) (3) ラットのLD50: 15,000 mg/kg (MAK (DFG) vol.6 (1994)、農薬工業会「食品衛生研究」第51巻第11号 (2001)) (4) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2018)) (5) ラットのLD50: 雄: > 10,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2018)) (6) ラットのLD50: > 10,000 mg/kg (Canada Pesticides (2011)、EHC 183 (1996)、EPA Pesticides RED (1999)、食安委 農薬評価書 (2018)、HSDB (Access on June 2020)) (7) ラットのLD50: > 15,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2018))
経皮
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,500 mg/kg (MAK (DFG) vol.6 (1994)、HSDB (Access on June 2020)) (2) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2018)) (3) ラットのLD50: > 10,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2018)) (4) ウサギのLD50: > 10,000 mg/kg (EHC 183 (1996)、MAK(DFG) vol.6 (1994)、食安委 農薬評価書 (2018)、GESTIS (Access on June 2020))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分2とした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (8.2E-006 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): 0.09 mg/L (MAK (DFG) vol.6 (1994)) (2) ラットのLC50 (4時間): 雌: 0.0925 mg/L、雄: 0.094 mg/L (食安委 農薬評価書 (2018)) (3) ラットのLC50 (4時間): 0.10 mg/L (EHC 183 (1996)、HSDB (Access on June 2020)) (4) ラットのLC50 (4時間): 0.110 mg/L (MAK (DFG) vol.6 (1994)) (5) 本物質の蒸気圧: 5.7E-007 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 8.2E-006 mg/L)

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質のウサギを用いた4時間半閉塞適用による皮膚刺激性試験で、皮膚反応は観察されず、非刺激物と結論されている (JMPR Addendum (2019))。 (2) 短期間のばく露で眼、皮膚、気道を刺激し、急性症状として、眼の痛み、発赤、かすみ眼、皮膚の発赤が現れる (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。 (3) 皮膚刺激性試験において、適用72時間後に軽度の紅斑を示すが、適用4日目までに消失した (EPA Pesticides RED (1999))。 (4) 本物質ウサギにおいて皮膚刺激性は軽度だが、眼に対しては重度の刺激性を示し、角膜混濁は2週間後まで持続する (MAK (DFG) vol.6 (1994)、食安委 農薬評価書 (2018))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)~(4) より、区分2Aとした。
【根拠データ】 (1) 短期間のばく露で眼、皮膚、気道を刺激し、急性症状として、眼の痛み、発赤、かすみ眼、皮膚の発赤が現れる (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。 (2) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験 (改変ドレイズ法) で、眼刺激性を示し、角膜混濁は適用14日目まで持続した (EHC 183 (1996))。 (3) 本物質 (純度 96%) のウサギを用いた眼刺激性試験で、重度の刺激性を示し、持続性の角膜混濁、虹彩への影響、結膜刺激を示す。また、他の試験では刺激性、角膜混濁を示し、腐食性物質とされている (EPA Pesticides RED (1999))。 (4) 本物質はウサギにおいて皮膚刺激性は軽度だが、眼に対しては重度の刺激性を示し、角膜混濁は2週間後まで持続する (MAK (DFG) vol.6 (1994)、食安委 農薬評価書 (2018))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 (1) より、区分1Aとした。産衛学会 感作性分類 気道第2 群に分類されていることから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質は産衛学会 感作性分類 気道第2 群、皮膚第1 群に分類されている (産衛学会感作性物質提案理由書 (2012))。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1Aとした。産衛学会 感作性分類 皮膚第1 群に分類されていることから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質は産衛学会 感作性分類 気道第2 群、皮膚第1 群に分類されている (産衛学会感作性物質提案理由書 (2012))。 (2) 本物質の製造工場で労働者103人のうち19人で接触性皮膚炎が現れ、何らかの皮膚の異常を訴える割合が本物質を扱わない労働者では18.5%であるのに対して、本物質を扱う労働者では60%であったが、工場の衛生環境を改善した結果、20%程度に低下した。また、本物質0.5%を含んだ木材の防腐剤を使用する木製の窓枠生産工場の労働者20人中14人で、まぶたと顔の他の部位で痒み、紅斑、浮腫、腕や手で発疹を含む皮膚炎がみられ、皮膚炎を起こした14人に本物質0.01%のアセトン溶液を塗布してパッチテストした結果、7人で陽性反応がみられた (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。
【参考データ等】 (3) 本物質の長期間または反復ばく露では皮膚炎、皮膚の感作を起こす可能性がある (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。 (4) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) で強い感作性との報告、明白な結論が得られていない報告がある (EHC 183 (1996))。 (5) 本物質 (純度 96%)は感作性を示さない (EPA Pesticides RED (1999))。 (6) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) で陰性と報告されている (食安委 農薬評価書 (2018) )。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、経口投与によるマウスの優性致死試験、ラット又はハムスターの末梢血を用いた小核試験において陰性の報告がある。マウス又はラットの骨髄細胞を用いた複数の染色体異常試験において陰性の報告があるが、ハムスターの骨髄細胞を用いた染色体異常試験では弱い陽性、equivocal (あいまいな結果)、陰性の報告がある。また、ラットの肝臓を用いたDNA傷害試験において陽性の報告がある (EHC 183 (1996)、食安委 農薬評価書 (2018)、IARC 73 (1999))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告が複数ある。一方、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、姉妹染色分体交換試験、染色体異常試験で陽性及び陰性の報告がある(EHC 183 (1996)、食安委 農薬評価書 (2018)、IARC 73 (1999)、CEBS (Access on June 2020))。 (3) 本物質は生体において問題となる遺伝毒性はないものと考えられるとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2018))。

