急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分3とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 雌: 68~221 mg/kg (HSDB (Access on May 2020)) (2) ラットのLD50: 100 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020)) (3) ラットのLD50: 142 mg/kg (EHC 64 (1986)) (4) ラットのLD50: 雌: 142 mg/kg、雄: 152 mg/kg (JMPR (2004)、EU CLP CLH (2014)、食安委 農薬評価書 (2014)) (5) ラットのLD50: 147 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。 なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (JMPR (2004)、EU CLP CLH (2014)、食安委 農薬評価書 (2014))
【参考データ等】 (2) ウサギのLD50: > 500 mg/kg (EHC 64 (1986)、HSDB (Access on May 2020)) (3) ラットのLD50: > 500 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) 、(2) より、区分2とした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (9.3E-005 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): 雌: 0.858 mg/L、雄: 0.948 mg/L (JMPR (2004)、EU CLP CLH (2014)、食安委 農薬評価書 (2014)) (2) ラットのLC50 (6時間): 0.3 mg/L (4時間換算値: 0.45 mg/L) (HSDB (Access on May 2020)) (3) 本物質の蒸気圧: 7.28E-006 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 9.3E-005 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。旧分類は製剤のデータを基におこなわれていたため、新たに得られた原体のデータを基に分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質 (純度 97.6%) をウサギの皮膚に4時間適用した皮膚刺激性試験で、ごく軽度の紅斑が認められたが適用7日後までに全て消失した (JMPR (2004)、食安委 農薬評価書 (2014))。 (2) 本物質はウサギの眼に対し軽度の刺激性を有し、皮膚に対して刺激性は示さない (HSDB (Access on May 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。旧分類は製剤のデータを基におこなわれていたため、新たに得られた原体のデータを基に分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質 (純度 97.6%) のウサギを用いた眼刺激性試験 (ドレイズ法) で、軽度の結膜発赤が6/6例と結膜浮腫が1/6例に認められたが、適用2日後には消失した。最大平均スコアは適用2時間後では2.3 (最大110)、適用1日後には1、適用2日後には0となった (JMPR (2004)、食安委 農薬評価書 (2014))。 (2) 本物質はウサギの眼に対し軽度の刺激性を有し、皮膚に対して刺激性は示さない (HSDB (Access on May 2020))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1) より、区分1Bとした。新しいデータ (1) が得られたことから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 3%) において陽性 (陽性率 47%) と判定された (JMPR (2004)、EU CLP CLH (2014)、食安委 農薬評価書 (2014))。
【参考データ等】 (2) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317)に分類されている (EU CLP分類 (Access on August 2020))。 (3) 本物質はモルモットに対しては感作性は示さない (HSDB (Access on May 2020))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウス強制経口投与の骨髄細胞による小核試験で陰性、ラット強制経口投与の肝細胞による不定期DNA合成試験で陰性、マウス5日間強制経口投与による優性致死試験で陰性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2014)、EU CLP CLH (2014)、JMPR (2004))。 (2) in vitroでは、細菌を用いる復帰突然変異試験で陰性、ヒトリンパ球細胞を用いた染色体異常試験で陰性、哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陽性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2014)、EU CLP CLH (2014)、JMPR (2004))。
発がん性
