安全データシート

アセトン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: アセトン
  • CB番号: CB3130928
  • CAS: 67-64-1
  • EINECS番号: 200-662-2
  • 同義語: ジメチルケトン,2-プロパノン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 工業用の溶剤、化学物質原料(ビスフェノールA,MMA,MIBK等)、化粧品類添加剤
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日
GHS改訂4版を使用
H25.8.22、政府向けGHS分類ガイダンス(H25.7版)を使用
物理化学的危険性
引火性液体   区分2
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性(反復ばく露)   区分1 (中枢神経系、呼吸器、消化管)
特定標的臓器毒性(単回ばく露)   区分3 (気道刺激性、麻酔作用)
生殖毒性   区分2
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性   区分2B
分類実施日
環境に対する有害性はH18.3.31、GHS分類マニュアル(H18.2.10 版)を使用
環境に対する有害性
分類できない

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS02GHS07
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H336 眠気又はめまいのおそれ。
H319 強い眼刺激。
H225 引火性の高い液体及び蒸気。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P261 ミスト/蒸気の吸入を避けること。
P243 静電気放電に対する措置を講ずること。
P242 火花を発生させない工具を使用すること。
P241 防爆型の【電気機器/換気装置/照明機器/機器】を使用すること。
P240 容器を接地しアースをとること。
P233 容器を密閉しておくこと。
P210 熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
応急措置
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304 + P340 + P312 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P235 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C3H6O
  • 分子量: 58.08 g/mol
  • CAS番号: 67-64-1
  • EC番号: 200-662-2
  • 化審法官報公示番号: 2-542
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後はただちに水を飲ませること(多くても2杯) 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
二酸化炭素(CO2) 泡 粉末

5.2 特有の危険有害性

火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
逆火に注意する。
可燃性。
炭素酸化物
周囲温度で空気と反応して爆発性混合物を生じる。

5.3 消防士へのアドバイス

火災時には、自給式呼吸器を着用する。

5.4 詳細情報

容器を危険ゾーンから移動させて水で冷やすこと。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 熱や発火源から遠ざける。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。 爆発のおそれ。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。 蒸気やエアロゾルが生じないようにすること。
火災及び爆発の予防
炎、熱および発火源から遠ざける。静電気放電に対する予防措置を講ずること。
衛生対策
汚れた衣類は取り替えること。事前に皮膚を保護することが望ましい。本物質を扱った後は手を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 3: 可燃性液体
保管条件
容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。 熱や発火源から遠ざける。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
ACL: 500 ppm - 作業環境評価基準、健康障害防止指
TWA: 250 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚れた衣類は取り替えること。事前に皮膚を保護することが望ましい。本物質を扱った後は手を洗う
こと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ブチルゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Butoject® (KCL 898)
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ラテックス製手袋
最小厚: 0.6 mm
破過時間: 10 min
試験物質:Lapren® (KCL 706 / Aldrich Z677558, Size M)
身体の保護
難燃静電気保護服。
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。 爆発のおそれ。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
液体:ホンメル(1991), Merck (13th, 2001)
無色透明:ホンメル(1991)
臭い
特有の刺激臭
臭いのしきい(閾)値
情報なし
pH
情報なし

融点・凝固点

-95℃ ICSC(2014) (融点), -94.7℃ HSDB(2014), (融点) ,-94.6℃ SIDS(2002) (融点)

沸点、初留点及び沸騰範囲

56℃(沸点): ICSC(2014), 56.05℃(760mmHg): HSDB(2014)

引火点

-20℃(密閉式) : HSDB(2014)

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

該当しない

燃焼又は爆発範囲

下限 2.2vol%、上限 13vol% :ホンメル (1991)

蒸気圧

239.5hPa(239.5mber)(20℃) ホンメル (1991)

蒸気密度

2.0g/cm3 :混合危険Hb (1997)

比重(相対密度)

0.788(25/25℃) :Merck (13th, 2001)

溶解度

水に易溶, エタノール、エーテル、クロロホルムに可溶。 1*10^(6) mg/L:SRC (2005)

n-オクタノール/水分配係数

log Pow = -0.24 5)

自然発火温度

465℃:ICSC(2014)

分解温度

情報なし

粘度(粘性率)

0.32cP (粘性率)(20℃):HSDB (2005)

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

蒸気は空気と爆発性混合物を形成することがある。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

オキシ塩化リン
二塩化硫黄
ハロゲン化炭化水素
アルカリ性水酸化物/水酸化アルカリ
アルカリ金属
臭素
次により発熱反応を生じる
ペルオキシ化合物
有機窒素化合物
ハロゲン酸化物
過酸化水素
ニトロシル化合物
硝化酸
クロロホルム
ハロゲン-ハロゲン化合物
非金属性オキシハロゲン化合物
次との反応で爆発のおそれ
酸化クロム(VI)
硝酸
強還元剤
強酸化剤
フッ素
エタノールアミン
塩化クロミル
硫酸クロム
次との反応で燃焼ガスや蒸気の発火または生成のおそれ

