安全データシート

1,3-フェニレンジアミン二塩酸塩

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 1,3-フェニレンジアミン二塩酸塩
  • CB番号: CB4221872
  • CAS: 541-69-5
  • EINECS番号: 208-790-0

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 検出 (亜硝酸)、試薬 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
R2.3.13、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1)) を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (膀胱) 区分2 (腎臓、血液系)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (中枢神経系、血液系)
皮膚感作性   区分1A
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2B
急性毒性 (経口)   区分3
分類実施日(環境有害性)
R1年度、分類実施中
環境に対する有害性
-

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS06GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H410 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性。
H341 遺伝性疾患のおそれの疑い。
H319 強い眼刺激。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H301 + H311 + H331 飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合や吸入した場合は有毒。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P261 粉じんの吸入を避けること。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
応急措置
P391 漏出物を回収すること。
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304 + P340 + P311 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
P302 + P352 + P312 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P301 + P310 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C6H8N2.2ClH
  • 分子量: 181.06 g/mol
  • CAS番号: 541-69-5
  • EC番号: 208-790-0
  • 化審法官報公示番号: -
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ場合は水を飲ませる(多くても2杯)。ただちに医師の診察を受けること。1時間以内に治療が受けられないという例外的な状況のみ、嘔吐させ(相手に完全に意識のある場合のみ)、活性炭(10%懸濁液に20~40g)を投与してできるだけ早く医師の診察を受ける。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。
可燃性。
塩化水素ガス
窒素酸化物(NOx)
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: いかなる場合も、ほこりを生じさせたり吸い込んだりしないようにすること。触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 慎重に行うこと。適切に廃棄すること。関連エリアを清掃のこと。 ほこりが生じないようにすること。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1C: 可燃性、急性毒性カテゴリー3 / 毒性化合物または慢性効果を引き起こす化合物
保管条件
密閉のこと。 乾燥。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。光に敏感である。 不活性ガス下に貯蔵する。 空気に反応する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
許容濃度が設定されている物質を含有していない。

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
ほこりが生じた際に必要。
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
白色またはわずかに赤色 (HSDB (Access on August 2019))
臭い
無臭 (GESTIS (Access on August 2019))

融点/凝固点

62℃ (GESTIS (Access on August 2019))

沸点、初留点及び沸騰範囲

284~287℃ (GESTIS (Access on August 2019))

可燃性

可燃性 (GESTIS (Access on July 2019))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

該当しない

引火点

該当しない

自然発火点

該当しない

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

該当しない

溶解度

水に易溶 (HSDB (Access on August 2019)) アルコールに可溶 (HSDB (Access on August 2019))

n-オクタノール/水分配係数

logP = -2.61 (EST) (PHYSPROP Database (2019))

蒸気圧

データなし

密度及び/又は相対密度

データなし

相対ガス密度

該当しない

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

通常想定される。
可燃性有機物質及び製剤に概ね該当:微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性が