【分類根拠】 (1)~(4) より、EPAではLに分類されているが、ラットでは発がん性が認められず、EU CLPでは (4) に基づきCarc.2に分類されていることから、区分2とした。新たな情報源を用いて検討し分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPAでL (Likely to be Carcinogenic to Humans.) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on August 2020):2005年分類)、EU CLP分類でCarc.2 (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を104週間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験では、発がん性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2014))。 (3) 雌雄のマウスに本物質を80週間又は96週間混餌投与した2つの発がん性試験において、雌雄ともに肺腺腫の発生頻度の増加が認められ、雌では有意な増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2014))。 (4) EUは、発がん性分類の根拠について、「マウスにおける肺腺腫の発生率の増加と、これらの肺腺腫とヒトの関連性を否定できるメカニズムデータがないことに基づき、Carc.2とした」としている (CLH Report (2013))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた混餌による2世代繁殖試験において、親動物及び児動物に体重増加抑制等がみられたが、繁殖影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。 (2) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に体重増加抑制及び摂餌量減少がみられる用量で、胎児の低体重及び骨格変異の増加等がみられたが催奇形性はみられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。 (3) 雌ウサギの妊娠6~18日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に顕著な体重増加抑制及び摂餌量減少がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの単回ばく露に関する報告はない。(1)~(3) より区分1 (神経系) とした。新たな情報の採用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットの経口投与試験では、100 mg/kg (区分1の範囲) 以上で流涎、被毛湿潤、活動性の低下、筋痙攣、痩削、不規則呼吸、下痢、背弯姿勢等がみられたとの報告がある (CLH Report (2013))。 (2) ラットの急性神経毒性試験では、経口投与により、40 mg/kg (区分1の範囲) 以上で自発運動量の低下がみられ、110 mg/kg (区分1の範囲) では脳コリンエステラーゼ (ChE) 活性阻害、さらに雌では着地開脚幅減少、尾刺激回避時間延長がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2004))。 (3) ラットの鼻部吸入ばく露試験では、0.414 mg/L (エアロゾル、区分1の範囲) 以上で体重減少、活動性低下、振戦、被毛湿潤、円背位、色素涙、立毛、鼻周囲の着色等がみられ、0.747 mg/L (エアロゾル、区分1の範囲) 以上では緩徐呼吸、不規則呼吸、流涎がみられたとの報告がある (CLH Report (2013))。
【参考データ等】 (4) 本物質の50%分散性粉末製剤を用いたラットの吸入ばく露試験では、20 mg/L (粉じん、区分2超の範囲) で血漿及び赤血球ChEの低下がみられたとの報告がある (JMPR (1976))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの反復ばく露に関する報告はない。実験動物では、(1)~(4) より区分2の用量で神経系、血液系、肝臓、腎臓への影響がみられていることから、区分2 (神経系、血液系、肝臓、腎臓) とした。情報の再検討により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットの12週間混餌投与試験では、250 ppm (雄/雌: 12.9/15.3 mg/kg/day相当、いずれも区分2の範囲) 以上で網状赤血球及び血漿コリンエステラーゼ (ChE) 活性の減少がみられ、750 ppm (雄/雌: 38.8/47.1 mg/kg/day相当、いずれも区分2の範囲) でヘモグロビン濃度及びリンパ球数の減少がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2014)、CLH Report (2013)、JMPR (2004))。 (2) ラットの104週間混餌投与試験では、250 ppm (雄/雌: 12.3/15.6 mg/kg/day相当、いずれも区分2の範囲) 以上でコレステロール及びトリグリセリドの増加、腎盂移行上皮過形成、雄では腎盂血管拡張、雌ではヘモグロビン濃度及びヘマトクリット値の増加がみられ、750 ppm (雄/雌: 37.3/47.4 mg/kg/day相当、いずれも区分2の範囲) で平均赤血球ヘモグロビン量 (MCH) の増加、雄では平均赤血球容積 (MCV) の増加、副腎皮質空胞変性、肝細胞肥大、明細胞性変異肝細胞巣がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2014)、EU CLP CLH (2014)、JMPR (2004))。 (3) マウスの80週間混餌投与試験では、200 ppm (雄/雌: 26.6/37.1 mg/kg/day相当、いずれも区分2の範囲) 以上で赤血球数及び平均赤血球ヘモグロビン濃度 (MCHC) の増加、MCV及びMCHの減少、雄ではさらに腎盂単核細胞浸潤がみられたとの報告がある (同上)。 (4) イヌの90日間混餌投与試験では、10 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で循環赤芽球の増加、雌ではさらに大球性貧血、25 mg/kg/day (区分2の範囲) で赤血球ChE活性低下、平均赤血球直径の増加がみられ、重篤な貧血を発症した例では脾臓及びリンパ節に髄外造血がみとめられた (食安委 農薬評価書 (2014)、CLH Report (2013)、JMPR (2004))。 (5) イヌの1年間経口投与試験では、35 mg/kg/day (区分2の範囲) を1週間投与した後2週間の休薬期間を設け、その後25 mg/kg/day (区分2の範囲) を投与した最高投与群で振戦、流涎、不安定歩行、沈静、不規則呼吸、散発的な咳、液状便、アルブミン及び総蛋白の減少、肝ヘモジデリン沈着がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2014)、CLH Report (2013)、JMPR (2004))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害クラスの内容に変更はない。