安全データシート

ペンタデカフルオロオクタン酸

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: ペンタデカフルオロオクタン酸
  • CB番号: CB4256038
  • CAS: 335-67-1
  • EINECS番号: 206-397-9
  • 同義語: ペルフルオロオクタン酸,パーフルオロオクタン酸

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 半導体用、消火剤、撥水剤、紙の表面処理剤、樹脂改質剤 (NITE調査)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
H27.10.31、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改定版 (ver1.1): JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
健康に対する有害性
急性毒性(経口)   区分4
皮膚腐食性/刺激性   区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分1
発がん性   区分2
生殖毒性   区分1A 追加区分:授乳に対する、又は授乳を介した影響
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分3 (気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (中枢神経系、肝臓)、区分2 (骨髄)
分類実施日(環境有害性)
平成24年。政府向けGHS分類ガイダンス (H22.7版) を使用 GHS改訂4版を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性 (急性)   区分3

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS05GHS07GHS08
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H302 + H332 飲み込んだ場合や吸入した場合は有害。
H314 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷。
H351 発がんのおそれの疑い。
H360 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ。
H362 授乳中の子に害を及ぼすおそれ。
H372 長期にわたる、又は反復暴露による臓器 (肝臓) の障害。
注意書き
安全対策
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P260 粉じんを吸入しないこと。
P263 妊娠中及び授乳期中は接触を避けること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
P301 + P312 + P330 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。口をすすぐこと。
P301 + P330 + P331 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
P304 + P340 + P310 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 直ちに医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
P363 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
保管
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Perfluorocaprylic acid
    Perfluorooctanoic acid
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C8HF15O2
  • 分子量: 414.07 g/mol
  • CAS番号: 335-67-1
  • EC番号: 206-397-9
  • 化審法官報公示番号: 2-2659; 2-1182
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 ただちに眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後は水を飲ませ(多くてもグラス2杯)、嘔吐を避ける(穿孔のリスクあり) 直ちに医師を呼ぶ。中和させようとしないこと。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
フッ化水素
可燃性。
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: いかなる場合も、ほこりを生じさせたり吸い込んだりしないようにすること。触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 慎重に行うこと。適切に廃棄すること。関連エリアを清掃のこと。 ほこりが生じないようにすること。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1C: 可燃性、急性毒性カテゴリー3 / 毒性化合物または慢性効果を引き起こす化合物
保管条件
密閉のこと。 乾燥。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
OEL-M: 0.005 mg/m3 - 日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 密着性の高い安全ゴーグル
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
身体の保護
耐酸性の防護衣類
呼吸用保護具
ほこりが生じた際に必要。
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
白色 (ICSC (2005))
臭い
刺激臭 (GESTIS (2015))
臭いのしきい(閾)値
データなし
pH
2.6(1 g/L) (20℃) (SIDS (2006))

融点・凝固点

52~54℃ (ICSC (2005))

沸点、初留点及び沸騰範囲

189℃ (ICSC (2005))

引火点

不燃性 (ICSC (2005))

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

データなし

燃焼性(固体、気体)

データなし

燃焼又は爆発範囲

不燃性 (NITE総合検索 (2015))

蒸気圧

0.525 mmHg (25℃) (HSDB (2015))

蒸気密度

データなし

比重(相対密度)

データなし

溶解度

水: 不溶 (ICSC (2005))

n-オクタノール/水分配係数

log P = 6.3 (ICSC (2005))

自然発火温度

不燃性 (ICSC (2005))

分解温度

> 300℃ (GESTIS (2015))

粘度(粘性率)

5.72 mPa・s (60℃) (GESTIS (2015))

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

可燃性有機物質及び製剤に概ね該当:微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性が
通常想定される。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