発がん性

【分類根拠】 (1)~(4) より区分2とした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 73 (1999))、産衛学会で第2群B (産業衛生学雑誌許容濃度等の勧告 (2001年提案))、EPAでL (Likely to be Carcinogenic to Humans) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on September 2020):1997年分類)、EU CLP分類でCarc.2 (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した2つの慢性毒性/発がん性併合試験において、一方の試験では雌雄で前胃の乳頭腫又は扁平上皮がんが、もう一方の試験では、雌雄で尿細管腺腫及び腺がん、前胃の乳頭腫、雌で前胃の扁平上皮がんの発生頻度の増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2018))。 (3) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した発がん性試験において、雌雄でいずれも1例の前胃扁平上皮がんが認められ、雌雄で前胃乳頭腫並びに尿細管腺腫及び腺がんの発生頻度の増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2018))。 (4) マウスに本物質を2年間混餌投与した2つの発がん性試験において、一方の試験では雌で前胃乳頭腫及び扁平上皮がんの合計が、雄で前胃扁平上皮がん並びに尿細管腺腫及び腺がんの発生頻度の増加が認められたが、もう一方の試験では投与により発生頻度の増加した腫瘍性病変は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2018))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1) より、概して親動物の一般毒性用量において、母乳を介した児動物毒性が示唆されることから、「追加区分:授乳に対する又は授乳を介した影響」とした。なお、旧分類の分類根拠であるラット催奇形性試験での初期胚死亡の増加は、(3) のデータと考えられる。この試験は母動物の死亡が多いため参考データとしたことから、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、15,000 ppm (P世代: 雄: 942 mg/kg/day、雌: 967 mg/kg/day;F1世代: 雄: 1,420 mg/kg/day、雌: 1,580 mg/kg/day;F2世代: 雄: 1,400 mg/kg/day、雌: 977 mg/kg/day) 以上の全世代の雌雄親動物で削瘦、円背位、体重増加抑制等がみられ、これらの用量のF1及びF2児動物で斜視、円背位及び体重増加抑制、腎臓の病変等がみられた。1,500 ppm (雄: 110 mg/kg/day、雌: 130 mg/kg/day) 以上のF2雌雄親動物では腎皮質緑色化、盲腸拡張がみられ、この用量でのF3児動物では体重増加抑制、円背位、斜視 (離乳期)、食道及び前胃扁平上皮肥厚、腎尿細管上皮空胞化がみられた。また、親動物毒性がみられない1,500 ppmのF2児動物で体重増加抑制がみられた。児動物での体重増加抑制に着目して、F1及びF2世代の第1産児に対して、15,000 ppm投与群と対照群との間で交叉哺育が実施された。その結果、15,000 ppm投与群の児動物を対照群の雌が哺育した場合には、児動物に体重増加抑制は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2018))。
【参考データ等】 (2) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、親動物では500 ppm以上の投与群の雌雄で前胃扁平上皮細胞過形成、雄で腎尿細管上皮過形成、尿細管肥大、明細胞過形成等、1,500 ppm以上の投与群の雌で腎尿細管上皮過形成、尿細管肥大等が認められ、児動物では3,000 ppm投与群で体重増加抑制が認められた。繁殖能に対する影響は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2018))。 (3) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡 (3/25例)、粘液便、軟便、赤色膣分泌物、体重増加抑制等) がみられる用量 (400 mg/kg/day) で早期吸収胚率上昇 (有意差なし) がみられたが催奇形性はみられていない (食安委 農薬評価書 (2018))。 (4) 雌ウサギの妊娠7~19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡 (1/20例)、体重増加抑制、摂餌量減少) がみられる用量 (20 mg/kg/day) においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2018))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 (1)、(2) より、区分3 (気道刺激性) とした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ヒトの急性症状として、眼の痛み、発赤、かすみ眼、皮膚の発赤、経口摂取により灼熱感、腹痛、吸入により灼熱感がみられる (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。 (2) ラットの単回吸入ばく露試験 (影響がみられた最小用量の記載なし、LD50値 (雄: 0.094 mg/L、雌: 0.0925 mg/L) 付近の区分1の範囲と想定) では、呼吸不全、努力呼吸、喘ぎ、眼、鼻及び口からの過剰分泌、部分的及び完全閉眼、活動低下、湿性ラッセル音並びに乾性ラッセル音がみられた (食安委 農薬評価書 (2018))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)~(7) より、区分2 (腎臓) とした。