急性毒性
経口
ラットのLD50値は840 mg/kg(SIDS (1996))に基づき区分4とした。GHS分類:区分4
経皮
ウサギのLD50値は2830 mg/kg(PATTY (5th, 2001))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5に相当)とした。GHS分類:区分外
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。GHS分類:分類対象外
吸入:蒸気
データなし。GHS分類:分類できない
吸入:粉じん及びミスト
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚腐食性及び刺激性
皮膚に対し強い刺激物(strong irritant)である(HSDB (2003))との記載、およびウサギの試験による皮膚刺激性への評価は10段階評価中の4であった(GESTIS (Access on May. 2012))ことに基づき区分2とした。GHS分類:区分2
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
眼に対し強い刺激物(strong irritant)である(HSDB (2003))と記載され、ウサギを用いた試験において刺激性は10段階評価中の2(最も重度の場合10)であった(HSDB (2003))ことに基づき、区分2Bとした。GHS分類:区分2B
呼吸器感作性
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚感作性
データなし。GHS分類:分類対象外
生殖細胞変異原性
雄マウスに単回腹腔内投与(用量:1000 mg/kg、1500 mg/kg)による優性致死および相互転座試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)において、早期胎児死亡の用量依存的な増加とF1仔の雄に不妊を引き起こし、陽性の結果(HSDB (2003))が報告されていることに基づき区分1Bとした。なお、マウスに腹腔内投与による小核試験(in vivo変異原性試験)で陽性(SIDS (1996))、また、in vitro試験として、エームス試験ではTA100 において6666, 10000 ug/plateで陽性、チャイニーズハムスター培養細胞(CHO細胞)を用いた染色体異常試験も5 mg/mlの高濃度で陽性が報告されている(いずれもNTP DB (1986))。一方、最新のガイドラインによるチャイニーズハムスター培養細胞(CHL細胞)を用いた染色体異常試験(OECD TG473、GLP)は陰性と報告されている(厚労省報告(Access on May 2012)。GHS分類:区分1B
発がん性
ラットおよびマウスの雌雄各50匹を用いた2年間経口投与による発がん性試験において、雌ラットと雄マウスでは発がん性の証拠は得られなかったが、雌マウスで子宮・子宮内膜腺癌の発生率の有意な増加、雄ラットで皮下組織の線維腫の有意な増加が認められた(NTP TR81 (1978))。しかし、この報告だけでは発がん性の証拠として限定的であり、ヒトに関する情報もないため「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
生殖毒性
ラットに経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG422, GLP)において、親動物の一般毒性として250 mg/kg/dayで後肢の麻痺を主とする神経症状、病理組織学的所見として、腎乳頭および尿細管上皮細胞の障害、100mg/kg/dayでは相対的に軽度ながら250mg/kg/dayと同質の毒性が認められ、さらに40mg/kgでも尿細管上皮細胞の障害が認められた状況下で、250mg/kgで交尾率、100mg/kgで受胎率、着床率の顕著な低下、40 mg/kgでは着床胚の子宮内生存性の低下などの生殖・発生への悪影響が認められた(厚労省報告(Access on May 2012))ことから区分2とした。なお、雄ラットに250 mg/kgを30日または60日経口投与後に精巣上体から得られた精子は、全て異常で生殖細胞としての活性を完全に消失し、交尾能力も欠如していた (HSDB (2003))との報告もある。GHS分類:区分2
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ラット、モルモットまたはウサギに致死量を経口投与後、呼吸数および呼吸振幅が緩やかに減少し、全身脱力、軽度の神経過敏、微小振戦を示し、さらに呼吸困難、虚脱から、呼吸不全のため死に至った(HSDB (2003))と報告されている。一方、ヒトのばく露で脱力と麻痺は本物質の神経毒性作用である(HSDB (2003))との記述がある。上述の経口投与量は、ラットのLD50値(840 mg/kg)から判断し区分2に相当することから、区分2(神経系)とした。GHS分類:区分2(神経系)
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ラットに経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG422, GLP)において、250 mg/kg/dayは後肢の麻痺を主とする神経症状が観察され、雄で高度の、雌で軽度の致死性を示す中毒量であった。病理組織学的所見として、腎乳頭および尿細管上皮細胞の障害、脊髄および末梢における神経線維の変性ならびに骨格筋線維にびまん性の萎縮を惹起する毒性が示され、100mg/kg/dayでは相対的に軽度ながら250mg/kg/dayと同質の毒性が認められた。さらに、尿細管上皮細胞の障害は40mg/kgでもみられた(厚労省報告(Access on May 2012))。以上より、悪影響が示された主な臓器は神経系と腎臓であり、40mg/kg/day(90日換算用量:約20 mg/kg/day)以上、または100mg/kg/day(90日換算用量:約50 mg/kg/day)以上の所見であり、ガイダンス値範囲の区分2に相当することから、区分2(神経系、腎臓)とした。GHS分類:区分2(神経系、腎臓)
吸引性呼吸器有害性
データなし。GHS分類:分類できない