急性毒性
経口
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
経皮
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、日本産業衛生学会はヨウ素及びその化合物として、皮膚感作性第2群に分類されているが、注意書きとして全ての化合物が同定されているわけではないとしている (日本産業衛生学会許容濃度の勧告 (2015))。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。 なお、旧分類に記載のHSDBの情報は確認できなかった。
発がん性
GHS分類: 分類できない 本物質自体の発がん性に関する情報はない。しかしながら、特定標的臓器毒性 (反復暴露) の項に記述したように、本物質は吸入経路で吸収され、その毒性はヨウ素及びヨウ化物、銀化合物の毒性を反映すると考えられた。すなわち、発がん性の既存分類結果では、ACGIHはヨウ素、及びヨウ化物に対してはA4に分類した (ACGIH (7th, 2008)) が、銀、及び銀化合物に対しては発がん分類を付していない (ACGIH (2015))。よって、本項はヨウ素、ヨウ化物に対するACGIHの分類結果に基づき、分類できないとした。
生殖毒性
GHS分類: 区分1B 追加区分:授乳に対する、又は授乳を介した影響 本物質自体の生殖毒性に関する情報はない。しかしながら、特定標的臓器毒性 (反復暴露) の項に記述したように、本物質は吸入経路で吸収され、その毒性はヨウ素及びヨウ化物、銀化合物の毒性を反映すると考えられた。ヨウ化物の本項の分類に関して、ヨウ化カリウム (CAS番号: 7681-11-0) では区分1B、追加区分:授乳影響 とした。ただし、この分類の根拠データは概してヒトにおける経口経路での知見に基づいている。Willard, D.H. and Bar, W.J. (1961) の報告には、Ag131Iの経口投与での吸収実験はマウスでは実施しておらず、Na131IとAg131Iをヒツジ各1頭に対し強制経口投与後に甲状腺の131I取込み量は同程度 (131Iの投与量に対する甲状腺組織の最大取り込み率:NaI、AgI で各々56% (28時間後) 及び48% (34時間後)) であったとの結果が示されているだけで、ヨウ化銀の経口経路での吸収性は可溶性ヨウ化物と同様に良好であるとは言えない。しかし、本物質を吸入した場合には、吸収され血中でヨウ化物としてヨウ化カリウム経口投与に相当する毒性が発現すると想定されるため、ヨウ化カリウムの分類区分が本物質にも適用できると判断した。よって、本項は区分1Bとし、授乳影響を追加した。 なお、銀化合物の生殖影響に関しては硝酸銀を妊娠サルの子宮内への直接注入により流産を生じた、或いは乳酸銀を妊娠ラットに腹腔内注射により新生児の脳内で銀が検出されたなどの知見はある (ATSDR (1990)、ACGIH (7th, 2001)) が、本項の分類に利用可能な知見はない。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 分類できない 本物質の複数人への大量ばく露の事故例があり、病的症状はみられなかったとの記載 (HSDB (Access on June 2015)) があるが、詳細情報はない。データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 区分1 (皮膚、甲状腺、呼吸器、全身毒性) 本物質に関する情報としては、本物質を用いて人工降雨の作業を行った作業者において、手の着色が生じたが健康影響はみられていないとの報告 (HSDB (Access on June 2015)) のみである。 しかし、ATSDR (2004) と CICAD 72 (2009) に本物質の吸入経路での吸収に関する知見の記述があり、原著 (Willard, D.H. and Bar, W.J.: Acta Radiologica, 55, 486-496 (1961)) を入手し詳細に検討した。その結果、マウスに131I-ヨウ化銀 (Ag131I) 粒子を吸入ばく露した体内動態試験で、同様にばく露した131I2 (ヨウ素) 蒸気と比べて、不溶性の本物質では総沈着率は約1/5の約12%と少ないが、本物質も迅速に吸収され全身 (複数の臓器) に分布することが示されており、体内負荷量ベースで比較した場合、甲状腺等臓器別の分布割合及び経時的推移に両者で大差はなかった (Willard, D.H. and Bar, W.J. (1961))。したがって、本物質も吸入経路で吸収され、その毒性はヨウ素及びヨウ化物、銀化合物の毒性を反映すると考えられる。
銀化合物については、長期ばく露により銀沈着症を起こすとの記載がある (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2008)、 HSDB (Access on June 2015))。しかし、ヒトの健康への重大な影響を示唆するものではないと考えた。ヒトでは、ヨウ素及びヨウ化物については、ヨウ素は甲状腺の機能低下あるいは機能亢進を引き起こし (ACGIH (2008))、ヨウ化カリウムでは、ヨウ素中毒としてヨウ素疹や甲状腺の病変のほかに、喉頭炎、気管支炎、声門浮腫、喘息発作、唾液腺浮腫、耳下腺炎、胃炎、ヨウ素悪液質として、全身衰弱、心悸亢進、抑うつ、不眠、神経過敏などが記載されている (医療用医薬品集 2016)。以上のように、皮膚、甲状腺、呼吸器のほか標的臓器の特定が困難な諸症状がみられた。 したがって、区分1 (皮膚、甲状腺、呼吸器、全身毒性) とした。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。