急性毒性
経口
GHS分類: 区分4 ラットのLD50値として、410 mg/kg (ACGIH (7th, 2003)) に基づき、区分4とした。
経皮
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 区分3 ラットのLC50値 (4時間) として、777 ppmとの報告 (ACGIH (7th, 2003)、NTP TR 448 (1996)) に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (12,833 ppm) より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 区分2 In vivoでは、マウスの末梢血赤血球を用いる小核試験で雌雄ともに陽性の結果 (NTP TR448 (1996)、ACGIH (7th, 2003))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (ACGIH (7th, 2003)、NTP TR448 (1996)、NTP DB (2015))。以上より、区分2とした。
発がん性
GHS分類: 区分2 ヒトでの発がん性情報はない。実験動物では、ラット又はマウスを用いた2年間吸入ばく露による発がん性試験において、ラット、マウスの雌雄ともに高用量2群 (75、150 ppm) で肺胞/細気管支の腺腫、又はがんを合わせた発生頻度の増加が認められた (NTP TR448 (1996)、ACGIH (7th, 2003))。また、C57BL6雌マウスにPYB6腫瘍細胞を注射後 (部位の記載なし) に、本物質を900 ppmで最長16日間吸入ばく露し、腫瘍の成長を調べた実験で、腫瘍発生率は対照群の21%に対し75%と3倍に増加し、腫瘍成長速度も同4倍に増加するなど、本物質が腫瘍成長を促進することが証明された (ACGIH (7th, 2003)) との記述がある。国際機関による発がん性分類結果としては、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2003))、EUがCLP分類でCarc. 1B に (ECHA CL Inventory (2015)) 分類している。以上、本物質による発がん性の証拠に関して、実験動物では確かな証拠があるが、ヒトへの種間外挿の妥当性について、現時点では不明であるため、ACGIHを優先し区分2とした。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系) 本物質はヒトの狭心症の治療に使用されることがある (ACGIH (7th, 2003))。本物質は鼻腔刺激性がある (ACGIH (7th, 2003))。ヒトの中毒例では、室内防臭剤として使用された本物質の経口摂取で気管気管支炎、メトヘモグロビン血症を発症し死亡した事例がある。また、吸入ばく露では、肺水腫、気管気管支炎、メトヘモグロビン血症の報告がある (以上、ACGIH (7th, 2003)、NTP TR448 (1996)、HSDB (2015))。 実験動物では、マウスの184 mg/kgの経口投与 (区分1に相当する用量) で、協調運動失調、伸筋剛性 (extensor rigidity)、攣縮、四肢蒼白、衰弱、呼吸困難、重度のメトヘモグロビン血症による無酸素症で死亡、本物質投与前にメチレンブルー投与により、死亡率が減少したとの報告、ラットの777 ppm (3.28 mg/L) 吸入ばく露 (区分1に相当する用量) で協調運動失調、伸筋剛性 (extensor rigidity)、攣縮、痙攣、四肢蒼白、衰弱、呼吸困難、チアノーゼ、重度のメトヘモグロビン血症による呼吸器不全、低血圧と血管拡張による心血管障害、マウスの175~1,000 ppm (0.74~4.22 mg/L) 吸入ばく露 (区分1に相当する用量) で自発運動量 (motor performance) の低下、マウスの900 ppm (3.80 mg/L) (区分1に相当する用量) で赤血球、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット値低下で示される一過性の貧血の報告がある (ACGIH (7th, 2003)、NTP TR448 (1996)、HSDB (2015))。 実験動物への本物質によるその他の影響として、血液細胞機能への影響、血液細胞破壊、脾臓細胞減少 (spleen cellularity)、T細胞反応性低下、免疫能力低下 (compromise of immunocompetence) の報告があり、本物質の急性毒性は、心血管系、造血系であるとの記載がある (ACGIH (7th, 2003))。 以上より、本物質は中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系に影響を及ぼすことから、区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系) とした。 新たな情報を加え旧分類を見直した。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 区分1 (免疫系)、区分2 (呼吸器、血液系) 実験動物では、ラットを用いた13週間吸入毒性試験において75 ppm (ガイダンス値換算: 0.23 mg/L) 以上でメトヘモグロビン血症、貧血、脾臓のヘモジデリン沈着、150 ppm (ガイダンス値換算: 0.46 mg/L) 以上で気管上皮の過形成、鼻粘膜の過形成、マウスを用いた13週間吸入毒性試験において75 ppm (ガイダンス値換算: 0.23 mg/L) 以上で細気管支上皮の過形成、脾臓の髄外造血、脾臓のヘモジデリン沈着、150 ppm (ガイダンス値換算: 0.46 mg/L) 以上でメトヘモグロビン血症、300 ppm (ガイダンス値換算: 0.98 mg/L) で貧血、鼻粘膜の過形成がみられた (NTP TR448 (1996))。マウスを用いた14日間吸入毒性試験において900 ppm (ガイダンス値換算: 0.078 mg/L) で白血球数減少、赤血球数増加、顆粒球単球コロニー形成細胞 (CFU-GM)の減少がみられ、白血球数減少、赤血球数増加はばく露終了後1週間以内に回復性が認められた。しかし顆粒球単球コロニー形成細胞の減少はばく露終了後1週間での回復性はみられていない (ACGIH (7th, 2003))。以上のように、ラット、マウスともメトヘモグロビン血症、貧血と関連した所見、呼吸器系に対する刺激性の所見が区分2の範囲でみられ、免疫系への影響が区分1の範囲でみられた。 したがって、区分1 (免疫系)、区分2 (呼吸器、血液系) とした。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。