急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(4)より、区分外とした。
【根拠データ】 (1)ラットにおけるLD50値:>5,000 mg/kg(EU-RAR(2008)、SIDS SIAP(2008)) (2)ラットにおけるLD50値:5,300 mg/kg(EU-RAR(2008)) (3)ラットにおけるLD50値:6,850 mg/kg(EU-RAR(2008)) (4)ラットにおけるLD50値:>7,940 mg/kg(Patty(2012))
経皮
【分類根拠】 (1)より、区分外とした。
【根拠データ】 (1)ウサギにおけるLD50値:>7,940 mg/kg(EU-RAR(2008)、SIDS SIAP(2008),Patty(2012))
吸入:ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
【分類根拠】 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分外とした。
【根拠データ】 (1)本物質原体を用いてヒト200人にパッチテストしたところ、刺激性は示さなかったとの報告がある(SIDS(2008))。 (2)本物質70%調剤(ワセリン中)を用いてヒト51人にパッチテストしたところ、8人で刺激性の兆候として紅斑が見られたとの報告がある(SIDS(2008))が、これを刺激性なしと判断している情報源もある(PATTY(6th, 2012))。 (3)ウサギを用いた皮膚刺激性試験(n=3/雌雄、GLP準拠)で、本物質(生理食塩溶液)を24時間半閉塞適用後に3匹に対してスコア1.0の紅斑が見られたが、72時間後には回復したとの報告がある(SIDS(2008)、REACH登録情報(Accessed Aug. 2018))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分外(国連分類基準の区分3)とした。
【根拠データ】 (1)ウサギを用いた眼刺激性試験(n=3、GLP準拠)で、本物質を適用したところ、虹彩炎、角膜混濁、結膜浮腫のスコアは0で結膜発赤のスコアは1.3だったが、96時間以内に回復したとの報告がある(REACH登録情報(Accessed Aug. 2018))。 (2)ウサギを用いた動物試験(n=3/雌雄)で本物質を適用したところ、角膜混濁、虹彩炎のスコアは0、結膜発赤スコアは1.7、結膜浮腫スコアは1.1が見られ、24時間後に5/6例で軽度の結膜発赤と中等度の分泌物が見られたが、48時間後には回復したとの報告がある(SIDS(2008)、REACH登録情報(Accessed Aug. 2018))
【参考データ等】 (3)本物質はヒトへの職業ばく露によって眼刺激性を示すことが報告されている(PATTY(6th, 2012))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1とした。
【根拠データ】 (1)本物質0.33%調剤(メルカプト中)でゴム接触皮膚炎患者32名にパッチテストをしたところ、3人で感作性が見られた(陽性率9%)との報告がある(日本接触皮膚炎学会アレルゲン解説書)。 (2)本物質70%調剤(ワセリン中)でヒト51人にパッチテストしたところ、5人で感作性が見られたとの報告がある(SIDS(2008)、PATTY(6th, 2012))。 (3)本物質は ヒト(作業者や消費者)に対して感作性を有することがスペイン、ポーランド、デンマーク、インドで報告されている(SIDS(2008))。
【参考データ等】 (4)本物質25%調剤(エタノール中)を用いたモルモットに対するBuehler試験(雄雌各10例)では、感作性が見られなかったとの報告がある(SIDS(2008)、PATTY(6th, 2012))。 (5)EU CLPでは本物質をSkin Sens. 1、DFGではShに分類している。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 In vivoのデータがなく、データ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1)In vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験(PATTY(6th, 2012)、SIDS (2008)、厚労省既存化学物質毒性データベース(Accessed Aug. 2018))、ほ乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験(PATTY(6th, 2012)、SIDS (2008))、同染色体異常試験(SIDS (2008)、厚労省既存化学物質毒性データベース(Accessed Aug. 2018))で陰性の報告がある。