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

強酸化剤
次と激しく反応

10.4 避けるべき条件

情報なし

10.5 混触危険物質

強酸化剤

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分3とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 400~800 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) (2) ラットの死亡率: 雄: 800 mg/kgで10/10 例、471 mg/kgで9/10 例、277 mg/kgで1/10 例、雌: 800 mg/kgと471 mg/kgで10/10 例、277 mg/kgで5/10 例、163 mg/kgで1/10 例 (厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on July 2019))
経皮
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスでは分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1) より本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミン (CAS 108-45-2) がガイダンスの区分外 (国連分類基準の区分3) に相当するものと判断され、本物質も区分に該当しない (国連分類基準の区分3) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミンのウサギを用いた皮膚刺激性試験 (EEC Directive 93/21、Annex VIに準拠) で試験物質を除去1時間後から24時間後の全例にわずかな~軽度の紅斑、48時間には2/6例にわずかな紅斑が認められ、浮腫は24時間後の4例にわずかな浮腫が認められたのみであり、24、48、72時間後の平均スコアは1.39であった (REACH登録情報 (Access on June 2019))。
【参考データ等】 (2) 本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミン500 mgをウサギの耳介に24 時間閉塞適用した試験で刺激なし (NITE初期リスク評価書 (2008)) (3) 本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミンは眼、皮膚を刺激する (環境省リスク評価第13巻 (2015))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1) より本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミンが区分2Bに区分されていることから、本物質も区分2Bとした。
【根拠データ】 (1) 本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミンのOECD TG405に準拠したウサギ眼刺激性試験で重度の結膜発赤、中程度の角膜混濁、中程度の虹彩炎、出血、結膜浮腫、および角膜の損傷を生じた。 さらに、非洗浄ウサギの眼に重度の浮腫が観察されたが、いずれも7日までに回復。非洗浄群の24/48/72hの角膜混濁、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の平均スコアは0.67、0、2.7、2.0であった (REACH登録情報 (Accessed on June 2019))。
【参考データ等】 (2) 本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミンの20%水溶液0.1 mL (20 mg 相当) をウサギに点眼した試験で結膜の発赤と角膜の混濁が認められ、7 日以内に回復との報告や50 mg を適用した試験では角膜の混濁を示し、7日以内には回復しなかったとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。 (3) EU-CLP分類でEye Irrit. 2 (H319) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 (1) のデータはあるが、呼吸器感作性を確定できないため、分類できないとした。
【参考データ等】 (1) 米国での本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミン漏出事故で、繰り返し本物質にばく露された作業者で、吸入ばく露により皮膚症状に加えて、湿咳、疲労、息切れを呈し、肺活量低下、胸部X線所見、開胸による生検で肺線維症を認め、強皮症と診断された。同部門の他の作業者にも同様の症例がみられたことから、本物質が原因物質と考えられた (環境省リスク評価第13巻 (2015))。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)、(2) より本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミンが区分1Aに区分されてことから、本物質も区分1Aとした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 429に準拠した本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミンのマウス局所リンパ節試験 (LLNA) において陽性を示し、EC3は0.49と推定されている (REACH登録情報 (Accessed on June 2019))。 (2) 本物質の遊離体であるm-フェニレンジアミンは産衛学会 感作性分類 皮膚3群に分類されている (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010))。
【参考データ】 (3) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2019))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 本物質のin vivoデータはないが、本物質の遊離塩基であるm-フェニレンジアミンの知見・分類をふまえ、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、マウスリンフォーマ試験で陰性の報告がある (安衛法 (変異原性試験結果) (Access on September 2019)、HSDB (Access on July 2019))。 (2) 本物質の遊離塩基であるm-フェニレンジアミン (CAS番号 108-45-2) は、区分に該当しない (2019年度GHS分類結果)。

発がん性

【分類根拠】 (1) の本物質の遊離塩基の既存分類結果及び (2) の実験動物の結果より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、本物質の遊離塩基 (CAS番号 108-45-2) がIARCでグループ3 (IARC Suppl.7 (1987)) に分類されている。 (2) ラット及びマウスに本物質を104週間飲水投与した発がん性試験において、雌雄とも発がん性は示されなかった (厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on July 2019))。

生殖毒性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。なお、本物質の遊離塩基であるm-フェニレンジアミン (CAS番号 108-45-2) についても、データ不足のため分類できないとされている。なお、m-フェニレンジアミンの2019年度分類結果を参照のこと。
【参考データ等】 (1) 雌ラットの妊娠6~15日にm-フェニレンジアミンを経口投与した発生毒性試験において、母動物の体重増加抑制あるいは死亡(6/25例)がみられた用量で、吸収胚の増加、生存胎児数の減少、胎児の低体重、胸骨の骨化遅延が認められた (環境省リスク評価第13巻 (2015)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.6 (1994))。このデータは母動物毒性 (6/25例死亡、死亡率25%) がみられる用量でのみ胚/胎児に影響がみられていることから分類根拠としない。 (2) 雌ラットの妊娠6~15日にm-フェニレンジアミンを経口投与した発生毒性試験において、母動物の体重増加抑制が認められたが、胎児の発生に影響はみられていない(環境省リスク評価第13巻 (2015)、NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.6 (1994))。このデータは母動物数が7~9匹/群と少ないことから影響を判断できない。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 本物質のヒトでの単回ばく露に関する報告はない。本物質の遊離塩基であるm-フェニレンジアミン (CAS番号 108-45-2) は、(1)、(2) のように、実験動物で区分1相当の用量で、中枢神経系と血液系への影響がみられている。(3) で、本物質の毒性影響はm-フェニレンジアミンと本質的に相違はないとされていることから、区分1 (中枢神経系、血液系) とした。(4) の報告は、死亡動物での所見であるため根拠としなかった。
【根拠データ】 (1) ネコの単回経口投与試験において、m-フェニレンジアミン10及び25 mg/kg (本物質換算値: 16.7及び41.9 mg/kg、区分1相当) で、チアノーゼ、食欲不振、呼吸障害、鎮静、痙攣、メトヘモグロビンの生成がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、BUA 97 (1992))。 (2) ラットの単回経口投与試験において、m-フェニレンジアミン200 mg/kg (本物質換算値: 335 mg/kg、区分2相当) で、痙攣と消化管の炎症がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、BUA 97 (1992))。 (3) 本物質の毒性影響はm-フェニレンジアミンと本質的に相違はないとの記載がある (GESTIS (Access on July 2019))。
【参考データ等】 (4) ラットに本物質96~800 mg/kgを単回経口投与した試験において、死亡例 (277 mg/kg以上、区分2相当) に肺のうっ血と浮腫、腎臓の近位尿細管壊死と蚤白円柱、小腸の壊死、鼻腔上皮の変性が認められた。 (厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on July 2019))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

