急性毒性
経口
ラットLD50値が1700mg/kg bw(JMPR (1998))。(GHS分類:区分4)
経皮
ラットLD50値が2000 mg/kg bw超(JMPR (1998))。(国連分類基準の区分5または区分外に相当する。)(GHS分類:区分外)
吸入
吸入(粉じん・ミスト): データ不足により分類できない。 なお、ラットLC50値が2.0mg/l超(JMPR (1998))の報告があるが、ばく露時間の記載が無い。また常温に於ける飽和蒸気圧濃度は0.0015mg/lであるためミストの基準値の適用となる。(GHS分類:分類できない)
吸入(蒸気): データなし。(GHS分類:分類できない)
吸入(ガス): GHS定義における液体である。(GHS分類:分類対象外)
皮膚腐食性・刺激性
ウサギを用いた試験で、僅かな紅斑があり、浮腫はなく7日目に落屑が見られた(JMPR (1998))。(GHS分類:区分外)
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギを用いた試験で一過性の結膜の発赤、及び浮腫が認められたが4日以内に消失した(JMPR (1998))。(GHS分類:区分2B)
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:本物質は動物飼料で酸化防止剤として使用され、飼料製粉作業者に接触皮膚炎が引き起こしたと報告され、Contact Dermatitis (Frosch) (4th, 2006)に感作性物質として掲載されている。なお、多くの報告では、本物質を含む飼料取い作業者がしばしば発症する重度の皮膚炎の原因はおそらく本物質であるとされ、作業者のパッチテストでも陽性反応が記録されている(JMPR (1998))。(GHS分類:区分1)
呼吸器感作性:データなし。(GHS分類:分類できない)
生殖細胞変異原性
経口投与したマウスの骨髄細胞を使用した小核試験(JMPR (1998))、及び腹腔投与したマウスの骨髄細胞を使用した小核試験(NTP DB (Access on Oct. 2010))((体細胞を用いるin vivo 変異原性試験)においていずれも陰性。なお、in vitro 試験であるエームス試験で陰性、及びCHO細胞を用いた染色体異常試験で陰性(NTP DB (Access on Oct. 2010))及び陽性(JMPR (1998))。(GHS分類:区分外)
発がん性
なお、ラットに2年間混餌投与した試験において200日後の雄の腎臓皮質に病理的な変化が見られ、700日後に1部臓器に発がん性が見られたが、用量依存性はなく、対照群にも認められた。また、ラットに30週間、又は1年間混餌投与した試験(JMPR (1998))の報告があるが発がん性については明確ではない。(GHS分類:データ不足で分類できない)
生殖毒性
ラットを用い混餌投与による多世代試験において、妊娠、同腹仔数、生存仔に反映された繁殖に対する影響は認められなかった。イヌを用いた混餌投与による2世代試験において投与による体重減少は見られたが、交尾、分娩、授乳指数、精子パラメーター、臨床指標、生存仔数、同腹仔数、仔の体重、成長に影響は認められなかった。また、妊娠ラットの妊娠6~19日間経口投与した試験において親動物の体重減少は認められたが、子宮重量、同腹仔数、吸収、着床前後の喪失、雌雄比、胎児重量に影響は無く、奇形、異常の所見はコントロールの背景データ以内であった(JMPR (1998))。。(GHS分類:区分外)
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
イヌに単回経口投与した試験(用量:50、100、200 mg/kg)において、血液検査、剖検で投与に関連する影響は認められなかったが、全投与群の雌雄で血清総ビリルビンの高値と尿素窒素の低値、鏡検で軽度の胆汁鬱滞が認められ、200 mg/kgの投与群では胆汁鬱滞に加え肝細胞のグリコーゲン沈着が枯渇し、観察期間終了後も全投与群でわずかに胆汁鬱滞が認められた(JMPR (2005))ことに基づき、用量は区分1のガイダンス値内である。(GHS分類:区分1(肝臓))
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
イヌに90日間経口投与した試験において、20mg/kg/day以上の投与群で総ビリルビン濃度、ALP、GPT、GOT、γGT活性の上昇、鏡検では肝臓の色素沈着、肝細胞壊死、細胞質空胞化、胆管の過形成が認められ、4 mg/kg/day投与群でもALPの上昇、軽微ではあるが色素沈着と肝細胞壊死・空胞化が認められた(JMPR (1998))。別にイヌの28日間経口投与試験で、25 mg/kg/day(90日換算:8.3 mg/kg/day)以上の用量で、肝障害を示唆する血清酵素活性の上昇や肝臓の色素沈着が認められた(JMPR (1998))。また、ラットでも28日間経口投与試験の250 mg/kg/day(90日換算:77.7 mg/kg/day)以上で総ビリルビン濃度やγGT活性の上昇が報告されている(JMPR (1998))。以上より、イヌでは試験用量がガイダンス値区分1の範囲にあることから区分1(肝臓)とした。なお、ラットの28日間および13週間経口投与試験で腎臓への影響が認められた(JMPR (1998))が、いずれもガイダンス値範囲の上限を超えた用量のため分類の根拠とならない。(GHS分類:区分1(肝臓))
吸引性呼吸器有害性
データなし。(GHS分類:分類できない)