急性毒性
経口
ラットを用いた経口投与試験のLD50値4,720 mg/kg(Patty(5th, 2001))、9,800 mg/kg(Patty(5th, 2001))のうち、低値で最新のデータ4,720 mg/kgをLD50値として採用する。このLD50値は国連GHS急性毒性区分5に該当するが、国内では不採用区分につき、区分外とした。
経皮
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値 >2,600 mg/kg(Patty(5th, 2001))、>3.56 mL/kg(2,937 mg/kg) (Patty(5th, 2001))より、区分外とした。
吸入
吸入(ミスト): 本物質の飽和蒸気圧濃度(20℃)は14.8 ppm(0.096 mg/L)である。ラット、マウス、モルモットを用いた6時間吸入ばく露試験において、95 ppmで死亡が確認されなかった(Patty(5th, 2001))ことから、ミスト基準を適用する。4時間換算値は0.93 mg/Lより、LC50値は>0.93 mg/Lと推定されるが、区分を特定できないので分類できない。
吸入(蒸気): データがないので分類できない。
吸入(ガス): GHS定義上の液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
皮膚腐食性・刺激性
ウサギを用いた24時間皮膚刺激性試験で、「Moderately irritating」(Patty(5th, 2001))、「Severely irritating」(Patty(5th, 2001)、HSDB(2006))と記述されているが、いずれも4時間より厳しい条件であるため分類できない。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギを用いた眼刺激性試験で、「severe eye irritant」(Patty(5th, 2001))との記述があるが、一次文献(Am. Ind. Hyg. Assoc. J. 34 (1974))を調査したところ、「24時間後のDraizeスコアは28で、7日後には回復する」旨、記述されている。以上より、区分2とした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:モルモットを用いたDraize試験で「not sensitizing」(IUCLID(2000))と記述されているが、List2の情報源であり、他にデータがないため分類できない。
呼吸器感作性:データがないので分類できない。
生殖細胞変異原性
体細胞in vitro変異原性試験(CHL V79細胞を用いた染色体異常試験(OECD TG473、GLP))で「陰性」(IUCLID(2000)、BUA 149 (1996))の記述があるが、in vivo試験のデータがないため分類できない。
発がん性
主要な国際的評価機関による評価がなされておらず、データもないので分類できない。
生殖毒性
妊娠雌ラットを用いた経口投与試験で、「母動物の鼻汁や流涎、中枢神経系の低下の兆候が見られた投与量(1,580 mg/kg)で、子宮及び胎児の重量の低下、胎児の骨化遅延や奇形が認められた」(Patty(5th, 2001))旨の記述があるが、1,580 mg/kgでは死亡例もあることから、母動物の一般毒性の二次的影響である可能性が考えられる。一次文献(Food Chem. Toxicol. 35 (1997))を調査したところ、母動物に毒性が見られない790 mg/kgでは上記の胎児毒性は発現しない旨記述されていたが、母動物に軽度の影響が見られる投与量で胎児毒性が発現するかどうかが確認できず、1,580 mg/kgで胎児にみられた症状は母動物の一般毒性の二次的影響である可能性を否定できないため、分類できない。