急性毒性
経口
【分類根拠】 (1) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 雄: 790 mg/kg (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、SIAP (2006)、SIAR (2006)、GESTIS (Access on August 2020)、HSDB (Access on August 2020))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: > 2,000 mg/kg (SIAR (2006)、HSDB (Access on August 2020))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分2とした。 なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。 ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (3.9E-010 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (1時間): 1.202~1.423 mg/L (4時間換算値: 0.301~0.356 mg/L) (SIAR (2006)) (2) 本物質の蒸気圧: 5.03E-011 mmHg (25℃) (est) (U.S.EPA: Mpbpwin v1.43) (飽和蒸気圧濃度換算値: 3.9E-010 mg/L)
【参考データ等】 (3) 製品 (本物質を32%含有) におけるラットのLC50 (1時間): > 176.4 mg/L (4時間換算値: > 44.1 mg/L (100%換算値: > 14.1 mg/L)) (農薬工業会「農薬時代」第162号 (1991)) (4) 製品 (本物質を32%含有) におけるラットのLC50 (3時間): > 158.3 mg/L (4時間換算値: > 118.7 mg/L (100%換算値: > 38.0 mg/L)) (農薬工業会「農薬時代」第162号 (1991))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 次亜塩素酸イオンはアルカリ性を示すため、本物質は皮膚に対し腐食性を示す (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。 (2) 本物質への接触により刺激性或いは腐食性を示す可能性がある (SIAP (2006)、GESTIS (Access on August 2020))。
【参考データ等】 (3) 本物質は「皮膚を腐食する」といわれるが、その出典は確認できず、立証のための追加情報はない。 カルシウムカチオンと未反応の水酸化カルシウム (1%でpH = 12.0) のアルカリ性により、眼への深刻な影響が予想される (SIAR (2006))。 (4) EU-CLP分類でSkin Corr. 1B (H314) に分類されている (EU CLP分類 (Access on October 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 本物質は皮膚腐食性 (区分1) に区分されている。 (2) 本物質への接触により、刺激性或いは腐食性を示す可能性がある (SIAP (2006)、GESTIS (Access on August 2020))。
【参考データ等】 (4) 本物質は「皮膚を腐食する」といわれるが、その出典は検索できず、立証のための追加情報はない。カルシウムカチオンと未反応の水酸化カルシウム (1%でpH = 12.0) のアルカリ性により、眼への深刻な影響が予想される (SIAR (2006))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1) の記載はあるが、データ不足のため分類できないとした。新しい情報 (1) が旧分類の根拠となったデータと相反するものであるため、分類結果を変更した。
【参考データ等】 (1) 健常ボランティアに対して実施されたRepeated insult patch testでは、アレルギー性接触皮膚炎の証拠は認められなかった (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、次亜塩素酸ナトリウムを用いた試験として、マウス腹腔内又は経口投与の骨髄を用いた小核試験で陰性、マウス経口投与の骨髄を用いた染色体異常試験で陰性の報告がある (SIAR (2006))。 (2) in vitroでは、本物質を用いた細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験で陽性の報告がある (SIAR (2006))。 (3) AICISでは、次亜塩素酸のNa塩もCa塩 (本物質) も遺伝毒性のポテンシャルはないと考えられるとしている (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
発がん性