なお、前胃を中心とする消化管への影響もみられているが、本物質の刺激作用による変化と考えられることから分類根拠としなかった。新たな情報を用いて検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ等】 (1) ラットを用いた90日間の混餌投与試験において、40 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上の雌雄で腎相対重量増加、急性巣状胃炎、近位尿細管上皮過形成、近位尿細管曲部上皮ニュートラルレッド陽性封入体、雄で近位尿細管上皮肥大、腎尿細管基底膜肥厚が報告されている (食安委 農薬評価書 (2018))。 (2) ラットを用いた90日間の混餌投与試験において、10.0 mg/kg/day (区分1の上限) の雌雄で前胃部粘膜の過形成及び角化亢進が、雄で腎絶対及び補正重量増加、近位尿細管上皮肥大及び過形成がみられた (食安委 農薬評価書 (2018))。 (3) マウスを用いた90日間の混餌投与試験において、50 ppm (雄/雌: 8.5/9.8 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雌雄で前胃扁平上皮過形成及び角化亢進が、275 ppm (雄/雌: 47.7/21.4 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雄で近位尿細管曲部上皮過形成、雌で前胃粘膜潰瘍が、750 ppm (雄/雌: 124/141 mg/kg/day、区分2超) の雌でALP増加、腎絶対及び比重量増加、近位尿細管曲部上皮過形成がみられた (食安委 農薬評価書 (2018))。 (4) イヌを用いた混餌投与による2年間慢性毒性試験において、1,500 ppm (雄/雌:45.0/44.1 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雌雄で甲状腺重量増加、雄で甲状腺ろ胞上皮色素沈着、雌で腎近位尿細管曲部上皮細胞肥大、胃炎が報告されている (食安委 農薬評価書 (2018))。 (5) ラットを用いた2年間慢性毒性/発がん性併合試験の結果、60 ppm (雌/雄: 2.7/3.3 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雌雄で前胃上皮過形成及び角化亢進、潰瘍形成、粘膜下線維化及び炎症性細胞が、240 ppm (雌/雄: 10.6/13.9 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雌雄で腎好塩基性皮質尿細管拡張、進行性糸球体腎炎、雄でMCV、ヘモグロビン又は赤血球数の増加、腎比重量増加が、1,200 ppm (雌/雄: 54/70 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で被毛黄色汚れ、雄で尿タンパク濃度上昇、雌で腎重量増加がみられたと報告されている (食安委 農薬評価書 (2018))。 (6) ラットを用いた2年間発がん性試験の結果、40 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上の雌雄で体重増加抑制及び摂餌量減少、食道粘膜過形成及び角化亢進、前胃粘膜上皮過形成及び角化亢進、前胃粘膜下組織炎症及び潰瘍、腺胃潰瘍、十二指腸粘膜肥厚、進行性慢性腎症の重篤化、限局性尿細管上皮過形成、尿細管上皮肥大、尿細管上皮過形成、雄で 腎絶重量増加が80 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上の雄でBUN増加、雌で腎重量増加が、175 mg/kg/day (区分2超) の雌雄で尿の暗黄色化がみられたと報告されている (食安委 農薬評価書 (2018))。 (7) 雄マウスを用いた2年間発がん性試験の結果、40 ppm (5.35 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で前胃粘膜角化亢進及び扁平上皮過形成が、175 ppm (23.2 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で近位尿細管曲部上皮過形成が、750 ppm (99.7 mg/kg/day、区分2の範囲) で腎絶対及び比重量増加、近位尿細管上皮巨大核、腺胃粘膜嚢胞がみられたと報告されている (食安委 農薬評価書 (2018))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性クラスの内容に変更はない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
止水式試験 LC50 - Oncorhynchus mykiss (ニジマス) - 0.012 mg/l - 96 h
備考: (ECOTOX データベース)
止水式試験 LC50 - Ictalurus punctatus(アメリカナマズ/チャネルキャット
フィッシュ) - 0.043 mg/l - 96 h
備考: (ECOTOX データベース)
流水式試験 LC50 - Cyprinus carpio (コイ) - 0.055 mg/l - 96 h
備考: (ECOTOX データベース)
ミジンコ等の水生無脊
止水式試験 EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 0.028 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
備考: (ECOTOX データベース)
藻類に対する毒性
ErC50 - Anabaena flosaquae - 0.094 mg/l - 96 h
備考: (ECOTOX データベース)

