急性毒性
経口
ラットに2000 mg/kgを投与した試験(OECD TG401、GLP)で死亡例は見られず、LD50値は >2000 mg/kg(厚労省報告 (2001))との報告により区分外とした。 GHS分類:区分外
経皮
ウサギのLD50値は、480 mg/kg (PATTY (5th, 2001))との記載があり、経口毒性と比較し毒性がかなり強くなるため、PATTY (5th, 2001)の記載に疑義があるが、元文献を確認することもできず詳細不明のため分類できないとした。 GHS分類:分類できない
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。GHS分類:分類対象外
吸入:蒸気
データ不足。なお、ラットに飽和蒸気を8時間ばく露し死亡なし(PATTY (5th, 2001))との報告があるが、区分を特定できないので「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
吸入:粉じん及びミスト
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚腐食性及び刺激性
ウサギの皮膚に試験物質10 mgを24時間適用した試験において、軽度の刺激性(mild irritating)との記述(PATTY (5th, 2001))から、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3に相当)とした。 GHS分類:区分外
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギの眼に5%溶液を適用し、重度の熱傷(severe burns)を起こしたとの記述(PATTY (5th, 2001))に基づき区分1とした。GHS分類:区分1
呼吸器感作性
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚感作性
データなし。GHS分類:分類できない
生殖細胞変異原性
マウスに経口投与による骨髄細胞を用いた小核試験[OECD TG 474, GLP](体細胞in vivo変異原性試験)で陰性の結果(厚労省報告 (2004))に基づき、区分外とした。なお、in vitro試験として、エームス試験で陰性(厚労省報告 (2001))、チャイニーズハムスター肺由来CHL/IU細胞を用いた染色体異常試験で陽性(厚労省報告 (2001))、チャイニーズハムスター線維芽細胞を用いた染色体異常試験で陰性(PATTY (5th, 2001))が報告されている。 GHS分類:区分外
発がん性
データなし。GHS分類:分類できない
生殖毒性
ラットに経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG 422、GLP)において、反復投与毒性として一過性の流涎、軽度の白血球減少、腎臓重量の増加が観察された高用量(250 mg/kg)群で、出産生児数の減少に加え、生児出産率および出生率が有意な低下を示し、延いては哺育4日における生存児数の減少がみられた(厚労省報告 (2001))ことから、区分2とした。なお、妊娠ラットの器官形成期に経口投与した試験、および妊娠マウスの妊娠8日目に皮下投与した試験では、催奇形性を含め仔の発生に及ぼす悪影響は報告されていない(PATTY (5th, 2001))。 GHS分類:区分2
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ラットに2000 mg/kgを経口投与による急性毒性試験(OECD TG401: GLP)において、投与1時間以内に3/10例に一過性の流涎と4/10例にラッセル音が観察され、ラッセル音は数日間にわたり継続して聴取された例、あるいは遅発した例が認められたが、剖検時までに聴取されなくなった。観察15日目に実施した剖検では本物質投与に起因した異常はみられなかった(厚労省報告 (2001))。以上より、2000 mg/kgで重大な毒性影響が認められなかったことから、経口経路では区分外相当となるが、他経路についてデータがなく影響も不明のため、特定標的臓器毒性(単回ばく露)の分類としては「分類できない」とした。 GHS分類:分類できない
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ラットに経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG 422、GLP)において、剖検時の検査により、50 mg/kg/day(90日換算:約25 mg/kg/day)以上で雄の白血球数が軽度に減少し、250 mg/kg(90日換算:約125 mg/kg/day)では雄の血小板数が減少し、雌雄の腎臓重量がやや増加したが、病理組織学検査では異常は認められなかった(厚労省報告 (2001))。以上より、観察された変化はいずれも軽微、かつその他に投与に起因する異常も認められず、ガイダンス値範囲内の用量で悪影響を示す所見も得られていないことから、経口経路では区分外相当となるが、他経路についてはデータがなく影響も不明のため、特定標的臓器毒性(反復ばく露)の分類としては「分類できない」とした。なお、別にラットの90日間混餌投与試験の報告があるが、1.25%(90日換算:625 mg/kg/day)以上の濃度で摂餌量と体重増加の抑制を起こした(PATTY (5th, 2001))と記載されているのみである。 GHS分類:分類できない
吸引性呼吸器有害性
データなし。なお、本物質は常温で液体であり、20℃での動粘性率が3.6 mm2/sとなることから、国連分類基準による区分2に相当する可能性がある。GHS分類:分類できない