急性毒性
経口
ラットLD50値 1131-1600 mg/kg (SIDS (Access on Nov. 2010))。(GHS分類:区分4)
経皮
ラットのLD50値 >20 g/kg (PATTY (5th, 2001))。(GHS分類:区分外)
吸入
吸入(粉じん・ミスト): ラットのLC50値 >8.817 mg/L (SIDS (Access on Nov. 2010))。なお、試験濃度は飽和蒸気圧(3.85 mg/L)を超えているので、粉じん・ミストの基準値を適用した。(GHS分類:区分外)
吸入(蒸気): データなし。(GHS分類:分類できない)
吸入(ガス): GHSの定義における液体である。(GHS分類:分類対象外)
皮膚腐食性・刺激性
実験動物による試験(OECD TG 404, GLP)では3匹中1匹に中等度の刺激性が見られたが、ガイドラインによりSIDSでは、本物質は皮膚に対し刺激性はないとしている(SIDS (Access on Nov. 2010))。また、本物質はモルモットで僅かな刺激をもたらしたが、ウサギでは刺激性を認めなかった(BUA 37 (1989))。 (GHS分類:区分外)
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギを用いた試験で一過性の結膜炎を生じ、また、ウサギを用いた別の試験では角膜混濁、虹彩炎、角膜着色を起こした(BUA 37 (1989))。なお、List 3のデータとして、ウサギの眼に100 mgを適用したドレイズ試験で刺激性は中等度(moderate)(RTECS (2006):元文献:National Technical Information Service.: OTS0528351)。 (GHS分類:区分2)
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:モルモットを用いた皮膚感作性試験で感作性なし(no sensitizing effect)と報告されている(BUA 37 (1989))が、List2のデータであり、試験法および陽性率も記載がなく不明である。(GHS分類:データ不足で分類できない)
呼吸器感作性:データなし。(GHS分類:分類できない)
生殖細胞変異原性
2系統のマウスを用いた腹腔内投与による優性致死試験(生殖細胞in vivo 経世代変異原性試験)で両系統とも陰性(BUA 37 (1989))、マウスの腹腔内投与による精原細胞を用いた染色体異常試験(生殖細胞in vivbo変異原性試験)で陰性(BUA 37 (1989))、およびマウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験(体細胞in vivbo変異原性試験)で陰性(SIDS (Access on Nov. 2010)。なお、in vitro試験として、エームス試験で陰性(NTP DB (1982))、V79細胞を用いたHPRT試験で陰性の結果が報告されている。(GHS分類:区分外)
発がん性
データなし。(GHS分類:分類できない)
生殖毒性
ラットの交配前92日から交配後、雄は120日間、雌は150日間混餌投与した二世代試験において、親動物の毒性症状が認められない用量(670 mg/kg/day)で同腹仔数が減少した(SIDS (Access on Nov. 2010))が、当該試験は少数例の試験であり、ラットの生殖および発生に対する悪影響をを示す予備試験とみなすべきである(BUA 37 (1989))。なお、ラットにおける発生毒性試験では、最高用量625 mg/kg/dayまで催奇形性の証拠は見出されなかった(SIDS (Access on Nov. 2010))。 (GHS分類:区分2)
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
本物質は有害で麻酔作用を有し、遅発性神経毒性は伴わないが、明らかな神経毒性(コリンエステラーゼ阻害)を示し(SIDS (Access on Nov. 2010))、いくつかの急性毒性試験で、麻酔、中枢神経系抑制を伴う興奮、筋の失調、四肢麻痺などの症状が観察されている(BUA 37 (1989))。イヌでは1070 mg/kgを経口投与により、側臥位、呼吸困難、鎮静、麻酔様状態、攣縮を呈し、その日に死亡し、また、イヌに100または250 mg/kgを経口投与により、血漿コリンエステラーゼの阻害とともに鎮静および軽度の振戦が観察された(BUA 37 (1989))。イヌではガイダンス値範囲の区分2相当用量で症状が発現している。(GHS分類:区分2(神経系)、区分3(麻酔作用))
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットに28日間経口投与によるNOAELは1000 mg/kg/day(90日換算値:311 mg/kg/day)と記載されている(SIDS(Access on Nov. 2010))。また、ラットの92日間混餌投与試験では、5000 ppm(335 mg/kg/day)で悪影響を示す所見はなく(BUA 37 (1989))、ラットに9週間混餌投与による別の試験でも5000 ppm(330 mg/kg/day)で重大な毒性の記載はない(BUA 37 (1989))。一方、ラットに12回吸入ばく露した試験(5 hours/day, 5 days/week)で、エアロゾルとして1.786 mg/L(90日換算:0.275 mg/L)の濃度で、し眠、音に対する応答低下、行動障害などが観察されたが、血液、生化学検査値は対照群と比べ変化なく、肉眼的または組織学的に病理学的変化も認められなかった(BUA 37 (1989))。経口および吸入経路ではガイダンス値を超える用量で悪影響を示す記載がない。しかし、吸入投与はList 2のデータであり、経皮投与についてはデータもなく影響の有無が不明。 (GHS分類:分類できない)
吸引性呼吸器有害性
データなし。(GHS分類:分類できない)