発がん性
【分類根拠】 発がん性に関して、利用可能なヒトを対象とした報告はない。 動物試験結果からは発がん性の証拠はなく、(1)のマウスの陰性結果のみの限定的な証拠である。既存分類結果もなく、データ不足のため分類できないとした。
【根拠データ】 (1)2系統の雌雄マウスに215 mg/kg/dayで21日経口投与の後、17ヵ月混餌投与(95.3 mg/kg/day)した試験において、投与群は対照群に対して生存率に違いは認められなかった(EU-RAR(2008))。また、全ての群で腫瘍が見られたものの統計的有意差は認められなかった。 (2)国内外の分類機関による既存分類結果はない。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(3)より、妊娠ラットの器官形成期に経口投与した発生毒性試験では3件の試験データが得られ、母動物の体重増加の抑制と児動物の平均体重減少が認められている。(1)ではさらに、児動物に奇形を含む発生影響が母動物毒性発現量又はそれ以下の用量でみられているが、EUでは、本試験で用いられた特定のラット系統には入手可能な背景データがないために催奇形性の可能性を示しているとみなしていない(EU-RAR(2008))ことから、区分2に分類した。
【根拠データ】 (1)妊娠6~15日のDAKラットに50, 150, 450 mg/kg/dayを強制経口投与した試験では、児動物に対して、450 mg/kg/dayの投与により同腹児の早期吸収頻度の有意な上昇、同腹児あたりの後期吸収及び着床後胚損失率の上昇などの影響が認められた。150 mg/kg/day以上の群で用量依存的な内水頭症の増加が観察されている(EU-RAR(2008))。 (2)妊娠0~20日のラットに0.7, 7.1, 69.6, 288.8 mg/kg/dayを混餌投与した試験では、母動物では69.6 mg/kg/day 以上で体重増加抑制、288.8 mg/kg/day で摂餌量の減少がみられ、また、288.8 mg/kg/day で胎児・胎盤重量の低値がみられている(EU-RAR(2008))。 (3)妊娠6~15日のラットに100, 300, 500 mg/kg/dayを強制経口投与した試験では、500 mg/kg/day で母動物の体重増加抑制、胎児重量の低値がみられている(EU-RAR(2008))。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
【分類根拠】 (1)より、区分2(腎臓)とした。新しい情報源の利用により旧分類から分類結果を変更した。なお、(2)で見られている血液への影響は、プロトロンビン時間の短縮であり毒性学的意義が低いと考え、血液系は標的臓器としない。
【根拠データ】 (1)実験動物への本物質投与による影響は250 mg/kg/day以上でみられ、血液凝固障害の徴候(雌雄)と腎臓への影響(雄)であると結論づけられている(EU-RAR(2008)、SIDS SIAP(2008))。 (2)ラットに28日間強制経口投与した試験では、区分2の範囲の250 mg/kg/day(90日換算:77.8 mg/kg/day)以上で、プロトロンビン時間の有意な短縮(雄)、尿中ケトン体増加(雄)、腎臓近位尿細管上皮における硝子滴増加(雄)がみられた(既存化学物質毒性データベース(Accessed Jul. 2018)。 (3)ラットの28日間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)で、区分1の範囲の0.0144 mg/L(90日換算:0.0032 mg/L)以上で、血清GOT(AST)活性の増加(雌雄)、区分1の範囲の0.048 mg/L(90日換算:0.011mg/L)で、脾臓のヘモジデリン沈着の増加(雌)、リンパ節の類洞マクロファージ内に褐色色素の増加がみられた。血清AST活性の増加は肝臓に組織変化がなかったことから、有害影響でないと判断され、脾臓のヘモジデリン沈着増加は赤血球溶血によると推定されたが、赤血球パラメーターに変化がないことから、毒性学的意義は低いと判断された(EU-RAR(2008))。 (4)ウサギを用いた21日間経皮ばく露試験では、最高用量の2,000 mg/kg/dayでも異常はみられなかった(EU-RAR(2008))。
吸引性呼吸器有害性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。