10.4 避けるべき条件

警告

10.5 混触危険物質

ゴム, 多様なプラスチック

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
ラットのLD50値として、 5,800 mg/kg (環境省リスク評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008)、SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 207 (1998)、ATSDR (1994))、 8,400 mg/kg (SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 207 (1998)、ATSDR (1994))、 7,138 mg/kg (若成獣)、 6,667 mg/kg (老成獣) (IRIS (2003)、SIDS (2002)、EHC 207 (1998)、ATSDR (1994))、 9,800 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))、 9,883 mg/kg (ATSDR (1994))、 1,726-9,833 mg/kg (ATSDR (1994))、 5,800-10,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分外とした。なお、1,726-9,833 mg/kg及び5,800-10,000 mg/kgは集約データであるために該当数に含めなかった。
経皮
ウサギのLD50値として、> 7,400mg/kg (SIDS (2002))、> 15,700 mg/kg (SIDS (2002)、ATSDR (1994))、20,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2001)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
ラットのLC50 (4時間) として、32,000 ppm (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2002)、EHC 207 (1998)、ATSDR (1994))、LC50 (8時間) からの4時間換算値LC50として、29,698 ppm (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2002)、EHC 207 (1998)、ATSDR (1994))、70,852 ppm (環境省リスク評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008)、SIDS (2002)) との報告に基づき、区分外とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (236,920 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

ウサギに本物質0.01 mLを適用した皮膚刺激性試験において、刺激性はみられなかったとの報告がある (SIDS (2002)、EHC 207 (1998)) ことから、区分外とした。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

ウサギを用いた多数の眼刺激性試験において、強い刺激性が認められており (SIDS (2002)、EHC 207 (1998)、ACGIH (7th, 2001))、結膜浮腫や角膜壊死 (EHC 207 (1998))、角膜中心部の厚さの増大 (ACGIH (7th, 2001)) などがみられた。SIDS (2002) には、本物質の適用により角膜上皮は破壊されるが、基質までは至らず4-6日で回復性を示し、本物質は腐食性の眼刺激性ではないとの記載がある (SIDS (2002))。以上の結果から区分2Bとした。また、ヒトの疫学情報において、本物質の蒸気ばく露により眼刺激性を示したとの報告がある (環境省リスク評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008)、EHC 207 (1998))。なお、本物質は、EU DSD分類において「Xi; R36」、EU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている。

呼吸器感作性

データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

マウス耳介腫脹試験及びモルモットを用いたマキシマイゼーション試験において陰性を示したとの報告があり、SIDS (2002) 及びEHC 207 (1998) において本物質は感作性物質ではないとの記載がある。以上の結果より区分外と判断した。

生殖細胞変異原性

ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、マウス及びハムスターの赤血球を用いる小核試験で陰性 (SIDS (2002)、EHC 207 (1998)、NTP DB (Access on July 2014))、in vitroでは、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験の非代謝活性化系でのみ一例の陽性結果 (ACGIH (7th, 2001)) があるが、その他、細菌を用いる復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いる遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性 (SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 207 (1998)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on July 2014)) である。

発がん性

ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001))、EPAでD (IRIS (2003)) のため、「分類できない」とした。

生殖毒性

疫学調査で流産への影響なし (ATSDR (1994)) という報告がある。ラットを用いた吸入経路での催奇形性試験において母動物毒性 (体重増加抑制) がみられる高濃度ばく露 (11,000 ppm (26.1mg/L)) で胎児体重減少がみられ、胎児の奇形の発現率に有意な増加はみられなかったが、1つ以上の奇形のある児を持つ母動物の増加 (11.5%) (対照群:3.8%) (EHC 207 (1998)) が報告されている。また、マウスを用いた吸入経路での催奇形性試験において母動物毒性 (肝臓の相対重量増加) がみられる高濃度ばく露 (6,600 ppm (15.6 mg/L)) で胎児体重減少、後期吸収胚の増加 (EHC 207 (1998)) が報告されている。EHCでは、ヒトと動物で更に検討が必要であるとの記載がある。したがって、区分2とした。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

ヒトにおいては、吸入経路では、アセトン蒸気のばく露で中等度の気道刺激性の報告 (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2002)、環境省リスク評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008))、100 ppm (6h) の蒸気ばく露で喉及び気管の刺激 (ACGIH (7th, 2001))、500、1000 ppmのばく露で鼻、喉、気管の刺激 (EHC 207 (1998))、100-12,000 ppm、2分-6時間のばく露で、鼻、喉、気管、肺の刺激の報告、めまい、嘔吐、非協調動作、協調会話の喪失、眠気、意識消失、昏睡など中枢神経抑制が報告されている (ATSDR (1994)、ACGIH (7th, 2001)、SIDS (2002)、環境省リスク評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008))。ほとんどの症状は一過性であり回復性がある (SIDS (2002)) が、わずかに死亡例の報告もある (PATTY (6th, 2012))。 経口経路では、吐き気、嘔吐、誤飲のような大量ばく露で、けん怠感、刺激、めまい、呼吸のムラ、嘔吐、胃腸障害の進行、意識障害、無反応といった中枢神経抑制、刺激が主である (環境省リスク評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008)、SIDS (2002)、IRIS TR (2003))。 実験動物では、アセトン蒸気ばく露の急性影響は、ヒト中毒の症例で見られる中枢神経系抑制と同じである。眠気、協調欠如、自律反射の喪失、昏睡、呼吸器障害、死亡が報告されている (SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2001))。 以上より、アセトンは気道に対する中等度の刺激性及び軽度の中枢神経抑制作用があり、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

