急性毒性
経口
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分4とした。
【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 雄: 1,405 mg/kg、雌: 1,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2019)、CLH Report (2012)、RAC Background Document (2013)、JMPR (2011))
(2) ラットのLD50: 雄: 1,410 mg/kg、雌: 1,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2014))
(3) ラットのLD50: 1,000 mg/kg (EU CLP CLH (2013))
経皮
【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2019)、EU CLP CLH (2013)、JMPR (2011)、食安委 農薬評価書 (2014))
吸入: ガス
【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (3.0E-007 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】
(1) ラットのLC50: > 2.09 mg/L (ACGIH (7th, 2019)、CLH Report (2012)、RAC Background Document (2013)、JMPR (2011)、食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2016))
(2) ラットの吸入ばく露試験 (4時間、鼻部ばく露): 本試験において、実測値2,090 mg/m3 (2.09 mg/L) は吸入可能な粒子を発生できる最高濃度であり、この濃度での死亡例はない (農薬抄録 (2016))
(3) 本物質の蒸気圧: 1.9E-008 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値:3.0E-007 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で24/48/72hの平均スコアは全て< 2.3であり、72時間後には全て消失した (EU CLP CLH (2013)、食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2016))。
(2) 本物質はウサギの皮膚及び眼に対し刺激性を示さない (JMPR (2011)、HSDB (Access on April 2020))。
(3) 本物質はウサギの皮膚にごく軽度の刺激性を示し、適用1時間後にはごく軽度の紅斑と浮腫を示すが、適用24時間後には回復した (ACGIH (7th, 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1) 本物質はウサギの皮膚及び眼に対し刺激性を示さない (JMPR Report (2011)、HSDB (Access on April 2020))。
(2) 本物質(50 mg) のウサギの眼への適用により、軽度の結膜発赤、浮腫及び分泌物がみられたが、適用72時間後には回復した (ACGIH (7th, 2019))。
(3) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で適用24/48/72時間後における角膜及び虹彩の平均スコアは2未満、結膜発赤及び結膜浮腫の平均スコアは1未満であり、全ての反応は72時間後には消失した (EU CLP CLH (2013)、食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2016))。
呼吸器感作性
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1) 本物質はマウス局所リンパ節試験 (LLNA) において陰性と判定された (EU CLP CLH (2013)、食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2016))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスの赤血球及び骨髄細胞を用いた小核試験 (経口投与) で陰性の報告がある (ACGIH (7th, 2019)、JMPR (2011)、RAC Background Document (2013)、食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2016))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、ほ乳類培養細胞の染色体異常試験、遺伝子突然変異試験で陰性の報告がある (同上)。
発がん性
【分類根拠】
(1) の既存分類結果及び (2)、 (3) の実験動物の結果から区分2とした。
【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2019))、EPAでS (Suggestive Evidence of Carcinogenic Potential) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on May 2020):2012年分類) に分類されている。
(2) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験では、雄で肝細胞腺腫及び精巣間細胞腺腫の発生頻度の有意な増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2014)、ACGIH (7th, 2019)、JMPR (2011))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を18ヵ月間混餌投与した発がん性試験では、雄で肝細胞腺腫及び肝細胞がんの発生頻度の有意な増加、雌で肝腫瘍発生頻度の増加傾向が認められた (食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2011))。
【参考データ等】
(4) 肝臓腫瘍の発生機序としては、薬物代謝酵素誘導、核内受容体 (CAR及びPXR) の関与による細胞増殖の可能性が示唆される。また、精巣の間細胞腺腫の発生増加はラットの系統特異的な自然発生腫瘍の背景頻度の範囲内の可能性もあるが、作用機序の検討でドーパミンアゴニスト作用の報告があり、検体投与の可能性を否定できないとされている(食安委 農薬評価書 (2014))。
生殖毒性
【分類根拠】
(1)~(3) より、ラットの胎児及び児動物に対する影響がみられているが、(4) より、観察された児動物への影響のうち、胎児の四肢の異常については、種特異的なメカニズムによる可能性が高く、一方、新生児死亡については、種特異的なメカニズムが判明しているとは言えないことから、ヒトでの懸念を完全に否定しがたいことを考慮して分類できないとした。
【分類根拠】
(1) ラットを用いた混餌投与による2世代生殖毒性試験において、雄親動物に肝絶対及び比重量増加、小葉中心性肝細胞肥大(色素沈着を伴う)、多巣性肝細胞壊死がみられ、児動物で生児出産率低下、生後生存率減少がみられた (食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2011))。
(2) 雌ラットの妊娠6~21日に混餌投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制及び摂餌量減少、妊娠子宮重量減少) がみられる用量で胎児に外表異常(前肢屈曲及び後肢回旋)等がみられた (食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2011))。
(3) 雌ウサギの妊娠7~28日に混餌投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (糞量の減少、体重増加抑制及び摂餌量減少) のみられる用量においても胎児の発生影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2014)、EU CLP CLH (2013)、JMPR (2011))。
(4) 生殖発生影響について、食安委 農薬評価書 (2014) では、「繁殖試験においてラットの新生児死亡が認められ、発生毒性試験においてラット胎児の四肢異常等が、母体毒性がみられる用量で認められた。機序検討試験の結果*、これらの異常はいずれもラット胎児期に特異的に発現するニコチン受容体に起因する可能性が考えられたため、ヒトでこれらの異常が発現する可能性は低いと考えられた。新生児死亡については詳細な機序は不明であるが、本剤の子宮内ばく露によるニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR) に対する薬理作用が関連していると考えられた。」としている(食安委 農薬評価書 (2014))。
* ラットの胎児若しくは成獣又はヒトの胎児若しくは成人の筋肉由来nAChRを発現させたアフリカツメガエルの卵母細胞を用いた試験において、ラットの胎児由来の細胞のみでスルホキサフロルの添加による反応を示す結果が出ている (食安委 農薬評価書 (2014))。
【参考データ等】
(5) EU CLP CLH (2013) においても同様に、ラットにみられた生殖毒性の機序はヒトには関連せず、ラット胎児で四肢拘縮の異常、曲がった鎖骨、新生児の死亡は、ヒトでは発生しないと予想されるとして、生殖毒性に分類する必要はないとしている。