(3) マウスに本物質 24.4~2,000 ppmを13週間飲水投与した結果、222 ppm (雄: 29 mg/kg/day、雌: 52 mg/kg/day、区分2の範囲) でAST、ALP、総コレステロールの増加、肝臓におけるクッパー細胞及び脾臓の色素顆粒、667 ppm (雄: 49 mg/kg/day、雌: 67 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリットの減少等が、2,000 ppm (雄: 108 mg/kg/day、雌: 132 mg/kg/day、区分2超) で死亡がみられ、死亡又は瀕死例で心臓の拡張、筋肉の壊死等がみられた (同上)。 (4) ラットにm-フェニレンジアミンを90日間経口投与した結果、18 mg/kg/day (本物質換算: 30 mg/kg/day、区分2の範囲) で肝臓重量増加、肝細胞の核濃縮、腎臓重量増加がみられた (IRIS (1987)、DFGOT vol.6 (1994)、ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第13巻 (2015))。
【参考データ等】 (5) m-フェニレンジアミンを主成分とするアミン類にばく露された化学工場労働者男性2人が全身性硬化症を患ったという報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第13巻 (2015))。 (6) マウスにm-フェニレンジアミン0.02、0.04% (区分2の範囲) を78週間飲水投与した結果、臓器重量増加、色素沈着等がみられたが、組織への毒性学的な影響はみられなかった (同上)。
【分類根拠】 (1) より、ヒトへのばく露により膀胱への影響がみられ、(2)~(4) より、ラット、マウスへの本物質又は本物質の遊離塩基であるm-フェニレンジアミン (CAS番号 108-45-2) の経口投与により区分2の範囲で腎臓、血液系への影響みられていることから、区分1 (膀胱)、区分2 (腎臓、血液系) とした。分子量換算によりm-フェニレンジアミンと分類結果が異なる結果となった。
【根拠データ】 (1) ロシアのフェニレンジアミン製造工場で30~50歳代の労働者112人が、本物質1~2 mg/m3に5~10年間ばく露され、うち15人が排尿障害を訴えた。本物質を用いたスクラッチテストで、112人中9人がアレルギー陽性反応を示し、陽性反応を示した人の膀胱内視鏡検査で膀胱三角部及び頸部に粘膜の水腫、ポリープ性腫脹が観察され、9人とも好酸球尿症と診断された。また、本物質が尿中に0.003~0.40 mg/L検出された (DFGOT vol.6 (1994)、ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第13巻 (2015))。 (2) ラットに本物質 62.5~1,000 ppmを13週間飲水投与した結果、250 ppm (23 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雌で腎臓重量増加、腎臓における色素沈着が、500 ppm (雄: 30 mg/kg/day、雌: 32 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雌雄で腎乳頭部の軽度の変性等、1000 ppm (雄: 54 mg/kg/day、雌: 57 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で血小板数の減少等がみられた (厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on July 2019))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

データなし

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 2811    IMDG (海上規制): 2811    IATA-DGR (航空規制): 2811

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Toxic solid, organic, n.o.s. (m-phenylenediamine dihydrochloride)
dihydrochloride)
IMDG (海上規制): TOXIC SOLID, ORGANIC, N.O.S. (m-phenylenediamine
ADR/RID (陸上規制): TOXIC SOLID, ORGANIC, N.O.S. (m-フェニレンジアミン塩酸塩)

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

該当
ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

強酸化剤

15. 適用法令

労働安全衛生法

該当しない

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

該当しない

毒物及び劇物取締法

劇物(指定令第2条)【84 フエニレンジアミン及びその塩類】

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 フエニレンジアミン及びその塩類】

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2811 その他の毒物(固体)(有機物)】

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2811 その他の毒物(固体)(有機物)】

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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