【分類根拠】 本物質の国内外の分類機関による既存分類及び発がん性に関する報告は得られていないが、(1) の次亜塩素酸塩としての既存分類結果及び (2)、(3) の次亜塩素酸ナトリウムの実験動物での発がん性試験結果より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCで本物質を含む次亜塩素酸塩としてグループ3 (IARC 52 (1991)) に分類されている。 (2) 次亜塩素酸ナトリウム (CAS番号 7681-52-9) のラットを用いた104週間飲水投与試験、マウスを用いた103週間飲水投与試験において、腫瘍発生率の有意な増加はみられていない (IARC 52(1991))。 (3) 次亜塩素酸ナトリウムのマウスを用いた経皮経路での発がん性試験において、発がん性はみられていない (IARC 52(1991))。
生殖毒性
【分類根拠】 本物質のデータはないが、(1) より、本物質は水溶液中で次亜塩素酸イオンとカルシウムイオンに解離することから、次亜塩素酸 (CAS番号 7790-92-3) のデータを基に分類を行った。(2)~(4) より、概ね生殖影響はないと考えられるが、器官形成期のみに投与した発生毒性のデータがないことから、データ不足のため分類できないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質は水溶液中で次亜塩素酸イオンとカルシウムイオンに解離する (SIAR (2006))。 (2) ラットに次亜塩素酸を強制経口投与した1世代生殖毒性試験において、毒性の臨床徴候、血液学的変化、体重、精子数、精子運動性、精子形態、生殖器官の病理組織学的病変は認められず、受胎能、胎児生存率、同腹児数、胎児体重、開眼日、膣開口日に用量依存性の影響はみられていない (EURAR (2007)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014))。 (3) 雌ラットに次亜塩素酸を交配前2.5ヵ月から妊娠期間中に飲水投与した試験において、母動物毒性、発生毒性はみられていない (EURAR (2007)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014))。 (4) EURAR (2007) では、次亜塩素酸ナトリウム (CAS番号 7681-52-9) のデータはない。しかし、次亜塩素酸や塩素を用いた動物試験結果について、データは限られているが、次亜塩素酸ナトリウムは次世代の発生または受胎能に有害な影響を及ぼすことを示唆する証拠はないという結論を導くことが可能と報告されている。同様に、塩素処理された飲料水を摂取している集団に関する疫学研究からも、そのような証拠は得られていないとしている (EURAR (2007))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分3 (気道刺激性) とした。(4) の中枢神経系に関するデータでは、具体的な症状等が不明であったため不採用とした。なお、情報の見直し及び新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 労働者が本物質を錠剤 (用量不明) で摂取したところ、嘔吐と呼吸器系の症状 (respiratory complaints) がみられた (GESTIS (Access on August 2020))。 (2) 本物質には、鼻及び眼への刺激性がある (HSDB (Access on August 2020))。 (3) 本物質のミストを吸入すると、鼻、喉、上気道に中程度から強い刺激が生じると予想される (GESTIS (Access on August 2020))。
【参考データ等】 (4) 雄ラットの単回経口投与試験において、890~1,260 mg/kg (区分2の範囲) で、投与1時間後に中程度の中枢神経抑制、軽度から中等度の持続性食欲不振、下痢がみられた (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、SIAR (2006))。 (5) 本物質は水溶液中で次亜塩素酸イオンとカルシウムイオンに解離する。ヒト健康への影響は、粉末、水溶液、又は誤って生成した塩素ガスとの接触によって引き起こされる可能性がある。次亜塩素酸イオンの毒性について、本物質のばく露シナリオは次亜塩素酸イオンを生じる次亜塩素酸ナトリウム溶液又は塩素ガスと共通である (SIAR (2006))。 (6) 本物質は強酸と混合した場合に高濃度の塩素ガスを放出する (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 本物質自体の情報はないが、(1) より、次亜塩素酸ナトリウム (CAS番号 7681-52-9) の情報に基づき検討した。(2)、(3) より次亜塩素酸ナトリウムの経口及び経皮経路の反復投与毒性は低いと考えられが、吸入ばく露による呼吸器への影響が不明であるため、分類できないとした。
【参考データ等】 (1) 本物質は水溶液中でと次亜塩素酸イオンとカルシウムイオンに解離する (SIAR (2006))。 (2) 次亜塩素酸ナトリウムを用いた飲水投与試験では、ラット、マウスに90日間及び2年間投与した場合も摂水量低下に伴うものと考えられる体重増加抑制がみられたのみである (SIAR (2006))。 (3) モルモットに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を51週間 (週2回) 経皮適用した試験で、投与に関連した影響はみられなかった (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、EURAR (2007)、SIAR (2006))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性クラスの内容に変更はない。