次と激しく反応
強酸化剤
強酸
塩基類

10.4 避けるべき条件

情報なし

10.5 混触危険物質

データなし

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
GHS分類:区分4 ラットのLD50値として、500-1,000 mg/kg (雄)、250-1,000 mg/kg (雌) (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2008)) との2件の報告がある。1件が区分4に該当し、もう1件からは区分を特定できないので、区分4とした。今回の調査で入手した産衛学会許容濃度の提案理由書 (2008) の情報を追加し、区分を見直した。
経皮
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、本物質のアンモニウム塩 (ペルフルオルオクタン酸アンモニウム塩 CAS No.:3825-26-1) のラットのLD50値として、7,000 mg/kg (雄)、> 7,500 mg/kg (雌) (環境省リスク評価第9巻 (2011)、SIDS (2009))、ウサギのLD50値として、> 2,000 mg/kg (SIDS (2009))、4,300 mg/kg (環境省リスク評価第9巻 (2011)、SIDS (2009)) との報告がある。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。本物質のアンモニウム塩 (ペルフルオルオクタン酸アンモニウム塩 CAS No.:3825-26-1) のラットのLC50値 (4時間) として980 mg/m3との報告 (環境省リスク評価第9巻 (2011)、SIDS (2009)) がある。なお、試験は粉塵で行われたとの記載、及び飽和蒸気圧濃度0.0014 mg/LよりもLC50値が大きいので粉じん/ミストとみなした。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

GHS分類: 区分2 具体的な情報は無いが、本物質は皮膚を刺激するとの記載から (環境省リスク評価第9巻 (2011))、区分2とした。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

GHS分類: 区分1 本物質の水溶液は強酸であり (pH2.6、SIDS (2009))、眼に対して強い刺激性を持つとの記載がある (GESTIS (2015)) ことから区分1とした。また、本物質は眼を刺激するとの記載がある (環境省リスク評価第9巻 (2011))。なお、本物質は、EU CLP分類において「Eye Dam. 1 H318」に分類されている (ECHA CL Inventory (2015))。

呼吸器感作性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いたビューラー試験において、本物質の塩 (詳細不明) を適用した結果感作性はみられなかったとの報告がある (GESTIS (2015))。

生殖細胞変異原性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いる小核試験で陰性 (SIDS (2009)、環境省リスク評価第9巻 (2011))、ラットの末梢血赤血球を用いた小核試験では雌で陰性を示したが雄では陽性結果を示したとの報告があるが (NTP DB (2015))、このNTPデータについては評価文書で記載がない。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、ヒトリンパ球の染色体異常試験で陰性であるが、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、ヒトの培養系肝細胞である HepG2の小核試験及びコメットアッセイ (DNA損傷試験) で陽性の結果もある (SIDS (2009)、環境省リスク評価第9巻 (2011)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2008)、NTP DB (2015))。以上より、本物質のin vivoにおける変異原性について明確な知見がなく、分類できないとした。

発がん性

GHS分類: 区分2 米国の本物質製造工場に1947~1997年に1年以上勤務した作業者を対象としたコホート研究では、有意ながんの発生は示されなかった (環境省リスク評価第9巻 (2011))。一方、本物質を使用する米国のフッ素化学工場で 1959-2001年までの作業者の発がん状況を調べた結果、標準化罹患比 (SIR) は膀胱がんで 1.9 (95%CI: 1.15~3.07)、腎臓及び泌尿器がんでSIR 2.3 (95%CI: 1.36~3.65) と有意に高かった。また、SIR に有意差はなかったものの、骨髄性白血病 (SIR 2.02)、喉頭がん (SIR 1.77)、多発性骨髄腫と免疫細胞増殖性疾患 (SIR 1.72)、悪性黒色腫 (SIR 1.3)、精巣がん (SIR 1.46)、脳腫瘍 (SIR 1.2) でも SIR の上昇がみられたと報告されているが、作業者のばく露情報や他の化学物質の使用状況などの記述がなく、本物質との関連は不明であったとされている (環境省リスク評価第9巻 (2011))。 実験動物では本物質のアンモニウム塩 (APFO) を雌雄ラットに2年間混餌投与した発がん性試験で、高用量 (300 ppm: 14.2~16.1 mg/kg/day) 投与で雄に精巣ライデッヒ細胞の腺腫の頻度増加、雌に肝細胞がん、乳腺線維腺腫の頻度増加がみられたが、雌の乳腺腫瘍は同系統の自然発生頻度から本物質ばく露による影響ではないと判断された (SIDS (2009)、環境省リスク評価第9巻 (2011))。また、同系統 (SD) の雄ラットにAPFOを300 ppm (13.6 mg/kg/day) で2年間混餌投与した試験では、肝細胞の腺腫、精巣ライデッヒ細胞の腺腫、膵臓腺房細胞の腺腫、又はがんの発生頻度に有意な増加がみられたと報告された (SIDS (2009)、環境省リスク評価第9巻 (2011))。以上の2試験結果より、本物質ばく露により、ラットでは肝臓腫瘍が雌雄に、雄ではさらに精巣及び膵臓に腫瘍発生の増加を誘発したが、SIDSは作用機序の検討を行った結果、膵臓腫瘍以外の肝臓と精巣の腫瘍はペルオキシソームα受容体を介したペルオキシソーム増殖作用に関連した腫瘍発生によるものであり、膵臓腫瘍の発生機序は不明であると考察した (SIDS (2009))。げっ歯類でのペルオキシソーム増殖作用による腫瘍発生がヒトで生じるかの種間外挿の妥当性については、現時点では結論は出ていないが (ECHA RAC Opinion (2014))、IARCは本物質の発がん性をグループ2Bに分類し (IARC vol. 110, in prep)、EUのCLP分類でも Carc. 2に分類されており (ECHA CL Inventory (2015))、以上を踏まえ、本項は区分2とするのが妥当と判断された。