ヒトでは本物質700 ppmに3時間/日、7-15年間、吸入ばく露された作業者において、職業ばく露による影響として、めまい、脱力感とともに呼吸器、胃及び十二指腸に炎症がみられた (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.7 (1996)) との記述があり、ATSDR Addendum (2011) による再評価でも、ヒトでの本物質ばく露による標的臓器は呼吸器、消化管、神経系が中心であると報告されている (ATSDR Addendum (2011))。また、ATSDR Addendum (2011) は本物質を含む製品のばく露により腎炎、腎不全を生じた症例報告 (慢性中毒症例としては糸球体腎症と尿細管間質性腎炎を発症例1例 (原著報告年: 2002年)、ばく露期間が不明で急性中毒症例の可能性が高い腎不全症例1例 (原著報告年: 2003年)) から、腎臓も標的臓器に挙げているが、症例数が1ないし2件と少なく、標的臓器として今回の分類に加えるには証拠は十分とは言いがたい。 一方、ACGIH (7th, 2001) にはボランティアに500 ppmの濃度で6時間/日、6日間吸入ばく露した結果、血液系への影響 (白血球数及び好酸球数の増加、好中球の貪食作用の減少) がみられたとの記述があり、旧分類における区分2 (血液系) の根拠とされたが、ACGIH (7th, 2001) には血液影響はみられないとの報告も併記されており、本物質の600又は1,000 ppmに5年以上ばく露を受けた群と対照群を比較した疫学研究では血液影響を生じないことが確認された (DFGOT vol.7 (1996)) との記述、さらにこれらより新しいIRIS (2003)、ATSDR Addendum (2011) による有害性評価ではヒトばく露による血液影響の記述がないことから、血液系は標的臓器から除外することとした。したがって、ヒトでの新しい知見に基づき、分類は区分1 (中枢神経系、呼吸器、消化管) とした。 なお、実験動物ではラット及びマウスを用いた13週間飲水投与試験、並びにラットの13週間強制経口投与試験において、いずれも区分2までの用量範囲で、明らかな毒性影響はみられていない (SIDS (2002))。

吸引性呼吸器有害性

データ不足のため分類できない。なお、動粘性率は計算値で0.426 mm2/sec (20℃、CERI計算値) であり、吸引による化学性肺炎を生じるとのデータはないが、C13以下のケトンであることより国連分類基準では区分2相当である。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
流水式試験 LC50 - Pimephales promelas (ファットヘッドミノウ) - 6,210
mg/l - 96 h
(OECD 試験ガイドライン 203)
ミジンコ等の水生無脊
止水式試験 LC50 - Daphnia pulex (ミジンコ) - 8,800 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
備考: (ECHA)
藻類に対する毒性
止水式試験 最大無影響濃度 - Microcystis aeruginosa - 530 mg/l - 8 d
(DIN(ドイツ工業規格) 38412)
備考: (毒性の最大許容濃度)
(IUCLID)
微生物毒性
止水式試験 EC50 - 活性汚泥 - 61.15 mg/l - 30 min
(OECD 試験ガイドライン 209)
ミジンコ等の水生無脊
流水式試験 最大無影響濃度 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 2,212 mg/l -
椎動物に対する毒性(慢
28 d
性毒性)
備考: (ECHA)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 28 d
結果: 91 % - 易分解性。
(OECD テスト ガイドライン 301B)
生化学的酸素要求量
1,850 mg/g
(BOD)
備考: (IUCLID)
化学的酸素要求量
2,070 mg/g
(COD)
備考: (IUCLID)
理論上の酸素要求
2,200 mg/g
(量)
備考: (Lit.)

12.3 生体蓄積性

生物濃縮されない。

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1090    IMDG (海上規制): 1090    IATA-DGR (航空規制): 1090

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Acetone
IMDG (海上規制): ACETONE
ADR/RID (陸上規制): ACETONE

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 3    IMDG (海上規制): 3    IATA-DGR (航空規制): 3

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

非該当
ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

ゴム, 多様なプラスチック

15. 適用法令

化審法:

優先評価化学物質

労働安全衛生法:

名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9) 名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3) 第2種有機溶剤等 危険物・引火性の物

消防法

第4類引火性液体、第一石油類水溶性液体

航空法

引火性液体

船舶安全法

引火性液体類

16. その他の情報

略語と頭字語

IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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