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

生物濃縮因子(BCF): 436,690
- 10 μg/l(クロロタロニル)
生体蓄積性 Oncorhynchus mykiss (ニジマス) - 96 h

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
免許を有する廃棄物処理業者に、余剰物で再使用不可の溶液として処理を依頼する。 可燃性溶剤に溶解または混合し、アフターバーナーとスクラバーが備えられた化学焼却炉で焼却する。汚染容器及び包装製品入り容器と同様に処分する。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 2811    IMDG (海上規制): 2811    IATA-DGR (航空規制): 2811

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Toxic solid, organic, n.o.s. (Chlorothalonil)
IMDG (海上規制): TOXIC SOLID, ORGANIC, N.O.S. (Chlorothalonil)
ADR/RID (陸上規制): TOXIC SOLID, ORGANIC, N.O.S. (クロロタロニル)

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

シアン化物

15. 適用法令

労働安全衛生法

-

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【260 テトラクロロイソフタロニトリル】

毒物及び劇物取締法

劇物・除外品目(指定令第2条)【32の116 有機シアン化合物/テトラクロル-メタジシアンベンゼン及びこれを含有する製剤】

化学物質審査規制法

旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号419 テトラクロロイソフタロニトリル(別名クロロタロニル又はTPN)(平成23年4月1日をもって廃止)】 旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)【旧番号209 テトラクロロイソフタロニトリル(別名クロロタロニル又はTPN)(平成23年4月1日をもって廃止)】

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2588 殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2588 その他の殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】

港則法

その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2チ その他の殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】

下水道法

水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4) 【注】規制の概要参照【2 シアン化合物】

水質汚濁防止法

指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)【32 テトラクロロイソフタロニトリル】

土壌汚染対策法

特定有害物質(法第2条第1項、施行令第1条) 【注】規制の概要参照【5 シアン化合物】

廃棄物処理法

特別管理産業廃棄物(法第2条第5項、施行令第2条の4) 【注】規制の概要参照【5 シアン化合物を含有する特定有害産業廃棄物】

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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