生殖毒性

GHS分類: 区分1A、追加区分 ヒトでは本物質ばく露と胎児毒性との関連性について、否定的な複数の報告と同時に、以下に記述するように関連性を示唆する報告も複数ある (産衛学会許容濃度の暫定値の提案理由 (2014))。米国ボルチモア市の産婦人科の多施設横断的研究において、臍帯血中本物質 (PFOA) 濃度が高い妊婦では低体重児を出産するリスクの増加傾向がみられたとの報告、デンマークの大規模コホート研究において、妊婦の血清中PFOA 濃度と新生児の出生児体重との間に有意な負の相関が認められたとの報告、英国の母子追跡研究でも、妊婦血清中PFOA濃度と出産児体重の低下に関連性があったとの報告など (産衛学会許容濃度の暫定値の提案理由 (2014)) があり、さらに、中国の報告では母乳中に排泄された本物質と乳児への健康影響との関連性が示唆されたとの記述がある (SIDS (2009))。 実験動物では本物質のアンモニウム塩 (APFO) を用いた試験結果があり、ラットに強制経口投与した2世代生殖毒性試験では、F0、及びF1親動物に影響 (肝臓重量増加、体重及び体重増加量の低下) のみられる用量 (1~10 mg/kg/day) で、F1児動物に体重の低値推移、離乳後早期の死亡率の増加、生成熟遅延がみられた (SIDS (2009)、環境省初期リスク評価第9巻 (2011))。一方、APFOを用いた発生毒性試験では、妊娠ラットを用いた経口、及び吸入経路での器官形成期 (妊娠6~15日) 投与では、顕著な母動物毒性 (死亡例 (3/25 (経口) ; 2/13 (吸入))、嗜眠、体重及び摂餌量低下など) が発現する用量 (経口: 50~150 mg/kg/day、吸入: 10~25 mg/m3) でも、胎児毒性はみられないか、わずかに胎児重量の低値のみで軽微であった (SIDS (2009)、環境省初期リスク評価第9巻 (2011))。 しかし、妊娠マウスの妊娠1~17日にAPFOを強制経口投与した発生毒性試験では、母動物に1 mg/kg/day以上で肝臓重量の増加、5 mg/kg/day以上で体重増加抑制、全胚吸収母動物の増加がみられ、40 mg/kg/dayでは全例で胚/胎児の完全損失を生じた。新生児/胎児における発生・発達毒性影響としては、1 mg/kg/day以上で包皮分離の早期化、3 mg/kg/day以上で離乳後の成長遅延、5 mg/kg/day以上で死産児、新生児死亡の増加、四肢及び尾の欠損胎児の増加、開眼日齢の遅延、20 mg/kg/dayで膣開口の遅延、発情周期の遅延、包皮分類の遅延が認められた。母動物毒性、胎児毒性ともにマウスではラットよりも強く発現し、発生毒性には種差が示唆された (SIDS (2009)、環境省初期リスク評価第9巻 (2011))。さらに、妊娠ラットにAFPOを妊娠4日以降強制経口投与 (3~30 mg/kg/day) し、分娩後も新生児の離乳時まで母動物に投与を継続した妊娠期・授乳期投与試験において、母動物には血清中PFOAだけでなく、乳汁中にPFOAが検出され、用量依存的な乳汁中PFOA濃度の増加が認められた (SIDS (2009))。 既存分類としては、日本産業衛生学会がヒトの疫学研究での胎児毒性、並びに実験動物での胎児毒性及び発達毒性が明らかであるとして、「生殖毒性第1群」に (産衛学会許容濃度の暫定値の提案理由 (2014))、EUのCLP分類で、「Repr1B & Lact.」に分類されている (ECHA CL Inventory (2015))。以上より、日本産業衛生学会の分類結果に基づき、本項の分類は区分1Aとし、授乳影響の区分を追加した。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

GHS分類: 区分3 (気道刺激性、麻酔作用) 本物質は気道刺激性がある (環境省リスク評価第9巻 (2011))。ヒトの吸入ばく露で咳、咽頭痛、経口摂取で腹痛、吐き気、嘔吐の記載がある (環境省リスク評価第9巻 (2011))。実験動物では、18,600 mg/m3 (18.6 mg/L) (区分2超に相当) で鼻汁、乾性ラ音、380 mg/m3 (0.38 mg/L) (区分1相当) 以上の用量で胃の刺激性、ラットの100~2,150 mg/kg (区分1以上の用量に相当) で生存個体において眼瞼下垂、立毛、活動低下、四肢の緊張低下、協調運動失調がみられた (ATSDR (2009))。 以上より、本物質は気道刺激性に加え、麻酔作用があると判断し、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。 新たな情報を加え旧分類を見直した。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

GHS分類: 区分1 (中枢神経系、肝臓)、区分2 (骨髄) ヒトに関する情報はない。 実験動物では、本物質のアンモニア塩を用いた試験結果がある。 ラットを用いた13週間混餌投与毒性試験において、5.64~7.7 mg/kg/dayで肝臓の肝臓の重量増加、肝細胞肥大がみられた (環境省リスク評価第9巻 (2011)、SIDS (2009))。アカゲザルを用いた90日間強制経口投与毒性試験において、30 mg/kg/dayで死亡 (雄1例、雌2例)、活動性低下、運動失調、顔面の腫脹、体重減少、骨髄の細胞数減少、脾臓、リンパ節のリンパ濾胞の萎縮、死亡例で副腎のび漫性脂質枯渇がみられた (環境省リスク評価第9巻 (2011)、SIDS (2009))。また、カニクイザルを用いた26週間強制経口投与毒性試験において、3 mg/kg/dayで後肢麻痺、運動失調、痛覚刺激に対する反応性低下がみられた (環境省リスク評価第9巻 (2011)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2008)、SIDS (2009))。 ラットを用いた2週間吸入毒性試験において、7.6 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.0008 mg/L) でALPの増加、肝臓の絶対・相対重量増加、肝臓の腫脹、肝細胞の肥大・壊死、限局性の多病巣性の肝細胞壊死がみられた (環境省リスク評価第9巻 (2011))。 以上のように肝臓、中枢神経系、骨髄が標的臓器と考えられ、肝臓への影響は区分1の範囲、中枢神経系への影響は区分1及び区分2の範囲、骨髄への影響は区分2の範囲でみられた。 したがって、区分1 (中枢神経系、肝臓)、区分2 (骨髄) とした。 なお、ヒトに関しては、複数の疫学調査において、本物質ばく露と肝機能、血清脂質への影響に明らかな関連性は認められていない (環境省リスク評価第9巻 (2011)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2008)、SIDS (2009))。

吸引性呼吸器有害性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

データなし
ミジンコ等の水生無脊
備考: データなし
椎動物に対する毒性
(ペルフルオロオクタン酸)
藻類に対する毒性
備考: データなし
(ペルフルオロオクタン酸)

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

環境への放出は必ず避けなければならない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 3261    IMDG (海上規制): 3261    IATA-DGR (航空規制): 3261

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): CORROSIVE SOLID, ACIDIC, ORGANIC, N.O.S. (ペルフルオロオクタン酸)
IMDG (海上規制): CORROSIVE SOLID, ACIDIC, ORGANIC, N.O.S.
(pentadecafluorooctanoic acid)
IATA-DGR (航空規制): Corrosive solid, acidic, organic, n.o.s. (pentadecafluorooctanoic
acid)

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 8    IMDG (海上規制): 8    IATA-DGR (航空規制): 8

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9) 名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)

化審法

旧第2種監視化学物質

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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